出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
栞は一般的には村人が山道などで,帰路の道しるべ(道標)として木の枝を折りかけたものとされている。道しるべということであれば,必ずしも枝を手折る必要はない。草や紙などを目じるしとなる木の枝に結んでおく方法もある。
読みさしの本に挟んでおく栞もまた帰路の道しるべの一種である。ただしそれは,読者が読みさしの本に帰るときの道しるべである。また〈……の栞〉という形の道しるべもある。ここでは帰路という意味は消えて,道しるべの意味だけが残っている。すなわち,案内書・手引きの小冊子のことである。
以上の枝折語源説に対して折口信夫は,その理由は示していないが,若干の疑念を表明している。枝折を柴折とも書くが,じつは峠や山の口にあって通行の安全を守る道祖神のことを柴神,柴折様などとよんで,通りすがりの人が柴や青草を手向ける習俗がある。柳田国男はこの柴神を,柴をまつり柴を手向けとする神の名であるとして,柴は今日でいうサカキ(榊)またはシキミ(樒)のことであるとしている。
上記習俗と柳田説を併せ考えると,柴神は榊などの枝を手折って,これを賽物(さいもつ)(供物)とした無名の岐神(くなとのかみ)などの総称と考えられる。したがって〈しおり〉もまた単なる道しるべではなくて,もともとは行路の安全を祈願するための柴神への賽物であったと考えられる。
執筆者:垂水 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
読みかけの書物の間に挟んで目印とするもので、ごく簡単な案内や手引などもさす。枝折とも書き、もとは山道などで木の枝を折りながら道しるべとしたところから、そうよばれるようになった。一般に短冊形が多く、材料には厚紙、薄板、編み糸、布地、皮革、合成樹脂などが用いられる。
古くは「夾笇(きょうさん)」といって、縦90ミリメートル、横15ミリメートルに削った竹を3分の2まで裂き割り、さらに裂けないように元の部分を糸などで結んだものを、巻物や綴(と)じ物の間に挟み、読みさしの箇所や検出用のしるしとして用いていた。また僧侶(そうりょ)などが、竹、木、象牙(ぞうげ)などを薄板状にしてそこに書名などを記し、その上部に穴をあけて紐(ひも)を通した「箋(せん)」を巻子本(かんすぼん)に結び付けたり、または冊子に挟んで検出用としたが、これも栞の一種である。
[野沢松男]
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