(読み)タエ

精選版 日本国語大辞典の解説

たえ たへ【栲】

〘名〙
① 梶(かじ)の木などの繊維で織った布。純白で光沢がある。しろたえ。
※書紀(720)雄略即位前・歌謡「臣(おみ)の子は 多倍(タヘ)の袴を 七重をし 庭に立たして 足結撫だすも」
② 布類の総称。
※延喜式(927)祝詞(九条家本訓)「御服(みそ)は明る妙(タヘ)・照る妙(タヘ)・和(にき)(タヘ)・荒妙(あらたへ)に称辞竟へまつらむ」

たく【栲】

〘名〙 植物「かじのき(梶木)」、または「こうぞ(楮)」の古名。
※豊後風土記(732‐739頃)速見「柚富の郷〈略〉此の郷の中に栲の樹多(さは)に生ひたり。常に栲の皮を取りて、木綿を造る。因りて柚富の郷といふ」
[語誌](1)カジノキとコウゾは古くはほとんど区別されていなかったようである。中国では「栲」の字はヌルデを意味する。「栲(たく)」は樹皮を用いて作った布で、「タパ」と呼ばれるカジノキなどの樹皮を打ち伸ばして作った布と同様のものとされる。
(2)「古事記伝‐一四」では、「栲(たく)」は樹皮を織布として用いるシナノキであるとする。
(3)文学作品には「栲縄(たくなわ)」「栲領巾(たくひれ)」などの形であらわれ、「万葉集」では、「長き」「千尋」にかかる「栲縄の」、「白」「かけ」にかかる「栲領巾の」など、すべてが枕詞として用いられている。中古以降は海辺の素材として「海女」などと取り合わせた歌が多いが、これは海女の命綱に栲縄を用いたからだという。
(4)のち「栲縄」以外ほとんど詠まれなくなり、「古今集」以降の八代集中には用例を見出せない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内のの言及

【楮紙】より

…古代には榖紙(こくし)とよばれ,現代においても梶紙(かじがみ)(構紙・加地紙)などの別名をもつ。原料のコウゾはクワ科に属する落葉低木で,日本に自生し,豊富にあったので,古代において太布(たふ)や栲(たえ)などの織物に用いられていた。コウゾは各地の風土によって特色を異にし,また同一産地でも種類が多い。…

※「栲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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