近世、尾張(おわり)藩で行われた制剛流俰居合(やわらいあい)の俗称。流祖は梶原源左衛門直景(なおかげ)(1610~85)。直景の父兵部景通(ひょうぶかげみち)は、もと小田原北条氏の家臣で、同氏の滅亡後、美濃(みの)大垣の戸田左門に仕えたが、1628年(寛永5)ゆえあって父子ともに退身し、牢人(ろうにん)となって大坂に移った。ときに直景18歳、兵法者として立つことを志し、同地の水早長左衛門信正(みずはやちょうざえもんのぶまさ)について制剛流俰を、兼ねて川上伊左衛門重忠(しげただ)に居合を学び、よくその奥義を究め、さらに諸国を遍歴して、一伝流捕手(ほしゅ)、竹内流(たけのうちりゅう)小具足腰廻(こぐそくこしのまわり)、難波流(なんばりゅう)、一無流(いちむりゅう)などの諸流を修め、体術の精妙を得た。やがて江戸へ出て、名を口演随身(こうえんずいしん)と改め、両国に道場を開き、「制剛流俰組打骨砕(くみうちほねくだ)キノ傳」という看板を掲げて多くの門人を集めた。1644年(正保1)2月、尾張侯徳川義直(よしなお)の知るところとなり、家老渡辺家に付属し、本姓に復し150石を給せられ、家中の諸士に教授した。以後2代景明(かげあき)から9代景富(かげとみ)に至るまで、累代同藩の師範役を勤め幕末に及んだ。
[渡邉一郎]
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