沈む(読み)シズム

デジタル大辞泉 「沈む」の意味・読み・例文・類語

しず・む〔しづむ〕【沈む】

[動マ五(四)]
水面上にあったものが水中に没する。水底下降する。また、水底につく。「ボートが―・む」「島が―・む」⇔浮かぶ浮く
周囲より低くなる。「地盤が―・む」「床が―・む」
下の物にめり込む。「柱が―・む」「頭が枕に―・む」
太陽・月などが、地平線・水平線より下へ移動する。「夕日が水平線に―・む」
飛行する物体投球などが急にその位置を下げる。「機体ががくんと―・む」「ボールが打者の手元で―・む」

㋐望ましくない境遇・状態に陥る。「不運に―・む」「病に―・む」
㋑その心境になりきる。特に、暗い気持ちになる。落ち込む。「物思いに―・む」「悲しみに―・む」「―・んだ声」
地味で落ち着いた感じになる。「―・んだ鐘の音」「全体に―・んだ色調の絵」
色や模様などが浮き立たなくなる。また、存在が目立たなくなる。「黒っぽい背広にグレーのネクタイではネクタイが―・んでしまう」
ボクシングで、打ち倒されて立てなくなる。「マットに―・む」
10 ゲームなどで、最初の持ち点以下になる。「麻雀で一万点―・む」
[可能]しずめる
[動マ下二]しず(沈)める」の文語形
[下接句]石が流れて木の葉が沈む浮きつ沈みつ浮きぬ沈みぬ思案に沈む涙に沈む
[類語](1)(2)(3)(4)(5没する沈没沈める沈下沈降沈殿下がる落ちる落ち込む下降降下低下低落下落陥る落っこちる落下する落馬する落輪する脱輪する墜落する失墜する滑落する転落する崩落する滑り落ちる転げ落ちる崩れ落ちる零れ落ちる零れる更ける傾く落ちる暮れる暮れ掛かる暮れなずむ釣瓶落とし/(6㋑)塞ぐふさがる結ぼれる滅入めい曇るうつする鬱屈うっくつする鬱結うっけつする消沈するしょげるしょげ返るふさぎこむ打ち沈む暗然重苦しい沈み込む気が重い気が沈む物憂いびんびんせつせつ痛切切実深刻ひしひしつくづくしみじみじいん心から哀切哀れ悲しい物悲しいうら悲しいせつないつらい痛ましい悲愴悲痛悲傷沈痛苦しい憂い耐えがたいしんどい苦痛やりきれないたまらない遣る瀬ない断腸の思い胸を痛める胸が痛む胸が塞がるけだるいアンニュイ胸が裂ける胸が張り裂ける胸がつかえる胸が潰れる胸がつまる気を気遣わしい憂鬱憂愁沈鬱メランコリー気鬱気塞ぎ鬱鬱陰鬱暗鬱鬱気うっき鬱悶うつもん鬱積抑鬱憂さ鬱陶しい悶悶もんもん

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精選版 日本国語大辞典 「沈む」の意味・読み・例文・類語

しず・むしづむ【沈】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 人や物が、水面より下に行く。水中に没する。また、水底につく。⇔浮く
      1. [初出の実例]「難波潟潮干なありそね沈(しづみ)にし妹が姿を見まく苦しも」(出典:万葉集(8C後)二・二二九)
      2. 「今は西海の浪の底にしづまば沈め」(出典:平家物語(13C前)七)
      3. 「しづかさは栗の葉沈む清水哉〈柳陰〉」(出典:俳諧・猿蓑(1691)六)
    2. 太陽や月などが、水平線や地平線の下に隠れる。
      1. [初出の実例]「時に萍実西に没む」(出典:海道記(1223頃)序)
    3. 水面に物の影が映る。
      1. [初出の実例]「めづらしや昔ながらの山の井はしづめる影ぞくちはてにける〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)雑二・一一三五)
    4. 身分が下がったり、生活に困ったりして、惨めな状態になる。失意の状態になる。世に埋もれて過ごす。おちぶれる。沈淪する。
      1. [初出の実例]「身のしづむことかなしきことは季英(すゑふさ)よりほかにしる人なし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)沖つ白浪)
      2. 「都をすてて、かしこにしづみゐしを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    5. 罪、地獄、また、悪の道など、好ましくない状態に深くおちこむ。
      1. [初出の実例]「来ん世には、地ごくの底にしづみて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)
      2. 「汚穢なる想念に陥り、卑陋なる行状に沈(シヅム)ことありとも」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一二)
    6. 気持のはれない状態におちこむ。物思いにふけったり、気がふさいだりする。
      1. [初出の実例]「古りにし嫗(おみな)にしてやかくばかり恋に将沈(しづまむ)手童(たわらは)のごと」(出典:万葉集(8C後)二・一二九)
      2. 「末造の家の空気は次第に沈(シヅ)んだ、重くろしい方へ傾いて来た」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一五)
    7. ( 「病に沈む」の形で ) 重い病気にかかる。
      1. [初出の実例]「此者、身沈動転」(出典:正倉院文書‐天平宝字二年(758)一〇月一〇日・人名未詳不参解)
      2. 「やまひにしづみて返し申給ける位を」(出典:源氏物語(1001‐14頃)澪標)
    8. ( 「涙に沈む」の形で ) はげしく泣く。泣き伏す。
      1. [初出の実例]「中宮は涙にしづみ給へるを見たてまつらせ給も」(出典:源氏物語(1001‐14頃)賢木)
    9. 姿勢を瞬間的に低くする。
      1. [初出の実例]「おがみうちにてうど打、ひろ綱はっと云てしづみければ、九郎あまってかっぱとふし」(出典:浄瑠璃・きさきあらそひ(1687)二)
    10. 風呂の湯に肩までつかる。
      1. [初出の実例]「コウコウ、ここへしづみな」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
    11. 音や色がうわつかないで落ち着いた感じである。
      1. [初出の実例]「お召の沈んだ小豆色の派手な矢絣の薄綿を」(出典:別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉)
    12. ゲームなどで、最初の持ち点以下になる。
    13. ボクシングで、ノックアウトされマットに倒れる。
      1. [初出の実例]「インファイトにはいったら、もうおめえはマットに沈むほか手がねえんだからな」(出典:倒れる男(1958)〈菊村到〉)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙しずめる(沈)

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