特定避難勧奨地点(読み)トクテイヒナンカンショウチテン

デジタル大辞泉 「特定避難勧奨地点」の意味・読み・例文・類語

とくてい‐ひなんかんしょうちてん〔‐ヒナンクワンシヤウチテン〕【特定避難勧奨地点】

平成23年(2011)3月に発生した福島第一原発事故において、警戒区域計画的避難区域外で、事故発生後1年間積算線量が20ミリシーベルトを超えると推定される場所として、原子力災害対策本部指定した区域。一律的な避難指示や産業活動の規制は行わず、放射線の影響を受けやすい妊婦や子供のいる家庭に対して特に避難を促す対応がとられた。南相馬市伊達市川内村のそれぞれ一部の地域が指定され、平成26年(2014)12月までに順次解除された。
[補説]年間積算線量20ミリシーベルトは、ICRP(国際放射線防護委員会)が勧告する放射線許容量において、事故発生時(緊急時)の基準である年間20~100ミリシーベルトの下限、事故収束後(復旧期)の基準である年間1~20ミリシーベルトの上限に相当する。

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共同通信ニュース用語解説 「特定避難勧奨地点」の解説

特定避難勧奨地点

東京電力福島第1原発事故で設定された避難指示区域外で、局所的に年間被ばく線量が20ミリシーベルト(毎時換算3・8マイクロシーベルト)を超えると推定される場所。避難は強制されないが、避難指示区域と同様に医療費の自己負担免除などの生活支援や、精神的損害に対する月10万円の慰謝料が支払われている。福島県南相馬市では142地点、152世帯が指定。同県の伊達市や川内村でも合計118地点、129世帯が指定されたが2012年12月に解除された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定避難勧奨地点」の意味・わかりやすい解説

特定避難勧奨地点
とくていひなんかんしょうちてん

2011年(平成23)3月11日の東北地方太平洋沖地震により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故で、放射線量が局所的に高く、妊婦や子供への影響が懸念された地点。いわゆる「ホットスポット」である。2011年6月30日から2014年12月27日まで存在した。事故直後の気象条件や地形によって、原発から遠く離れていても、局所的に放射線量が高い地点が多数存在することが明らかになった。このため避難指示区域には含まれないものの、年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定されるスポット(地点)とその近くの世帯を国が指定した。2011年6月30日、国は福島県伊達(だて)市内の104地点113世帯を初めて特定避難勧奨地点に指定し、伊達市の他地点や南相馬(みなみそうま)市、川内(かわうち)村の計281世帯に広げた。その後、除染などで放射線量が低下したとして、国は2012年12月から段階的に指定を解除し、2014年12月28日には、最後まで指定地点であった南相馬市の142地点、152世帯を解除して特定避難勧奨地点はなくなった。しかし特定避難勧奨地点の解除は不当だとして、2015年に、南相馬市の住民が国に解除取消しと損害賠償を求める訴えを起こし、賠償額の上乗せを認める判決(地裁・高裁)が出ている。

 特定避難勧奨地点に指定されると、国から避難支援が受けられたほか、東京電力から賠償金(1人490万円)が支払われ、税金、医療費、国民年金保険料の減免措置も受けられた。政府は「その地点から少し離れれば線量は低くなる」として一律の避難や事業活動規制は求めなかった。このため避難するかどうかは、基本的には住民の判断に任されたが、放射線の影響を受けやすい妊婦や子供のいる家庭に対しては避難を促す措置をとった。

[矢野 武 2021年6月21日]

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