比翼の鳥(読み)ひよくのとり

精選版 日本国語大辞典 「比翼の鳥」の意味・読み・例文・類語

ひよく【比翼】 の 鳥(とり)

空想の鳥で、雌雄各一目一翼、常に一体となって飛ぶというもの。男女の契りの深いこと、仲むつまじいことにたとえる。白居易長恨歌」の「在天願作比翼鳥、在地願為連理」で有名
延喜式(927)二一「祥瑞 比翼鳥。〈状如鳬。一翼一目。不比不飛〉」

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デジタル大辞泉 「比翼の鳥」の意味・読み・例文・類語

ひよく‐の‐とり【比翼の鳥】

雌雄それぞれが目と翼を一つずつもち、2羽が常に一体となって飛ぶという、中国の空想上の鳥。夫婦の仲のよいことにたとえられる。
極楽鳥ごくらくちょう別名

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故事成語を知る辞典 「比翼の鳥」の解説

比翼の鳥

男女の仲がむつまじいことのたとえ。

[使用例] たとえ生きても死んでも、離れていても、お互いの心は、比翼の鳥のように、連理の枝のように、固くむすばれているものと信じていますから、ちっとも淋しくなんかない[吉川英治宮本武蔵|1935~39]

[由来] 必ず並んで飛ぶという、中国に古くから伝わる伝説上の鳥のこと。たとえば、「爾雅―釈地」には、南方に住む「ならばざれば飛ばざる(二羽一緒でなければ飛べない)」鳥として記述があり、その注には、「いちもくいちよくにて、あいすなわち飛ぶ(目も翼も一羽に一つずつしかなく、つがいの二羽が一体となって飛ぶ)」とあります。また、八~九世紀、唐王朝の時代の中国の詩人はくきょ(号は楽天)が、ある皇帝絶世美女よう悲恋をうたった「ちょうごん」という作品で、二人に「天に在りては願わくは比翼の鳥とり、地に在りては願わくは連理の枝とらん(空を飛ぶ比翼の鳥のように、大地から生える連理の枝のようになりましょう)」と誓わせているのが、有名です。なお、「連理の枝」とは、別々の木の枝がつながって、一本になったものをいいます。

[解説] 「長恨歌」は、美女が死んでしまうという悲恋物語。そのため、「比翼」には悲劇的なイメージがつきまとうことがあります。悲恋の末に亡くなった男女の墓を「比翼塚」と呼ぶことが多いのは、このためです。

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改訂新版 世界大百科事典 「比翼の鳥」の意味・わかりやすい解説

比翼の鳥 (ひよくのとり)

中国において,雌雄のつがいが一体となって飛ぶという想像上の鳥。封禅が行われるときには東海から比目の魚が,西海から比翼の鳥がやってくるといわれる一方,《山海経(せんがいきよう)》では崇吾山の蛮蛮とよばれる比翼の鳥が大水をもたらすといい,吉鳥でもあれば凶鳥でもある。白居易(楽天)の《長恨歌》が〈天に在っては願わくは比翼の鳥とならん〉とうたうように,男女の深いちぎりのたとえにも用いられ,〈比翼塚〉はこれにもとづく。
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