(読み)ヨク

デジタル大辞泉 「欲」の意味・読み・例文・類語

よく【欲】[漢字項目]

[音]ヨク(呉)(漢) [訓]ほっする ほしい
学習漢字]6年
不足、不満を満たしたいと願う。ほしがる。「欲求欲情欲心欲念欲望
(「」と通用)ほしがる気持ち。「欲火欲界愛欲意欲禁欲五欲強欲ごうよく私欲嗜欲しょく情欲食欲性欲大欲貪欲どんよく肉欲物欲無欲利欲

よく【欲/×慾】

ほしがること。自分のものにしようと熱心に願い求めること。また、その気持ち。「―が深い」「仕事に―が出る」「独占―」「名誉―」
[類語]欲望欲求欲情欲念欲心欲気よくけ欲得利欲私欲我欲執着煩悩ぼんのう意欲色気野心野望向上心娑婆気

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精選版 日本国語大辞典 「欲」の意味・読み・例文・類語

よく【欲・慾】

  1. 〘 名詞 〙(ほっ)すること。願うこと。ほしがること。むさぼり求めること。また、その心。欲望。欲心。欲情。
    1. [初出の実例]「げす女の物あらひけるはぎの白かりけるに欲(ヨク)を発(おこ)して」(出典発心集(1216頃か)四)
    2. 「欲をまろめて今の世の人間とはなりぬ」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)三)
    3. [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕

し【欲】

  1. 〘 形容詞シク活用 〙ほしい(欲)

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普及版 字通 「欲」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] ヨク
[字訓] ほっする・ねがう・のぞむ・ほしい

[説文解字]
[その他]

[字形] 形声
声符は谷(よう)。谷に容(よう)・浴(よく)・裕(ゆう)の声があり、容は神容、浴・欲はその神容に接する法をいう。〔説文〕八下に「貪欲(たんよく)なり」と訓する。〔段注〕に谷を空虚、欠(けん)は口を開いて欲する意であるとするが、そのような造字の法はない。金文に谷を欲の意に用いる。容は中に祈って、彷彿として神容のあらわれる意、その神容を拝するを願うを欲、その神容に接するを裕という。〔礼記、祭義〕「其の之れをむるや、にして以て欲なり」とあり、〔注〕に「欲は婉順の貌なり」という。神につかえる態度をいう語である。人の欲望には慾という。

[訓義]
1. ほっする、ねがう、のぞむ。
2. このむ、めでる。
3. よく、ほしい、むさぼる、情慾。
4. しかかる、~とす。

[古辞書の訓]
名義抄〕欲 オモフ・ネガフ・ネガハクハ・ホス・トス・ムサボル・オモヘラク・セムトス 〔字鏡集〕欲 ナムナムトス・セントス・ムサボル・オモヘラク・ネガフ・オモフ・ホス・トス

[声系]
慾は欲声に従う。〔玉〕に「貪るなり」と訓し、欲には「貪るなり、願ふなり、(婬)なり」とする。欲はもと神聖な語で、人欲には慾という。

[語系]
欲・慾jiokは同声。覦jioは声近く、覬覦(きゆ)すること、非望のことを望むをいう。

[熟語]
欲悪・欲火・欲待・欲得・欲念・欲望・欲利・欲慮
[下接語]
愛欲・意欲・欲・怨欲・悪欲・寡欲・我欲・禁欲・五欲・強欲・財欲・止欲・私欲・恣欲・嗜欲・肆欲・色欲・奢欲・邪欲・充欲・獣欲・情欲・食欲・人欲・制欲・性欲・節欲・羨欲・損欲・多欲・大欲・貪欲・窒欲・欲・肉欲・任欲・忍欲・物欲・奔欲・民欲・無欲・養欲・利欲

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「欲」の意味・わかりやすい解説


よく

中国では古代から政治や生き方の問題と関連して取り上げられた。ある程度抑制すべきだとする節欲説、極端に抑制すべきだとする禁欲説、自然におこさせないようにすべきだとする無欲説、放任して充足さすべきだとする縦欲(しょうよく)説、本来欲は寡少なものだとする宋(そうけい)の寡欲説などが戦国時代に唱えられた。実用主義で万事倹約を尊ぶ墨家(ぼくか)は禁欲説を、無為自然を尊び人々が無知無欲であることを理想とする道家(どうか)は無欲説を、人間の感覚的欲を充足することを尊重する魏牟(ぎぼう)、它囂(だごう)らは縦欲説を主張した。節欲説は儒家の立場で、人に内在する道徳性を尊重する孟子孟軻(もうか))が、欲を自主的に節制すべきだとする寡欲説を唱えたのに対して、外的規制の礼を重視する荀子(じゅんし)は、欲の多寡は問題ではなく礼によって外から上手に規制すればよいと考えた。宋(そう)代以後は自然的欲を天理として肯定するとともに、それを超えた過度の欲を人欲として抑制すべきだとする去欲存理説として節欲説は存続した。

[澤田多喜男]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【情】より

…中国思想の用語。狭義には感情,情欲のことで,七情(喜,怒,哀,懼(おそれ),愛,悪(にくしみ),欲)として類型化されるが,広義には静かな〈性〉(本性)が動いた状態をすべて情と呼ぶ。したがって四端(惻隠(あわれむ),羞悪(はじる),辞譲(ゆずる),是非)や思慮なども情の範疇(はんちゆう)に入る。…

※「欲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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