げんじ‐な【源氏名】
〘名〙
※雑俳・柳多留‐一〇一(1828)「紫帽子源氏名の客があげ」
②
遊女や
娼妓などが
本名のほかに付けた呼び名。はじめは「源氏物語」の巻名に基づいていたが、のち、
高尾、
千早など巻名とは関係のない名称にもいうようになった。また、バーやクラブなどの飲食店につとめる女性の呼び名にもいう。
※
洒落本・甲駅雪折笹(1803)四「どこの内にゃアだれがお職で、源氏名
(ゲンジナ)がいくたり、おのじ名がいくたりある」
※
たけくらべ(1895‐96)〈
樋口一葉〉一「昨日河岸店に何紫の源氏名
(ゲンジナ)耳に残れど」
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デジタル大辞泉
「源氏名」の意味・読み・例文・類語
げんじ‐な【源氏名】
源氏物語54帖の題名にちなんでつけられた、宮中の女官や武家の奥女中などの呼び名。近世以降は遊女や芸者につけられ、現代では、バーのホステスなどの呼び名にもいう。初めは源氏物語の巻名に基づいていたが、やがて、それに関係のない名称についてもいうようになった。
[類語]芸名・筆名・ペンネーム・雅号・四股名・号・俳号
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源氏名 (げんじな)
女性が職業上に与えられる別名の一種。もとは《源氏物語》の帖名をとって命名したので源氏名という。宮中の女官には候名(さぶらいな)・殿名(とのな)・小路名(こうじな)などの使用例があり,源氏名もそうした形式の一種であろう。帖名の使用にも典侍・掌侍は漢字2字をつけ,命婦は1字というように定めた時期もある。源氏名の風習は武家に移り,近世の幕府・大名家の奥女中にも用いられた。また遊女の名にも使われたが,のちには《源氏物語》と関係のない雪野・千代鶴などの漢字2~3字の名も源氏名といいならわした。源氏名は,おもに高級妓につけられ,なかには高尾のように通り名として何代も襲名することがあった。これに対し岡場所の女郎や芸者はおの字名(仮名2字におの字をつける。例:おきぬ)を用いることが多かったが,品川の女郎や京の芸子は源氏名を併用する場合もあった。明治以後は水商売の女子従業員の店用の仮名(かめい)のすべてに拡大使用されるようになり,サリーといったものまで源氏名と呼ばれ,自分で命名する例も生じた。
執筆者:原島 陽一
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源氏名
げんじな
職業女性が用いる仮名(かめい)の一種。宮廷の女官が『源氏物語』の帖名(じょうめい)を仮名として与えられたのに始まる。この風習は武家の奥向きに伝わり、近世には遊女の妓名(ぎめい)にも源氏名を用いた。厳密に帖名だけに限らず、小紫(こむらさき)、高尾(たかお)など漢字2、3字の名をすべて源氏名という。近代になって水商売の女性の仮名に拡大したため外国名の源氏名が生じた。なお、芸者などが用いた漢字でない2音の名を「おの字名」(例、おしま)という。
[原島陽一]
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源氏名【げんじな】
宮中高等女官に賜る称号で,多くは《源氏物語》54帖の題にちなむ。転じて遊女の妓名や近世の幕府・大名家の奥女中にも用いられた。非公認の岡場所の女郎は仮名2字に〈お〉の字を冠した〈おの字名〉(例〈おきぬ〉)を用いた。
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源氏名
げんじな
遊女の妓名。京の島原,駿府の二丁町,江戸の吉原などの太夫,格子,天神,散茶,梅茶,囲いから局にいたるまで源氏名を用いた。太夫は京で吉野,大坂で夕霧,江戸で薄雲,揚巻,高尾,瀬川,花扇などが有名。大名,高家に奉公した女中が『源氏物語』の帖名にちなんだ優雅な名をその家での呼び名として用いたものが転じたといわれる。
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