水経注(読み)スイケイチュウ(英語表記)Shuǐ jīng zhù

デジタル大辞泉 「水経注」の意味・読み・例文・類語

すいけいちゅう【水経注】

中国古代の地理書。40巻。北魏酈道元れきどうげん著。代から三国時代ころに作られた中国河川誌「水経」に拠って、中国全土の水路を詳述したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「水経注」の意味・読み・例文・類語

すいけいちゅう【水経注】

  1. 中国の地理書。四〇巻。北魏の酈道元(れきどうげん)撰。「水経」を骨格として実地体験と多く文献によって詳細で膨大な注をつけ加え、増補したもの。黄河をはじめとする中国各地の一二五二河川の水系を精細に追い、流域都市村落や古跡名勝、民俗伝説などを記す。四庫全書本により伝わる。

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改訂新版 世界大百科事典 「水経注」の意味・わかりやすい解説

水経注 (すいけいちゅう)
Shuǐ jīng zhù

中国,北魏時代に作られた河川誌。酈道元(れきどうげん)(?-527)の著。40巻。《水経》というのは三国時代,3世紀にできた簡単な河川誌で著者もわからないが,これに酈道元が多数の文献と自分の旅行体験とを,注という形にまとめて付け足し,内容豊富な地理書に作り上げた。黄河水系より始め淮河(わいが),長江(揚子江)より江南に及ぶ中国全土の河川ごとに,流域の都市,名勝,旧跡,伝説,民俗等を詳細に記述する。中国の通常の地理書が行政区画分けになっているのとは異なり,河川の流域別に記された歴史地理書といってもよい。とくに引用文献の中には今日すでになくなったものが多く,書誌学上から重視されるほか,著者その人の文才による巧みな叙景文随所にみられるので,文学史上からも特異な著作として注目されている。 本書は40巻のうち5巻分が早くなくなったので,宋代,10世紀のころ内容を考慮せずに,巻数を40巻にして外形を整えた。したがって,体裁や順序が乱れ,経文と注文との区別がつかない部分も生じた。後世これをもとの形に復元しようとする研究が起こり,ことに清代には全祖望(ぜんそぼう),趙一清(ちよういつせい),戴震たいしん)という3学者が出て,互いに業績を競った。しかし,この3人は年齢からも《水経注》の研究歴の上からも全,趙,戴という順序なのに,それとは逆に成果が出版されたため,学界に大問題を起こした。だれがだれの説を盗用したかということが論争の的となり,今日に至るまでまだその結末はついていない。これらの研究を集大成した最終的決定版ともいうべきものは,清末から中華民国初年にかけての楊守敬によって作られた《水経注疏》である。その生前にはついに脱稿をみず,ごく一部分が発表されただけであったが,死後,門弟の熊会貞(ゆうかいてい)が遺志をついで完成させた。ただし,出版されたのは1957年で,これに引き続き熊氏の後輩である李子魁(りしかい)によって校訂されたものが,71年に出版された。なお,その副産物ともいうべき《水経注図》は,早く楊氏の手によって刊行されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水経注」の意味・わかりやすい解説

水経注
すいけいちゅう
Shui-jing-zhu

中国の地理書。北魏のれき道元の著。 40巻。黄河水系に始り,揚子江水系,江南諸水系の水路を追い,その流域の都城,古跡,山水,伝説を記した書。もともと3世紀頃の著と考えられる『水経』に注を施したものであるが,注のほうが主体を占める。江南方面はやや粗略とされるが,著者が各地を遍歴した体験と,豊富な文献が駆使されており,漢以来の地誌的資料をほぼ集大成したものといえる。また,引用文献には今日失われた書が多く,その点でも貴重である。五代の頃5巻が失われ,その後無理をして巻数を合せようとしたため,内容や配列が乱れたが,清代以後,戴震趙一清王先謙楊守敬らの研究によって,ほぼ原型に復元したと考えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「水経注」の意味・わかりやすい解説

水経注
すいけいちゅう

中国の地理書。40巻。著者は北魏(ほくぎ)時代の酈道元(れきどうげん)(?―527)。もと3世紀のころに記されたとみられる『水経』という書があり、それには中国のおもな河川の源や経路、河口などがきわめて簡単に記載されてあったが、本書は、酈道元が6世紀の初めに『水経』に詳細な注をつけてできあがったものである。その注は、『水経』の137河川を大幅に上回る1252河川を取り上げており、それらの流路や、その流域の都邑(とゆう)、古跡、山水などについて、豊富な文献の引用と、自身の体験とに基づいて記述したものである。その記述の文学的な筆致は有名であり、また引用された書物のうちにはすでに失われてしまったものも多く、文献学的にも重要な意味をもっている。なお、このように河川の水系を基準にした体裁は、通常の行政区画に基づく中国の地理書のなかでは異色のものといえる。

[中村圭爾]

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旺文社世界史事典 三訂版 「水経注」の解説

水経注
すいけいちゅう

北魏 (ほくぎ) の酈道元 (れきどうげん) (469〜527)の著した地理書
40巻。三国時代に作られた中国全土の水路誌『水経』に,豊富な注を加えて完成した。黄河水系から淮河 (わいが) ,長江水系,さらに江南諸水系までの,それぞれの流域の都市・名勝・旧跡・伝説などを記述した貴重な文献。

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百科事典マイペディア 「水経注」の意味・わかりやすい解説

水経注【すいけいちゅう】

中国の地理書。北魏の【れき】道元〔?-527〕著。40巻。3世紀成立の《水経》(作者不明)に著者自身の地理的体験に基づいた注を加えたもの。各地の水路に沿って,流域の都邑(とゆう)・古跡・山水などを記述。現在散逸した文献など多く引用され,貴重な資料。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「水経注」の解説

『水経注』(すいけいちゅう)

北魏の酈道元(れきどうげん)の著作。40巻。3世紀頃の『水経』なる書を骨子に,中国各地の水路について,流域の都邑,古跡,山水などを詳細に記した地理書。

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世界大百科事典(旧版)内の水経注の言及

【中国文学】より

…四六文は,いわば和声的な美文だから,抒情的な内容にふさわしく,議論文や歴史の記述には適合しないはずなのに,南北朝の文人はあらゆる事をこの文体で書いた。北魏の酈道元(れきどうげん)の《水経注(すいけいちゆう)》のような地誌でさえ,この文体で書かれ,その風景を描写した美文は高く評価されていた。南朝の四六文の大家は(6世紀の)徐陵(じよりよう)と庾信で,巧みな対句の構成法は後世の模範となる。…

※「水経注」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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