中国,明代に編纂された巨大な類書(一種の百科全書)。総合文献集としての性格も濃い。明の成祖(永楽帝)は即位まもなく,1403年(永楽1),解縉(かいしん)(1369-1415),楊士奇ら文人たちを翰林に入れ,太古以来の全書籍から必要事項を網羅した大類書の作成を命じた。翌年完成した書物は《文献大成》と名づけられたが,帝の意にみたず,姚広孝をはじめさらに多くの学者と2000人以上の筆写人が動員され,1405年から08年冬まで増訂が行われた。こうしてできたのが《永楽大典》で,2万2877巻,1万1095冊,《洪武正韻》の韻字の順序に従って項目が分類配列されている。1冊の大きさは縦50.2cm,横29.6cm,きわめて上質の白宣紙に赤い罫をひき,黒字で書写し,赤の句点をうつ。この書をひらけば古今の事象が一覧できるようにという永楽帝の意図のとおり,明初までのほとんどすべての文献が引用され,しかも,それまでの類書のように関係する一句一章の引用にとどまらず,一巻,あるいは書物全体がまとめて採録されている特色をもつ。帝位を奪し,評判を気にした永楽帝が,巨大な文化事業を通して人気回復をはかった結果といえよう。
《永楽大典》は宮中の文楼に秘蔵されていたが,1562年(嘉靖41),徐階が責任者となり毎日1人3葉(裏表6ページ)ずつを109人が書写し,67年(隆慶1)に副本1部を完成した。こうして原本は宮中文淵閣に,副本は皇史宬(こうしせい)(皇室書庫)に置かれた。前者は明末の動乱で焼失し,後者は清朝になって翰林院に移管されたが,すでに2000巻以上が失われていた。乾隆帝は《四庫全書》の編纂にあたり,《永楽大典》の中に一般では亡佚してみられぬ書物が多く含まれていることに注目し,各項目からそれらを抽出復元させた。こうして経部66,史部41,子部103,集部175部,総計385部4926巻の書物が再び日の目をみた。正史の《旧五代史》,王安石の《周官新義》などはその代表で,宋代の文集もこのとき再編集されたものが多い。
《永楽大典》からの佚書の復元はそれにとどまらず,清代,宮城に出入りできた人たちによっても非公式に行われた。徐松の《宋会要輯稿》はじめその数は150部に達する。《永楽大典》は本来の類書としての役割よりも,とくに宋・元時代の書物を今日に伝える上で貴重な存在であったといえる。《四庫全書》の編纂以後も《永楽大典》の散逸はつづき,1875年(光緒1)には半分の5000冊をきる状況であったが,1900年の義和団事件で,翰林院が焼けると,焼失略奪などで急速に失われ,現在では北京図書館,アメリカ国会図書館にややまとまった量が残存するほか,イギリス,日本などに数冊から十数冊秘蔵されているにすぎなくなった。1960年北京の中華書局はそれらをまとめ,730巻の覆印縮小本を刊行し,62年には台湾の世界書局がそれに9巻を追加して洋装覆印本を出しているから,容易に利用することができる。日本では東京の静嘉堂文庫の12巻7冊あるのが多く,東洋文庫,天理図書館などのものは複製が刊行されている。
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執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国で編纂(へんさん)された最大の類書。明(みん)の永楽帝は即位の翌年の1403年7月、翰林(かんりん)侍読学士解縉(かいしん)、姚広考(ようこうこう)らに命じて、経、史、子、集百家の書から天文、地志、陰陽、医卜(いぼく)、僧道、技芸にわたる一大類書を編集させ、翌年完成した。この書名を『文献大成』とよんだが、さらに諸書の博捜(はくそう)を続けさせ、その結果1409年の冬にできあがったのが『永楽大典』である。本文2万2877巻、凡例(はんれい)目録60巻、1万1095冊、2169人が従事したという。あらゆる書物の記事を『洪武正韻(いん)』の文字の順序で配列した。短期間の編集のため粗雑な点もあるが、原本がすでになくなっているものを多く収める。とくに『元一統志』をはじめ、宋(そう)、元、明の地志類の収集は貴重。あまりにも大部なため、正本は1本しか蔵しなかったが、1562年徐階らが勅命で副本をつくり、明末の動乱で正本が焼かれたのちも、副本が清(しん)朝に引き継がれた。しかし、アロー戦争や義和団事件などで焼失し、現在は約60冊しか残っていない。
[川勝 守]
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明の永楽帝が勅命をもって編纂させた中国最大の類書(百科事典)。全2万2877巻1万1095冊。帝の即位まもなく編纂させた文献大成をもとに再編修させ,3年を費やして1408年に完成した。広くあらゆる分野の文献を集めた大規模なものであったが,焼失や散逸により一部が現存するにすぎない。学術資料として価値が高い。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…のち本姓にもどり,広孝の名を賜ったが,蓄髪せず寺院に居住した。学を好み詩にも巧みで,《太祖実録》《永楽大典》の編纂に参加した。【寺田 隆信】。…
※「永楽大典」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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