海浜や河辺に行ってみそぎをすることをいう。水には一般にいっさいの罪や穢(けがれ)を洗い流す浄化力があると考えられ,とくに塩を含有した潮水は強い浄化力をもつとされた。祭りや神事を前に神官などの祭りの奉仕者が浜降りをしたり,潮水で家の周囲や神棚を清める風習は各地にみられる。宮崎県などでは,祭りの朝に〈はまくだり〉といって,海に行って潮水をくんで家の内外にまいたり,海で拾った石を神社に納めて拝むという。また毎月1日,15日などに潮花(しおばな)汲みとか〈おしおい〉といって潮水をくんで神棚などを清める風もあり,浜降りの略化された形とみられている。奄美や沖縄地方などでは,一年で最も潮のひく旧暦3月3日に〈浜降り〉といって海や磯に行き一日中遊ぶ風習がある。一方,神輿自体が海浜に御幸する浜降神事や浜出(はまいで)神事も海上安全,豊漁祈願のため各地で行われているが,とくに関東地方の海岸部で盛んである。これは一種の神のみそぎと考えられ,なかには神輿洗いや海中渡御の例もある。神奈川県寒川神社の浜降祭(7月15日)や千葉県の安房神社の浜降神事(8月10日)などは,とくに有名である。
→磯遊び
執筆者:宇野 正人
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