機械の構成に関する理論を取り扱う学問。一般に機械と呼ばれるものは相対運動をするいくつかの部分から成っているので,その相対運動の性質を研究し,これを機械の設計に役だてるのが機構学の目的である。したがって,機構学では,機械を構成する各部分の運動軌跡,各瞬間の速度や加速度などを幾何学的に論ずる機械の運動学がその主要部分をなしている。機械の運動には力やトルクが伴うから,力学的な問題も考えなければならないが,これは機械力学で取り扱い,機構学ではこれらに関する問題は機械力学との関連を明らかにする程度にとどめられる。
機械にはある入力(力とか変位)が一部に与えられて,それを望ましい出力に変換することが要求されている。機構学は,望ましい出力が示されたときにそれにふさわしい機械の構造を探し出すのに役だたねばならない。入力から出力への変換を行うための構造の設計に関係するわけであるから,機械を構成する要素間の運動の伝わり方すなわち運動変換が機構学のおもな対象となり,具体的には,カム機構,歯車,リンク装置などの解析や設計を扱う。おもに回転運動から往復運動への変換に使われるカム機構では,望ましい往復運動を実現するためのカムの形状の決定などが,歯車では滑らかな伝動が行われるための歯形曲線の決定,歯を削り出すための刃物の運動などが研究対象となる。また,リンク装置は,機械の構造のもっとも基本的な運動伝達機構であり,機構学においてはリンク装置の解析と総合は第1の主要分野といっても過言ではない。
機構学で扱われるいろいろな要素が学問の対象となるに至った歴史はさまざまである。歯車などは,水のくみ上げに紀元前から木製のものが使われているが,天体観測などと関連して精確な歯形が必要となってから歯形に関する理論が展開されるようになり,17世紀ごろから数学的解析が始まって実用的な歯形曲線が発明されている。リンク装置の代表ともいえるクランク機構も9世紀ごろから現れているが,学問の対象となるのは18世紀の蒸気機関の誕生のころである。全般的にいって,機構の動きや特性をおもに図式解法で行おうとしたのが20世紀前半までの機構学であり,現在ではコンピューターの普及によって機構の数値解析が盛んになってきている。
執筆者:三浦 宏文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
機械の相対運動を、機械に加わる力を考えないで、機械の動きにのみ注目し、その骨組、すなわち、からくりを研究する学問。機械工学の重要な一分野である。機構を考えるときには、機械各部の強度は無限に大きいものとし、摩耗、変形、破壊などは考えない。したがって、機構の相対運動は材料には関係なく、幾何学的に決まってしまう。機械はいかに複雑にみえても、各部分を適当に分解し、基本的な運動のみに注目して考察すると、比較的簡単な機構の組合せからできている場合が多い。基本的機構としては、リンク装置、カム装置、歯車装置、伝動装置などがある。
リンク装置は、いくつかのリンクの組合せからなるもので、その基本は四つのリンクの端を互いにピン結合した四節回転リンク装置である。このリンク装置で最長のリンクを固定し、最短のリンクを回転させると、このリンクに相対するリンクは往復運動をする。これを、てこクランク機構という。固定するリンクをかえると、二つの相対するリンクが回転する両クランク機構、二つのリンクが往復運動をする両てこ機構が得られる。てこクランク機構のうち、てこの長さをゼロにしたものがスライダークランク機構で、蒸気機関や内燃機関の機構である。このほか、カムや歯車を利用し、平行運動、間欠運動、早戻り運動、遊星歯車装置など、さまざまな機構をつくりだすことができる。
[中山秀太郎]
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