江戸幕府5代将軍徳川綱吉(つなよし)がその治世(1680~1709)中に下した動物愛護を主旨とする法令の総称。1682年(天和2)犬の虐殺者を死刑に処したのに始まり、85年(貞享2)馬の愛護令を発して以来、法令が頻発された。綱吉の意図は社会に仁愛の精神を養うことにあったが(1694年〈元禄7〉10月10日訓令)、将軍の強大な権威に迎合する諸役人によって著しく増幅され、また綱吉生母桂昌院(けいしょういん)が帰依(きえ)した僧隆光(りゅうこう)が、戌(いぬ)年生まれの綱吉に男子が育たないのに関して犬の愛護を勧めてから、いっそう極端に走り、人民を悩ます虐政へと発展した。愛護の対象は犬馬牛に限らず、その他の鳥獣にも及んだ。鶏をとった猫を殺した者、うたた寝中体に駆け上がった鼠(ねずみ)を傷つけた者などが入牢させられ、釣り舟の禁止、蛇使いなど生き物の芸を見せ物にすること、さらには生鳥や亀(かめ)の飼育が禁ぜられ、金魚は藤沢遊行寺(ゆぎょうじ)(清浄光寺(しょうじょうこうじ))の池に放たしめられた。1695年(元禄8)には江戸郊外の中野に16万坪の土地を囲って野犬を収容し、その数は最高時4万2000頭に達し、費用も年間3万6000両、これは江戸や関東の村々の負担となった。1709年(宝永6)綱吉死去に際し、この令のみは死後も遵守せよと遺言したが、6代将軍家宣(いえのぶ)はこれを廃止した。
[辻 達也]
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江戸前期,5代将軍徳川綱吉(つなよし)のときに発令された生類保護に関する幕府法令で,1685年(貞享2)頃からしだいに具体化される。憐みの対象は牛馬・犬・鳥類をはじめあらゆる生類に及んだ。鷹狩・狩猟にも制限が加えられたが,とりわけ犬に関しては細部にわたる規制とともに,野犬収容のための大規模な犬小屋が江戸近郊の四谷・中野・喜多見などに設置された。違反者に対する取締りときびしい処罰が民衆の悪評と反感を招き,これらの諸法令は捨子禁止などごく一部を除き,1709年(宝永6)綱吉の死とともに撤廃された。生類憐みの令は綱吉の個人的恣意として位置づけられてきたが,幕府権力のあり方とその政策的意図からの再評価も試みられている。
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…新興都市江戸には野犬が横行して都市掃除人の役割を演じたが,皮および肉の利用をはかって,犬を捕殺する者もあった。17世紀末,徳川綱吉の生類(しようるい)憐みの令はそのような犬観を否定し,犬の愛護と登録を命じ,江戸内外に大量の犬を収容する大規模な小屋を設置させた。諸藩でもこれにならった例がある。…
…綱吉の厚い孝敬をうけ,1702年(元禄15)従一位に昇り,また弟本庄宗資をはじめその一族中幕臣として栄進する者も多かった。深く仏教に帰依し,僧亮賢,隆光等を信頼し,そこから生類憐みの令を極端に助長するなどの弊害が生じたといわれている。【辻 達也】。…
… 綱吉は幼少から儒学を愛好し,その精神を施政に反映させることに意欲を燃やし,しばしば幕臣を集めて講義をし,1680年には代官に人民統治の精神を訓令し,82年(天和2)には全国に忠孝奨励の高札〈忠孝札〉を立て,孝子表彰の制度も設けた。〈生類憐みの令〉も聖徳の君主の世には仁慈は鳥獣にまでおよぶという理想世界の実現を意図したものであった。しかしその好学は観念の遊戯の色濃く,その施策,とくに〈生類憐みの令〉は将軍に迎合する幕臣によってゆがめられ,綱吉の実子への執心に乗じて護持院隆光らがたきつけた迷信が加わって,人民へのはなはだしい虐政となった。…
…91年僧正となり,95年には寺領500石を加えて1500石となり,寺名を護持院と改め,新義真言の僧録を命ぜられ,隆光は大僧正に昇った。将軍綱吉と生母桂昌院に取り入り,〈生類憐みの令〉も実子を強く望む綱吉に彼が勧めたものと伝えられるが,同令が年とともに極端にはしったことに深く関与していると考えられている。1707年(宝永4)駿河台成満院に退き,09年綱吉死後大和超昇寺に隠居した。…
※「生類憐みの令」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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