亡くなった人に相続人がいない場合、生計を同じくしていた人や療養看護した人、施設などに特別の縁故があったと家庭裁判所が認めると、遺産の一部または全部が分与されると民法が規定している。特別縁故者がいない場合は遺産は国庫に収納される。
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死亡した者(被相続人)に相続人のないことが確定してから3ヵ月以内に,被相続人と特別の縁故があったとする者から申立てがなされ,家庭裁判所が相当と認めるときは,残存する遺産の全部または一部をこの者に分与する旨の審判をすることができる(民法958条の3,家事審判法9条1項甲類32号の2)。1962年の民法一部改正で新設された比較法的にも珍しい規定である。特別縁故者とは,厳密には,この遺産分与を受ける前提として,裁判所によって縁故の存在が認められた者をいう。民法は,特別縁故者の例示として,〈被相続人と生計を同じくしていた者〉および〈被相続人の療養看護に努めた者〉をあげる。内縁の配偶者や事実上の養親子はその典型例であり,立法の意図は,法定相続人でないこれらの者に被相続人の遺産取得の道を開くことにあったとみられるが,もちろんこれにとどまるものではない。これまでの審判例には法人をも含め知己友人などさまざまな者が現れている。縁故の認定に際しては,自然血縁(たとえば,おじ・おば)を重視するのではなく,被相続人がもし遺言を残したとしたら財産を申立人に与えたであろうと考えられるような,生前における両者間の現実的具体的縁故の存在を中心とすべきであろう。特別縁故者と認められる者について,裁判所はさらに分与の相当性を判断するが,具体的には,数人の特別縁故者についてだれに,何を,どれだけ与えるか,全部分与か一部分与か,法律上分与できない財産はないか,などが問題となる。
→相続
執筆者:久貴 忠彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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