根付(読み)ねつけ

日本大百科全書(ニッポニカ)「根付」の解説

根付
ねつけ

腰にさげる提物(さげもの)の紐(ひも)の先端につけて帯にとめる小工芸品。帯車(おびぐるま)、帯挟(はさみ)、懸垂(けんすい)、墜子(ついし)ともいう。印籠(いんろう)、巾着(きんちゃく)、たばこ入れなどを腰にさげて携帯することは近世以降の流行であるが、提物を帯にとめるにあたって、根付に相当するものが初期の段階から用いられたかどうかは明らかではない。根付の前身とみられるものは金属製の細い環形で、これに帯を通し、提物を結んで垂れた。

 発展過程から根付の形態、種類は掛落(から)根付、鏡蓋(かがみぶた)根付、饅頭(まんじゅう)根付、形彫(かたぼり)根付、仮面根付などに分けられ、そのほか柳左(りゅうさ)根付、差根付、唐彫(からぼり)根付、兼用根付、自然物を利用した根付などがある。材料には象牙(ぞうげ)と木材がもっとも多く用いられ、動物の牙(きば)、爪(つめ)、骨などのほかに、金属や陶器も利用され、工芸の各種技法が駆使されている。意匠は神仙、怪奇、故事、風俗、動植物、その他多種多様であり、奇抜な仕掛けをした絡繰(からくり)根付もある。

 根付師としては、吉村周山(しゅうざん)、雲樹洞院幣丸(しゅめまる)、小笠原(おがさわら)一斎、三輪、根来(ねごろ)宗休、岷江(みんこう)、為隆(ためたか)、舟月、出目右満(うまん)、蘭亭(らんてい)、友親(ともちか)、法実(ほうじつ)、鴇楽民(ときらくみん)、光広、懐玉斎正次らが知られており、彫刻や工芸に携わる工人では石川光明(みつあき)、旭玉山(あさひぎょくざん)、森川杜園(とえん)、小川破笠(はりつ)、望月半山、柴田是真(ぜしん)、尾形乾山(けんざん)、三浦乾也、土屋安親(やすちか)らも根付を制作している。根付はヨーロッパやアメリカでとくに愛玩(あいがん)され、現在もその需要に応じて製作されている。

[荒川浩和]

『佐々木忠次郎著『日本の根付』(1979・東洋書院)』『荒川浩和編『日本の美術195 印籠と根付』(1982・至文堂)』『荒川浩和著『根付』(1983・日本象牙彫刻会)』


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精選版 日本国語大辞典「根付」の解説

ね‐つき【根付】

〘名〙
① 草木などで根の付いていること。根の付いている草木。
※浄瑠璃・大職冠(1711頃)一「花の咲根つきの伽羅五本、実のなる枝さんごじゅ十本」
② 海底の岩礁や底州、沈船などをすみかとしている魚。

ね‐つけ【根付】

〘名〙
① 巾着・印籠・タバコ入れ・胴乱などを帯に挟んで腰にさげる時、落ちないように、それらのひもの端に付ける細工物。さんご・めのう・水晶・象牙・獣角などに、人物・動物・器物などを彫刻して作る。おびぐるま。おびばさみ。
※俳諧・類船集(1676)己「どうらんのねつけにさすがとて小刀をさす也」
② ①のように、いつも人につき従って取り入る者。腰巾着。
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六「イヤサ、ねつけにする壱文奴よ」

ね‐づ・く【根付】

〘自カ五(四)〙
① 植えた木が土になれて根を張り生育するようになる。
※俳諧・伊勢山田俳諧集(1650)孝晴「松をくるりの中の梅の木 天神のしゃだんもねつく立春に」
② 新しい物事が定着する。
※日本の思想(1961)〈丸山真男〉四「議会政治が日本で発展し、根づく方向を期待できるでしょうか」

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デジタル大辞泉「根付」の解説

ね‐つけ【根付】

印籠(いんろう)・巾着(きんちゃく)・タバコ入れなどを腰に下げるとき、帯にはさむひもの先端につけてすべりどめとした小形の細工物。材は木・象牙・角・金属などで、人物・動物・器物などが彫刻してある。おびばさみ。
いつもその人に付き従って離れない人。腰巾着。
「例(いつ)もの通り父の―の積りで、居間へ入って行くと」〈上司・父の婚礼

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百科事典マイペディア「根付」の解説

根付【ねつけ】

印籠(いんろう)や煙草入れが落ちないように緒の元に付けた3cm四方ほどの小工芸品。携帯用煙草入れが流行した元禄年間ころから流行,象牙(ぞうげ)やツゲの木のほか金属,玉,陶器等を材料として趣向をこらした細かな細工が施された。おもな根付師は吉村周山,安永懐玉斎ら。
→関連項目石川光明懐玉斎正次牙彫象牙彫

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「根付」の解説

根付
ねつけ

装身具の一種。江戸時代,印籠たばこ入れに下げる際,にこれを取付け,帯をくぐらせて外に出し,紐がはずれないようにしたもの。木,,角,金属,水晶,象牙などの材料で,人物,動物,器財などの細密な小彫刻を施したものが多く,工芸品としても発達した。

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世界大百科事典 第2版「根付」の解説

ねつけ【根付】

印籠(いんろう),巾着(きんちやく),煙草入れなど江戸時代に男性が好んで用いた提物(さげもの),袋物の類を,腰からずり落ちぬよう帯に挟んで佩用するための留め具。したがって紐に通すのが必定であり,そのための穴をうがっている。根付の起源については明らかでないが,一般化するのは武士たちが印籠(薬入れ)や燧袋(ひうちぶくろ)を常用するようになった室町時代末期ころからであろうとされている。しかし当時佩用した印籠が実用本位のきわめて素朴なものであったことを勘案すれば,それと一具をなすことが多い根付の類も,後世にみられるようなさまざまな細工を施したものでなく,おそらくは動物の牙角,貝殻玉石,瓢簞といった自然物を,そのまま利用する程度の簡単なものであったと思われる。

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世界大百科事典内の根付の言及

【江戸時代美術】より

…小紋,中形は染の量産化の情況に即したものだが,型紙を何十枚も使って,見えないぜいたくをこらしたものもなかにはある。都市の武士や町人が趣向を競った刀のつばや根付,印籠は泰平の世相がもたらした〈いき〉の美意識の反映であり,そこには金工,木竹牙角工,漆工,陶磁の各分野にわたる驚くべき細緻な技巧が見られる。それは,同時代の清の工芸の瑣末な技巧主義に影響されたものだが,そこに和漢のモティーフ,意匠が自在に組み合わされ,軽妙な機智とユーモアがこめられていることを日本的特性として評価すべきであろう。…

【象牙彫】より

… 平安時代になると象牙の輸入されたものが枯渇し,象牙彫は中絶するに至ったが,安土桃山時代から江戸時代にかけて南方や中国との交通が盛んになると,その影響を受けてふたたび復活した。牙彫(げちよう)と呼ばれて親しまれ,ことに細密彫刻を求めた根付の材料に象牙を用いたことは,日本における象牙彫を発達せしめる誘因となった。江戸時代末日本へ渡来した外人たちは好んでこの象牙彫の根付をみやげとして買って帰ったために,維新後になると美術界の不況を救うために輸出向けの象牙彫が盛んとなり,細密な彫技を競うばかりでなく,しだいに大作に向かい象牙1本を刻出したものや,多くの象牙をはぎ合わせたものも作るようになり,1887年前後の彫刻界は象牙彫に支配された観があった。…

※「根付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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