正巻二二巻・附巻四巻
解説 琉球王国の正史。王代ごとの編年体で記されている。乾隆八年久米村の鄭秉哲が中心となって編集し、同一〇年に完成。以後、明治九年まで書継がれた。鄭らの編集では、先行する王府の諸史書である「中山世譜」や「琉球国由来記」「琉球国旧記」、さらに由来記・旧記編集のため各間切・島から提出させた久米具志川間切由来記・雍正旧記など各地の由来記・旧記類、ほかに「琉球国碑文記」、羽地仕置などを参照して、王国の開闢神話から一八世紀初頭までをまとめた。編年体であるため無理に年代を特定したり、解釈や記事の接合により原意を損なっている場合もあり、原典での確認を要する。鄭らの編纂以後は系図座の管掌するところとなり、行政文書から特記事項を抄録した。また一八世紀後半には各間切・島に対し、天変地異や善行などを記し毎年大与座へ提出することが義務づけられたが、これも「球陽」の記事組立てのためとされ、記述に加えられた。おもな写本に横山本・護得久本・崎浜本・宮里本・久米島本などがある。
本書は中央・地方、士・百姓の区別もなく、政治・経済・社会・文化のあらゆる記事を採っており、王国時代の一級資料となっている。また王府の文書が一部薩摩鹿児島藩向けに日本年号を用いるほかは、ほとんどが中国年号を用いているのに対し「球陽」のみは王代を用いており、これは琉球王国の自立を主張したものと考えられている。なお薩摩・日本関係の記事は附巻に、年代不詳の伝承などは外巻の「遺老説伝」にまとめられている。
活字本 一九七四年(原文編・読下し編、球陽研究会・角川書店)、一九七一年(桑江克英訳註・三一書房)
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
1743~45年(寛保3~延享2)に編述された琉球(りゅうきゅう)の歴史書。本巻は正巻22、付巻4からなり、外巻は正巻3、付巻1からなる。全文漢文で記されており、琉球王国の正史(せいし)を代表するものである。外巻はとくに「遺老説伝」の名でよばれる。歴代国王の事蹟や国事のみでなく森羅万象に及ぶ記録が含まれており、歴史研究のほか、民俗、民話など多方面の研究資料となっている。編述終了後も記事が書き継がれ、1876年(明治9)に及んでいる。編述作業は首里王府の系図座が担当し、中国留学帰りの史官たちが動員された。球陽とは琉球の美称で、長崎を崎陽(きよう)と称するのと同じ用法である。
[高良倉吉]
『球陽研究会編『球陽』原文編・読み下し編(1974・角川書店)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
琉球王朝の編年体の正史。原文は漢文。球陽は琉球の雅名。正巻22巻・付巻4巻と,編年体に配列できない昔話や伝説類を収めた外巻「遺老説伝」3巻からなる。1745年鄭秉哲(ていへいてつ)ら4人により14巻までが編集された。その後は王府の系図座で編集が続けられ,1876年(明治9)の項で終了。内容は王家・国事に関することがらや,天地万物・異変現象・善行美談など多岐にわたる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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