物上代位(読み)ブツジョウダイイ(その他表記)Surrogation[ドイツ]
subrogation[フランス]

デジタル大辞泉 「物上代位」の意味・読み・例文・類語

ぶつじょう‐だいい〔ブツジヤウダイヰ〕【物上代位】

担保物権目的物売却賃貸滅失破損などによって金銭その他の物に転化した場合に、担保物権はそれらの物の上に効力を及ぼし、優先弁済を受けられること。

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精選版 日本国語大辞典 「物上代位」の意味・読み・例文・類語

ぶつじょう‐だいいブツジャウダイヰ【物上代位】

  1. 〘 名詞 〙 担保物権は、その目的物が売却、賃貸、滅失、毀損などにより法律上または事実上価値形態を変えても、物の変形である請求権の上に効力を及ぼすものとされること。たとえば目的物が売却されたときは代金について、また、焼失したときは火災保険金について、債権者は担保物権を行使して優先弁済をうけることができる。

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改訂新版 世界大百科事典 「物上代位」の意味・わかりやすい解説

物上代位 (ぶつじょうだいい)
Surrogation[ドイツ]
subrogation[フランス]

一般に留置権を除く担保物権に共通な特性。質権抵当権および先取(さきどり)特権はいずれも目的物の交換価値から優先弁済をうけることにより債権担保の機能を果たすものであるから,その目的物が価値的に別のもの(前記損害賠償請求権,火災保険金請求権など。これを代位物Surrogatという)に姿を変えた場合に,その変形物に効力を及ぼすものとすることが衡平に適する。これを物上代位という。たとえば甲が乙に質入れ中の動産が第三者丙の過失によって失われた場合に,甲は丙に対し不法行為に基づく損害賠償請求権を取得するが,乙の質権はこの損害賠償請求権上に存続する。また甲の所有家屋上に乙のため抵当権が設定されていたところ,この家屋が類焼して,甲は丙保険会社に対し火災保険金請求権を取得するが,乙の抵当権は,この保険金請求権上に存続する。

 日本民法先取特権について,目的物の売却,賃貸,物権設定,滅失,毀損によって担保設定者が取得した金銭その他の物への権利(売却代金,賃料等,保険金等への請求権など)の上に効力を及ぼすと規定し(民法304条),これを質権,抵当権にも準用する(350,372条)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「物上代位」の意味・わかりやすい解説

物上代位
ぶつじょうだいい

担保物権の目的物が売却・賃貸・滅失・損傷されたことにより、その所有者が金銭その他の物を受ける場合に、担保権者がそれらの物のうえに優先弁済を受ける権利を行使すること。たとえば、担保の目的物が売却された場合に、担保権者は優先弁済を受ける権利を売買代金に対して行使することができる。しかし、そのためには担保権者は、支払いがなされる前に、売買代金請求権を差し押さえなければならない。同様に、担保の目的物が他人の不法行為で滅失した場合には、損害賠償請求権に物上代位することができる。先取特権・質権・抵当権はこの効力をもつ(民法304条・350条・372条)。これらの担保物権にこのような効力が認められるのは、これらの担保物権が目的物それ自体を目的とするのではなく、その交換価値を把握するものだからである。すなわち、仮に目的物が滅失したとしても、その交換価値を表すものが残っている場合には、そのうえに担保物権は存続する。たとえば、抵当権の設定された建物が焼失したとしても、抵当権設定者(建物の所有者)が火災保険金請求権を有する場合には、抵当権者は、その火災保険金請求権を行使することができる。したがって、交換価値の把握を目的としない担保物権、すなわち目的物を留置することによって債務の弁済を促す留置権には物上代位性は認められない。

[高橋康之・野澤正充]

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百科事典マイペディア 「物上代位」の意味・わかりやすい解説

物上代位【ぶつじょうだいい】

担保物権の目的物の売却・賃貸・滅失・破損によってその物の所有者が金銭その他の物を受ける請求権を取得した場合に,その担保物権がこの請求権の上に効力を及ぼすこと。先取特権質権抵当権はこの効力をもつ。たとえば,抵当家屋が焼失して火災保険金請求権に変じたとき,債権者はその請求権を差し押え,この請求権の上にも抵当権の効力を及ぼさせることができる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「物上代位」の意味・わかりやすい解説

物上代位
ぶつじょうだいい
Surrogation

担保物権の目的物が売却,賃貸,滅失,破損され,その交換価値が,それぞれ売買代金,賃料,保険金などの請求権として現実化された場合,これらの請求権にも担保物権の効力が及ぶこと (民法 304) 。たとえば,抵当権の目的である建物が焼失したときには,債務者の火災保険金支払請求権のうえにも効力が及ぶ。物上代位を認められる担保物権は,先取特権質権および抵当権であって留置権は含まれない。請求権に代位するものであるから,払渡しまたは引渡し前にその請求権を差押えることが要件となる (304条1項但書) 。

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世界大百科事典(旧版)内の物上代位の言及

【保険代位】より

…保険者が被保険者に保険金を支払ったときに,一定の要件のもとに,被保険者の有するある種の権利が保険者に移転することをいう。保険代位は保険金の支払により被保険者が不当な利益を得ることを防止する措置であり,損害の塡補(てんぽ)を目的とする損害保険契約のみに認められ,生命保険契約には認められていない。商法上,保険代位には残存物代位(661条)と請求権代位(662条)がある。前者は,保険の目的が全部滅失し保険金が全部支払われた場合にその目的について有していた被保険者の権利が保険者に移転することであり,海上保険における難破物や火災保険における焼残物に対する所有権などがある。…

※「物上代位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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