歓喜光寺(読み)かんぎこうじ

精選版 日本国語大辞典 「歓喜光寺」の意味・読み・例文・類語

かんぎこう‐じクヮンギクヮウ‥【歓喜光寺】

  1. [ 一 ] 奈良市菅原町にある法相宗の寺。山号は清涼山。養老五年(七二一)元正天皇の勅願により行基が創建。はじめ菅原寺と称したが、天平二〇年(七四八聖武天皇が歓喜光寺と改めたと伝えられる。のち興福寺一乗院に属した。喜光寺。
  2. [ 二 ] 京都市山科区大宅奥山田町にある時宗の寺。山号は紫苔山。正応四年(一二九一)一遍の弟子聖戒の開基。喜導寺と称した。正安元年(一二九九)六条河原院に移され、六条道場河原院歓喜光寺と改称。昭和五〇年(一九七五)現在地に移転。寺宝「一遍上人絵伝」は国宝。かんきこうじ。

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日本歴史地名大系 「歓喜光寺」の解説

歓喜光寺
かんきこうじ

[現在地名]山科区大宅奥山田

紫苔山と号し、時宗。本尊阿弥陀如来。明治四〇年(一九〇七)まで現京都市中京区中之なかの町東側に位置した。旧地は六条河原かわら院跡地(現京都市下京区)であったため、六条道場とも六条河原院歓喜光寺ともいう。寺伝によれば開基は宗祖一遍の弟子聖戒。

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔成立・移転〕

抜文に「元弘辛未年二月十五日」とあるが(元弘元年は八月九日改元)、中世末―近世初期の作とされる「弥阿上人行状」(寺蔵)によれば、一遍が山城石清水いわしみず八幡宮で神託を感得した縁によって、聖戒が正応四年(一二九一)綴喜つづき八幡やわた(現京都府八幡市)善導ぜんどう寺を建立。その後、正安元年(一二九九)関白九条忠教の外護によって、源融の別荘河原院の地に善導寺を移し天満宮・歓喜寺を合併、六条道場河原院歓喜光寺が建立され、聖戒を第一世としたと伝える。天満宮は菅原道真の旧跡、歓喜寺はその神宮寺であったという。しかし応仁の乱以後の景観を描くとされる中昔京師地図には、六条大路南、堀川ほりかわ東に「六条道場」とみえ、また天文二一年(一五五二)八月二八日の当寺雑掌宛の室町幕府奉行人連署奉書案(歓喜光寺文書)に「歓喜光寺号六条道場事、為当時荒野之条、引高辻烏丸、勤行等無退転、然河原沙汰十念利益之時者、当寺敷地六条東洞院出向、可其節之旨、被聞食入訖」とあり、当地荒廃につき道場を高辻烏丸たかつじからすま(現下京区)に移し、「河原沙汰」つまり刑死人等への十念授与の時は、六条東洞院ひがしのとういん(現同区)の寺地に出向したと記す。したがって中世には、本尊を移して各地を転々とする引道場の形態をもっていたと思われるが、六条東洞院に寺地があったことは確実である。天正年間(一五七三―九二)に至り羽柴(豊臣)秀吉によって京極錦きようごくにしき小路(現中京区)に移転。「山城名勝志」も「京極錦小路西」と記し、以後近世を通じてこの場所にあった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歓喜光寺」の意味・わかりやすい解説

歓喜光寺
かんぎこうじ

京都市山科(やましな)区大宅奥山田(おおやけおくやまだ)にある時宗(じしゅう)の寺。もと六条にあったから六条道場ともいう。時宗の開祖一遍(いっぺん)の弟子聖戒(しょうかい)を開基とする山城(やましろ)国(京都府)綴喜(つづき)郡八幡庄(やわたのしょう)の善導寺がもとで、1299年(正安1)これを京都六条に移建して紫苔山河原院(したいさんかわらのいん)と号したのに始まる。天正(てんしょう)年間(1573~92)寺町錦小路東入ル(現在の四条新京極錦)に移り、その後たびたび火災にあい、再建されるなどして、1975年(昭和50)、現在地に移転した。寺名は近代の改称である。寺宝に国宝の絹本着色『一遍聖絵(ひじりえ)』(文は聖戒、絵は円伊(えんい))がある。

石田瑞麿

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歓喜光寺」の意味・わかりやすい解説

歓喜光寺
かんきこうじ

京都市山科区にある時宗の寺。紫苔山と号し,時宗六條派の本山。一遍上人のいとこ,聖戒が善導寺として創建。国宝の円伊筆『一遍上人絵伝』 (鎌倉時代,12巻) を所蔵する。時宗の開祖,一遍の生涯を描いたもので,絹本着色による山水描写の表現は絵画史上の傑作の1つとして知られる。なお,この寺より逸出した第7巻は,現在東京国立博物館蔵。

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