桃花扇(読み)とうかせん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

桃花扇
とうかせん

中国、清(しん)代の長編戯曲。40齣(せき)(場)。孔尚任(こうしょうじん)作。明(みん)末、魏忠賢(ぎちゅうけん)の一派阮大せい(げんたいせい)、馬士英(ばしえい)らに対する文人の結社、復社の侯方域(こうほういき)らの反感は根強かった。崇禎(すうてい)帝の自殺後、阮、馬は福王を皇帝に擁立し、権力を握ると、復社の人々を弾圧する。やがて清軍の南下するにつれて諸将は寝返り、最後まで抵抗した左良玉、史可法も自殺し、明王朝は完全に滅びる。この激動する時代を背景に、名士侯方域と南京(ナンキン)の名妓(めいぎ)李香君(りこうくん)との愛は、一度は契りを交わしたが、阮、馬らの圧迫でついに結ばれなかった。2人の変わらぬ愛情と明朝滅亡の哀(かな)しみを唱(うた)う。登場人物はすべて実在の人、事件も史実に沿った歴史劇の名作。劇名は、金持ちの身請けを拒んだ香君が床に倒れたとき鮮血が契りの扇に散り、友人が筆を加えて桃花に仕上げたのに由来する。

[平松圭子]

『岩城秀夫訳『桃花扇』(『中国古典文学大系53 戯曲集 下』所収・1971・平凡社)』

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デジタル大辞泉の解説

とうかせん【桃花扇】[戯曲]

中国、代の戯曲孔尚任(こうしょうじん)作。1699年成立。明朝滅亡南京盛衰背景に、文士侯方域(こうほういき)と名妓(めいぎ)の李香君(りこうくん)との悲恋を描いたもの。清代戯曲の代表作。

とうか‐せん〔タウクワ‐〕【桃花扇】

マミズクラゲ別名

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

桃花扇
とうかせん
Tao-hua-shan

中国,清代の長編戯曲。孔尚任の作。 40幕。康煕 38 (1699) 年成立。明末の文人侯方域と名妓李香の恋愛を主題としたもの。福王の朝廷権力をふるう阮大せい迫害を受けた2人は,明朝滅亡後にめぐり合うが,ともに俗心を捨てて出家するというのが大筋題名は,李香のに点々と染まったに,枝葉を書足して桃花の図とする劇中の一挿話による。曲折に富んだ悲恋物語で,背景によく史実が取入れられ,明朝に対する追慕全編にこめられていて,これを見た明の遺老たちが袖をしぼったという。

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百科事典マイペディアの解説

桃花扇【とうかせん】

中国,清初の戯文。全40幕(44幕本もある)。孔尚(こうしょうじん)〔1648―1718〕の作。1699年成立。復明運動家の文人侯方域と名妓李香君の悲劇的恋愛を中心に明朝滅亡の際の江南政界の混乱を描写した長編史劇。清初昆(こん)曲の名作として《長生殿》と称される。

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精選版 日本国語大辞典の解説

とうかせん タウクヮセン【桃花扇】

中国の詞曲。四〇幕。清の孔尚任撰。明末の南京秦淮(しんわい)を舞台に名妓李香君と文人侯朝宗との恋物語を史実を背景に描く伝奇作品。題名は朝宗から贈られた扇に香君の血が散った跡を桃花にみたて枝葉を描きそえたことによる。洪昇の「長生殿」とともに清代戯曲の最高峰と評される。

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世界大百科事典 第2版の解説

とうかせん【桃花扇 Táo huā shàn】

中国,清代の戯文。孔尚任(1648‐1708)の作。明末の文人侯方域と南京秦淮の名妓李香君を主人公とする佳人才子劇であるが,明王朝が次第に崩壊してゆく諸相を背景に,混乱の世を純粋の恋に生きようとする2人の姿を浮彫にしている。登場するのはほとんど実在の人物であり,史実に正確であるように努めた点で歴史劇ともいえる。明初以来栄えた戯文の最後の傑作である。【岩城 秀夫】

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世界大百科事典内の桃花扇の言及

【マミズクラゲ(真水水母)】より

…ポリプの一部がふくらんでクラゲが生ずる。中国では桃花魚または桃花扇とよんでいるが,これは桃の花が満開のころに出現するためといわれる。 日本では津市の井戸から発見されたイセマミズクラゲC.iseanaが1922年に報告されているが,その後見いだされていない。…

※「桃花扇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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