用人(読み)ヨウニン

デジタル大辞泉 「用人」の意味・読み・例文・類語

よう‐にん【用人】

江戸時代幕府大名旗本家にあって、金銭出納雑事などの家政をつかさどった者。将軍家では側用人そばようにんといった。
役に立つ人。働きのある有用な人。
これに過ぎたる御―あるべからず」〈太平記・三三〉

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精選版 日本国語大辞典 「用人」の意味・読み・例文・類語

よう‐にん【用人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 有用な人。はたらきのある人。要人
    1. [初出の実例]「用人 ヨウニン」(出典:文明本節用集(室町中))
  3. 江戸時代、大名・旗本・貴族などの家で、老臣の次に位し、財用をあずかり、内外の雑事をつかさどったもの。御用人。
    1. [初出の実例]「今までは御家老方、お小性・近習・用人なんど、あまた役人承り」(出典:浄瑠璃・伽羅先代萩(1785)一)
  4. 江戸幕府の職名。大奥のそばにある広敷(ひろしき)の長として広敷の役人を統括し大奥の事務をつかさどった御広敷御用人、将軍の正妻の御用を務めた御簾中様(御台様)御用人、将軍の娘で大名に嫁した御姫様の世話をした姫君様(姫君方)御用人、女中の世話をした女中方御用人などの種類があった。いずれも若年寄支配。
  5. 江戸時代、町の雑用・事務にあたった雇い人。
    1. [初出の実例]「硯とりよせ鼻紙に一筆かいて〈略〉用人よび付」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「用人」の意味・わかりやすい解説

用人 (ようにん)

江戸時代,大名・旗本の家臣で,家政の中枢に位置した役人。財務,礼式,記録などを管理し,諸役人に法令を伝達し,近習,小姓,医師,儒者,右筆などを支配した。格式は通例大名家にあっては番頭(ばんがしら)に次ぎ,旗本では家老の下にあったが,つねに主君と接触し,実権を有する職務であった。三卿の家政組織もほぼ大名家に類似し,用人が設けられて家政庶務を担当したが,その多くは幕臣の出向であった。幕府には単に用人という職名・職種はないが,側(そば)用人は将軍側近の最上首として政務に関する上申・令達に当たり,広敷(ひろしき)用人(将軍に正夫人のあるときは御台所(みだいどころ)用人)は大奥の役人の長として大奥の事務を統轄したほか,大名家へ嫁した将軍の娘の世話をする姫君用人,将軍の側室の世話をした女中用人などがあった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「用人」の意味・わかりやすい解説

用人
ようにん

元来は用に携わる者をさす語。江戸時代には、武家公家(くげ)などの家臣で、家老の次に位置して庶政をつかさどった者をいう。家老を欠く小家においては、用人が万事を取り仕切った。江戸幕府には、将軍の側(そば)にあって幕政に関与した側用人のほか、大奥の事務を統轄した広敷(ひろしき)用人、大名に嫁した将軍の女子の世話をした姫君(ひめぎみ)用人などがあった。諸藩もそれぞれに用人を置いたが、たとえば鳥取藩の場合、用人の職名が確定したのは延宝(えんぽう)期(1673~81)とみられ、諸役人の触頭(ふれがしら)として勢力を有していた。定員3~4人、禄高(ろくだか)300石以上の役職であった。また幕府老中などを勤める大名の家には、もっぱら幕府のことに携わる公用人が置かれた。

[松尾美恵子]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「用人」の解説

用人
ようにん

江戸時代,大名家・旗本家において,財政をはじめ諸雑務の処理にあたった役人。大名家では一般に家老につぐ高い格式をもち,旗本家でも家政全般を預かり,年貢収取をはじめとする知行所支配の柱であった。そのため,家臣のなかから家格にかかわりなく有能な人材が抜擢されることもあった。幕府ではたんに用人という役職はなかったが,側用人・広敷用人などがおかれていた。なお老中の用人を公用人といった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「用人」の意味・わかりやすい解説

用人
ようにん

江戸時代の武家の職名。常設の職ではないが,家臣中の有能者をこれに任じて財政,庶務万端を取扱わせた。幕府の側用人などはこの例で,将軍に近侍し,幕政に参画したため,老中をしのぐ権勢をふるう者もいた。

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