日本大百科全書(ニッポニカ) 「湯浅譲二」の意味・わかりやすい解説
湯浅譲二
ゆあさじょうじ
(1929―2024)
作曲家。福島県郡山(こおりやま)市生まれ。慶応義塾大学医学部中退。作曲は独学。1951年(昭和26)武満徹(たけみつとおる)らと「実験工房」を結成し欧米の前衛音楽を紹介するとともに、ミュージック・コンクレート『レスピューグ』(1956)、『7人の奏者のためのプロジェクション』(1955)などの自作を発表する。『プロジェクション・エセムプラスティック』(1961)、『ホワイト・ノイズによる「イコン」』(1967)などの電子音楽作品を書く一方で、2本のフルートのための『相即相入』(1963)、『箏(そう)とオーケストラのためのプロジェクション「花鳥風月」』(1967)など、邦楽器や日本の古典音楽の理論に示唆を得た作品を発表。『オーケストラのためのクロノプラスティック』(1972)、『オーケストラの時の時』(1976)などの1970年代に入ってからの作品は、それまでミュージック・コンクレートや電子音楽作品で試みてきた音響イメージをオーケストラにもち込み、そこに湯浅の時間感覚を重ねて独特のクラスター(音塊)作法を提起している。1980年代以降は、初期に始まる『内触覚的宇宙』シリーズのほか、『始源への眼差しⅡ』(1992)のように、宇宙、古代へとさかのぼった、スケールの大きな音響をイメージする作品を発表。放送や映画の音楽も多い。1982~1995年カリフォルニア大学サン・ディエゴ校で教授を務める。1997年(平成9)芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章(しじゅほうしょう)、1999年日本芸術院賞・恩賜賞を受ける。2014年(平成26)文化功労者。著書に『現代音楽・ときのとき』『人生の半ば』などがある。
[楢崎洋子]
『『現代音楽・ときのとき』(1978・全音楽譜出版社)』▽『『音楽のコスモロジーへ』(1981・青土社)』▽『『人生の半ば――音楽の開かれた地平へ』(1999・慶応義塾大学出版会)』▽『岩城宏之・湯浅譲二他著『行動する作曲家たち――岩城宏之対談集』(1986・新潮社)』▽『山口昌男著『オペラの世紀――山口昌男対談集』(1989・第三文明社)』▽『武満徹著『武満徹対談集――創造の周辺』(1997・芸術現代社)』▽『河野保雄著『音と日本人――近代日本の作曲家たち』(2001・芸術現代社)』