熊本城跡(読み)くまもとじようあと

日本歴史地名大系 「熊本城跡」の解説

熊本城跡
くまもとじようあと

[現在地名]熊本市本丸・二の丸・宮内・千葉城町・古京町・古城

熊本市の中央茶臼ちやうす山の丘陵地帯に、加藤清正によって築城された近世の平城。茶臼山は熊本平野に北から突出する京町きようまち台地末端を占め、東高西低の地形をなす。本丸を丘陵東部の最高地点(標高四九メートル)に置き、二ノ丸・三ノ丸と西下して、藤崎ふじさき台下段(標高三〇メートル)の最西端を終点とする。「熊本市飽託郡誌」に東西約一三町、南北一八町とある。東部に孤立して千葉ちば城跡(標高二一メートル)西南部に隈本古くまもとふる城跡がある。城の東・南側の断崖に沿って坪井つぼい川が流れ、内堀の役目を果す。さらに町人町・武家屋敷を挟み、その東南を白川がめぐり、外堀として代用される。西は井芹いせり川により花岡はなおか山一帯と隔てる。坪井川は築城以前は、現在のうまや橋付近から下通しもとおり一丁目、新市街しんしがい付近を通って白川に注いでいたが、清正により流路を茶臼山南麓沿いに変更され、西南の北岡きたおか付近で井芹川と合流するようになった。北の京町台地との間は地峡で掘切られ、一筋の隘路のみでつながる。西南は深堀が巡らされる。白川・坪井川・井芹川の三川を巧みにあしらった地形利用の典型的な近世の平城。地勢上西方に弱点があるので、本丸を東方に構え、正面である大手を西方に設け、城郭全体の主軸をおよそ東西の方向に置く。

熊本城の起りは、応仁―文明(一四六七―八七)の頃出田秀信が近世の熊本城の東部に築城した千葉城に始まる。その後、大永―享禄年間(一五二一―三二)鹿子木親員(寂心)が出田氏に代わって入城したが、規模が小さいため、茶臼山の西南麓に新たに隈本古城を築いたという。天文年間(一五三二―五五)中頃、豊後の大友宗麟により古城落城、代わって城親房が入城、孫の親政の時豊臣秀吉の軍に降った。秀吉は初め佐々成政に肥後一国を与え、成政はこの城に入城したが、天正一六年(一五八八)成政は国人一揆の責任を問われて失脚、その後は隈本城番として浅野長政、さらに加藤清正が入城する。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「熊本城跡」の解説

くまもとじょうあと【熊本城跡】


熊本県熊本市中央区本丸、二の丸、宮内、古城町、古京町、千葉城町にある城跡。南に向かって延びる京町台地の先端、茶臼山丘陵一帯に築かれ、坪井川と井芹川を内堀に見たて、南東を流れる白川を外堀とし、周囲は5.3km、面積98ha。応仁年間(1467~69年)に肥後守護菊池氏の一族である出田(いでた)氏が、現在の千葉城町に千葉城を築いたのが始まりで、その後、1496年(明応5)に菊池氏重臣の鹿子木親員(かのこぎちかかず)(寂心(じゃくしん))が隈本城を古城に築き、豊後守護大友氏やその配下の城親冬(じょうちかふゆ)などが居城した。1587年(天正15)、豊臣秀吉の九州征伐のとき、薩摩の島津氏に属した親冬の孫、久基は城を明け渡して筑後に下り、肥後国を重視した秀吉は重臣の佐々成政(さっさなりまさ)を領主とした。しかし、成政は検地を強行して肥後国人一揆をまねき、城は猛攻を受けることになったが、かろうじて落城を免れた。翌1588年(天正16)、肥後国の北半国を得た加藤清正が入城し、新田開発や南蛮貿易などに力を入れたので国は富み、清正は領民から慕われるようになる。そして、文禄・慶長の役(1592~98年)、関ヶ原の戦いを経て、清正は肥後国54万石の領主となった。城はかつての千葉城・隈本城を取り込むように茶臼山丘陵一帯に築かれ、およそ7年をかけて1607年(慶長12)に完成したという。優れた土木技術を用いて築かれた城は、丘陵東の最高所に全面石垣積みの本丸を置き、西方には重点箇所にだけ石垣を築いた二の丸・三の丸を配した。石垣普請の名手といわれた清正が築いた堅牢な石垣は、現在もほぼ当時の優美な姿を残している。その後、細川氏の修理と増築によって、大天守・小天守・本丸御殿・本丸東三階櫓(やぐら)など多くの建物があったが、1877年(明治10)の西南戦争で天守と本丸御殿などは焼け落ちた。近世の貴重な城郭遺構として、1933年(昭和8)に焼け残った宇土櫓・監物櫓など13棟の建物が重要文化財に指定され、城跡は国の史跡に指定された。1955年(昭和30)には特別史跡になり、2007年(平成19)、築城400年に際して、本丸御殿、西出丸の塀、戌亥櫓、南大手門などが復元された。JR九州新幹線ほか熊本駅から熊本市電「熊本城・市役所前」下車、徒歩約3分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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