東南海・南海地震対策特別措置法(読み)とうなんかいなんかいじしんたいさくとくべつそちほう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

東南海・南海地震対策特別措置法
とうなんかいなんかいじしんたいさくとくべつそちほう

近い将来発生が想定されている東南海・南海地震の発生に備え、防災対策を推進することを規定した法律。「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成14年法律第92号)の略称。1995年(平成7)に地震防災対策特別措置法が制定されて以降、初めての、地震とその被害が予想される地域をあらかじめ特定して地震対策を推進するためにつくられた特別措置法で、2002年(平成14)7月に施行された。

 法律の成立には、昭和の東南海・南海地震から60年近くが経過し、次の東南海・南海地震のための防災対策が急がれる状況になってきたこと、想定震源域が東海地震に比べ沖合いに広がっており、地震予知前提とした監視体制の構築が技術的に困難なため、地震予知による地震防災対策を含む大規模地震対策特別措置法適用が困難なことが背景にある。

 法律では地震防災対策地域の指定に加え、地震防災対策推進基本計画を作成、実施を推進することとされ、基本計画は推進計画と対策計画で構成されている。

 推進計画は、地震防災上緊急に整備すべき施設を整備し、津波に対する防護避難の確保、地震に対する防災訓練などを推進することとなっている。なお地震防災対策施設のうち緊急に整備すべき施設については、国庫補助率の高い地震防災対策特別措置法の地震防災緊急事業五箇年計画に組み込んで行われる場合が多い。

 対策計画は、病院、百貨店など人が集まる施設や、危険物を扱う施設、鉄道など輸送事業のほか地震防災上重要な施設の運営責任者に、津波からの円滑な避難が行えるようにする事項を定めた対策計画の作成を課している。

 地震観測測量などの観測設備の整備も盛り込まれた。

 法律にいう「東南海・南海地震」は、遠州灘(えんしゅうなだ)西部から熊野灘および紀伊半島の南側の海域を経て土佐湾までの地域並びにその周辺の地域におけるプレート境界で発生する大地震として規定されている。なお法律による東南海・南海地震あるいは東海地震の定義は、研究者の定義とはかならずしも一致しない場合もあるので、注意が必要である。

 東南海・南海地震防災対策推進地域の指定は、内閣総理大臣が中央防災会議へ諮問して指定することになっている。2003年12月に1都2府18県内の市町村が指定された。地域の指定が行われると、中央防災会議により東南海・南海地震防災対策推進基本計画が作成され、地方自治体はそれぞれの防災計画に、避難や防災訓練、地震防災上緊急に整備すべき施設等を盛り込むことになる。

[浜田信生]

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