機器分析(読み)キキブンセキ(その他表記)instrumental analysis

デジタル大辞泉 「機器分析」の意味・読み・例文・類語

きき‐ぶんせき【機器分析】

化学的な分析操作に、精巧な機器を用いる方法。質量分析X線分析・分光分析ガスクロマトグラフィーなど。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「機器分析」の意味・読み・例文・類語

きき‐ぶんせき【機器分析】

  1. 〘 名詞 〙 化学的な分析操作に、精巧な機器を用いる方法。質量分析・X線分析・分光分析など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「機器分析」の意味・わかりやすい解説

機器分析 (ききぶんせき)
instrumental analysis

特異試薬との化学反応を利用して色の変化や沈殿生成などの化学変化を観察することによって物質の確認,検出,定量を行っていた化学分析に対比される用語で,化学分析の操作,物質の同定,物性変化や反応速度の測定などを物理計測手法を用いて機器化して,必要な物質情報を装置信号として自動的に取得できるようにした分析法の総称。厳密な定義はなく,1950年ころから慣用的に用いられるようになったが,第2次大戦中に発展した通信技術,エレクトロニクス技術の進歩に負うところが大きい。最初は電気化学分析法において電気分解時の電流または電圧変化を増幅し,自動記録する装置が発達した。その後,光信号を電流信号に変換する光電変換素子である光電管や光電子増倍管などの各種センサーの開発により,物質信号を電気信号として観測できるようになった。このように機器分析法の特徴は情報を電気信号として取得し,信号の増幅,処理,記録が自動化・自記化され,かつアナログ量,ディジタル量の変換も容易になったことである。この傾向は最近電子計算機の利用によりさらに促進され,機能化されている。その結果,化学分析の概念は化学計測とも呼ばれる新しい概念と測定法を実現し,測定の精密化,高精度化,高感度化,迅速化,機能化,多様化,自動化,連続化などの幅広い応用を可能にした。

 機器分析がカバーする範囲は,化学分析操作だけでなく,γ線,X線,紫外・可視光,赤外線,マイクロ波,電波といった異なる波長領域の電磁波と物質の相互作用を利用する方法,イオンの質量差を測定する方法,物質の固体・液体・気体状態間の吸着,溶解度の差を利用する方法など物理量の測定を応用した物理分析法も数多く開発され,多様な測定装置,分析方法が一般に用いられている。その結果,機器分析の機能には物質の定性分析・定量分析を行うだけでなく,物質の存在状態,構造,相互作用,分離,反応速度,熱変化,分布状態(表面分布や深さ方向分布),画像解析などの情報も含めた総合的な物質情報の測定が要求される。さらに最近では,電子顕微鏡による物質像の拡大と機器分析法の機能を複合した装置の開発,各種医療機器や環境モニタリングシステムへの応用,生産工場における自動制御,工程管理,製品管理など機器分析法の果たしている役割は,研究,生産,生活,環境といったあらゆる分野に及んでいる。機器分析法の測定原理による分類と代表的な測定方法を次に示す。

(1)電磁波分析(分光分析) 放射化分析X線構造解析蛍光X線分析,粉末X線回折,光電子分光法,紫外・可視分光分析(吸光光度法),蛍光分析,リン光分析,炎光光度法,発光分光分析,プラズマ発光法原子吸光法原子蛍光法,旋光分散,円偏光二色性,赤外分光分析,ラマン分光分析,マイクロ波分光法,電子スピン共鳴核磁気共鳴

(2)電気化学分析 ポーラログラフィー,陽極溶出ボルタンメトリー定電位電解法,電量分析,電気滴定,イオン選択性電極。

(3)分離分析 ガスクロマトグラフィー,液体クロマトグラフィー,ペーパークロマトグラフィー薄層クロマトグラフィー,向流分配クロマトグラフィー,イオンクロマトグラフィー(〈クロマトグラフィー〉の項参照)。

(4)その他の分析 質量分析(質量分析法),元素分析(CHN分析計),ガス分析熱分析アミノ酸分析,電子顕微鏡。

 このような機器分析法を利用する場合には,測定原理の理解とともに,標準物質,試料処理法,信号・情報処理,感度や検出限界,正確さ,精度,適用範囲についても十分な理解が望まれる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「機器分析」の解説

機器分析
キキブンセキ
instrumental analysis

比較的高度な機構を内蔵する機器を用い,物質のもつある種の物理的,化学的特性を検出することによって行われる分析法の総称.一般に,機器分析法は種々の化学種に対して選択性があり,高感度なので,化学分析の主流となってきた.自動記録,連続測定が可能で,工場の管理,環境分析などに利用されている.月面上の物質などの化学組成の遠隔分析,大気・水質の環境基準項目の連続測定を可能にした.機器分析の範囲および分類には定説はないようであり,機器の進歩とともにかわるものと思われる.しかし,一般にはX線・電子線分析(回折,蛍光,吸収,電子分光,マイクロアナライザー,電子顕微鏡など),質量分析,電子スピン共鳴核磁気共鳴分析,吸収および発光による紫外・可視・赤外分光分析(原子吸光分析を含む),放射化学分析(トレーサー法,放射化分析,放射能分析,γ線スペクトロメトリーなど),電気化学的分析(電位差および電流変化を利用する方法,その他),クロマトグラフィー分離分析などがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「機器分析」の意味・わかりやすい解説

機器分析
ききぶんせき
instrumental analysis

化学的あるいは物理的手段で物質の分析を行う際に、ある程度以上の高級複雑な器具装置を用いることによって特色づけられる分析法の総称。分析化学の進歩は器具装置の発達とともに歩んできたといってよく、この方法の特色は、より精密な装置の利用により、従来まったく不可能であった分析がしだいに可能になった点にある。機器分析の特質としては、従来の化学分析で最大の問題であった分析目的成分の相互間の分離、あるいは、それと非目的成分との分離などの煩雑な操作が不要になる場合が多いこと、すなわち、方法自体に選択性がある点である。たとえば、原子、分子などに特有のスペクトルを測定するいわゆる電磁波分析法、物質の電気的諸量を測定するいわゆる電気分析法、質量のわずかの違いによって物質を分離したり、物質間の吸収や分配の違いによって分離するいわゆる分離分析法などの諸法はその代表的なものである。また機器分析の特質の一つとして、分析の高感度化、迅速化、自動化、連続化への道が開かれる点がある。これらに成功した諸方法はコンピュータなどの電子工学と結び付いて、生産現場その他の工業界において重要な役割を担っている。

[高田健夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「機器分析」の意味・わかりやすい解説

機器分析
ききぶんせき
instrumental analysis

物質を分析するとき,構成成分の示す物理的性質を測定して,成分の同定,定量を行う化学分析法の総称。比較的複雑な機構をもつ機器を用いて分析が行われるので,このように呼ばれる。範囲は多少任意であるが,いずれも試料に関係する特性的な量 (たとえば光の吸収,放射能,熱的性質など) を適当な変換器により電気的な量に変え,増幅して検知する。古典的な化学分析法に比べ,精密,迅速であり,システム化が可能である。質量分析,X線分析,紫外・赤外分光分析,核磁気共鳴,電気分析,クロマトグラフィーなどは機器分析の代表であり,近代分析法の主流となっている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「機器分析」の意味・わかりやすい解説

機器分析【ききぶんせき】

物質の物理的・化学的特性を機器を用いて分析すること。化学反応を利用した化学分析に対比される。分析された情報はエレクトロニクス技術により電気的信号として自動的・自記的に増幅,処理,記録される。機器分析では物質の定性・定量分析ばかりでなく,物質の存在する状態,構造,分離,反応速度,熱変化,分布状態などの測定が可能である。熟練をそれほど必要とせず,正確で速く行うことができるため,工場における自動制御,工程管理,製品管理などに多用されている。電磁波分析,電気化学分析,分離分析などがある。
→関連項目定量分析

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「機器分析」の解説

機器分析

 機械,器具を用いて行う分析.道具といってよい器具を用いるものは含めない.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android