海上や海浜に出没するとされる妖怪の一種。船幽霊とともに海の怪異の主役をなす。近世の随筆である《斎諧俗談》や《甲子夜話》などに多くの事例が記録されており,今日でも海民の間に伝承されている。その姿は,身はスッポンだが人間の顔をしており,頭に毛がないとか,半身を海上に現して立って行くという。美しい女に化けて,泳ぎくらべをしようと挑んでくるともいい,概して裸形の大坊主姿のものが多い。〈エナガ(柄杓)を貸せ〉といって船に近づき,それで海水を船中にくみ込んで沈めるのだという。その防御法として,エナガの底を抜いて投げ与えるとか,船タデ(船の虫干し)に使ったもので船の周囲をなでるのがよいと伝えられる。年の夜や盆などに出現することが多いといわれる。海坊主はトドやイルカ,大波や入道雲などの誤認による錯覚や幻覚とも考えられるが,海難者を目撃したとか,その伝聞である場合もある。海坊主の名称や出現の時期が物語るように,海民の海上での無縁仏への信仰が素地にあると考えられる。
執筆者:北見 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
海上に現れたという妖怪(ようかい)。『斉諧俗談(せいかいぞくだん)』によると、西海の大洋に現れ、体はスッポンで、人の顔をしている。頭には毛がなく、大きなものは5、6尺(約1.5~1.8メートル)ある。漁師がこれに会うと漁がない。たまたまつかまえて殺そうとすると、涙を流して救いを求めるようにみえるというから、カメの姿を誤認したもののようである。『奇異雑談集』の話では、舟から3、4間(約5~7メートル)先に黒い入道頭が浮かび出て、波の間に見え隠れする。大きさは人の頭を五つ六つあわせたくらいで、目は光り嘴(くちばし)が長くて鳥のようで、口の大きさは2尺(約60センチメートル)ほどもあるという。海坊主をタコの姿に見立てたり、魚の化けたものだという説もあって、ボラが変じてトドとなり、トドがまた変じて海坊主になるなどともいう。『天地或問珍(てんちわくもんちん)』には海小僧という妖怪をあげ、形は小児で海上を歩くことがあり、足が速い。竜宮(りゅうぐう)の人だといい、これが海上に出ると、かならず近いうちに大風が吹くという。想像力によってさまざまな姿が考えられているが、本来は海神であって、その信仰が衰えるとともに、恐ろしさばかりが強調されて妖怪化したものである。
[井之口章次]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
《〈和〉doctor+yellow》新幹線の区間を走行しながら線路状態などを点検する車両。監視カメラやレーザー式センサーを備え、時速250キロ以上で走行することができる。名称は、車体が黄色(イエロー)...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新