田荘(読み)デンソウ

デジタル大辞泉 「田荘」の意味・読み・例文・類語

でん‐そう〔‐サウ〕【田荘】

豪族など権力者私有田地。たどころ。

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精選版 日本国語大辞典 「田荘」の意味・読み・例文・類語

た‐どころ【田荘・田庄】

  1. 〘 名詞 〙 令制以前の寺院・豪族が私有した農業経営地。なりところ。大化の改新の詔で(書紀‐大化二年正月)屯倉(みやけ)とともに廃止された。⇔屯倉
    1. [初出の実例]「大連の奴の半(なかは)と宅とを分けて、大寺の奴・田庄(タトコロ)と為」(出典:日本書紀(720)崇峻即位前(図書寮本訓))

田荘の語誌

倉庫などの建物を含めた田地一帯をいうか。大化前代の豪族の土地所有の形態であり、皇族が所有する屯倉(みやけ)と区別される。税として稲などを収納し、それぞれの共同体の倉庫に一括管理したものと思われる。


でん‐そう‥サウ【田荘】

  1. 〘 名詞 〙 権門の私有の田地。たどころ。
    1. [初出の実例]「うづらの句は田荘の酒屋といふ題ありて」(出典:俳諧・古学截断字論(1834)上)

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普及版 字通 「田荘」の読み・字形・画数・意味

【田荘】でんそう(さう)

農家。また、荘園。清・顧炎武〔太虚山人の象象の後に書す〕嗣位の王、皆深宮の中に生まれ、人の手に長ず。廣く田を置き、を酒色に放(ほしいまま)にせざる無し。

字通「田」の項目を見る

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改訂新版 世界大百科事典 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘 (たどころ)

《日本書紀》大化2年(646)1月の〈改新詔〉第1条によると,臣,連,伴造,国造,村首が田荘を所有していたとみえるが,同書ではほかに崇峻即位前紀に,物部守屋の奴の半分と〈宅〉を分けて四天王寺の奴と〈田荘〉としたとあるのみで,その実態は容易に知りがたい。《日本書紀》では,給与される田地に〈たどころ〉の古訓が付されている(清寧前紀,大化2年3月甲申条)ので,〈たどころ〉は田地を主とし,それに経営拠点としての〈宅〉が付属したものであろう。《万葉集》にみえる坂上郎女(さかのうえのいらつめ)の〈跡見庄〉〈竹田庄〉などの〈たどころ〉がその後身の一例であろう。
別業(なりどころ)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘
たどころ

律令(りつりょう)国家成立以前の豪族の土地領有地をいう。荘は田地の経営に必要な倉庫や建物のある一画をさす。天皇・皇族の所有地を屯倉(みやけ)とよぶのに対して、用いられたもの。587年(崇峻(すしゅん)天皇の即位前年)、大臣(おおおみ)蘇我馬子(そがのうまこ)らに敗北した大連(おおむらじ)物部守屋(もののべのもりや)の領地と領民は、没収されて大阪四天王寺(してんのうじ)の「奴(やっこ)、田荘」とされたと伝えられており、寺院の私有地も田荘とよばれたことがわかる。田荘の耕作は、その所有者に従属する農民がこれにあたり、賃租の形をとることもあった。したがって、大和(やまと)王権の支配が全国に及んでいくにつれて、地方豪族の田荘は減少し、大和王権を構成する王族・豪族の屯倉や田荘が増大することになった。その転換期は、動乱が各地で進む5世紀後半から6世紀に求められる。

[原島礼二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「田荘」の解説

田荘
たどころ

大和政権の屯倉(みやけ)に対して,豪族の農業経営の拠点。646年(大化2)の改新の詔によって,名代(なしろ)・子代(こしろ)や屯倉とともに諸豪族の部曲(かきべ)・田荘が廃止されている。「日本書紀」崇峻即位前紀には,物部守屋(もののべのもりや)が渋河家・難波宅などいくつかの拠点をもっていたことが知られ,その討滅後に守屋の奴婢の半分と宅をわけて四天王寺の奴婢・田荘としたとあり,田荘の存在と奴婢など配下の民の使役による経営がわかる。改新の詔以降にも,692年(持統6)飛鳥皇女の田荘への行幸の例や,律令制下でも「万葉集」に大伴坂上郎女(さかのうえのいらつめ)が滞在したとみえる跡見田庄(とみのたどころ)・竹田庄(たけだのたどころ)などの例があり,皇族の宮や諸豪族の私有地の経営の拠点として存続したか。農業経営の拠点であり,田地と屋・倉からなっていたらしい。

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百科事典マイペディア 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘【たどころ】

大和朝廷の豪族の私有地。別荘,事務所,倉庫などを置いて直接経営し,また付近の農民に土地を貸し付けて間接経営をしたといわれるが,実態は明らかでない。大化改新で原則として廃止。別荘を主とする小規模なものは別業(なりどころ)として残った。
→関連項目公地公民

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田荘」の意味・わかりやすい解説

田荘
たどころ

大化改新前の豪族の私有地。天皇や皇族の所有地である屯倉 (みやけ) に対して,豪族の所有地をいった。その耕作は,豪族の私有民である奴婢部曲 (かきべ) の労働力によって行われたが,さらに一般農民の賃租によることもあった。大化改新によって廃止された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「田荘」の解説

田荘
たどころ

大化の改新以前の豪族の私有地
豪族私有の部曲 (かきべ) ・奴婢 (ぬひ) が耕作。大化の改新によって,大王家の直轄地である屯倉 (みやけ) とともに廃止された。

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