中世の小説。別名《紅葉合(もみじあわせ)》。著者,成立年未詳。花園に遊ぶ姫君の姿をひと目見て恋に落ちた狐は,身を人間の女子に変えて,その姫に仕えるようになり,名を〈玉水の前〉と付けられる。玉水には,犬を嫌うなど奇妙な振舞いもみられたが,かなわぬ恋を忍びつつも,姫に親しく仕えていた。ある年,紅葉の美しさを競う紅葉合が開かれるにあたり,玉水は兄弟の狐にすばらしい紅葉をみつけてもらい,姫を勝利に導くが,その評判がかえって帝の知るところとなり,姫の入内が決まる。姫を恋う玉水は,内心それを喜ばず,悩んだ末に今までの経緯を記した書置を残して姿を消す。それを読んで姫はすべてを知り,玉水の心根を哀れに思うという内容。
執筆者:上野 英二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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