日本神話にみえる伝説的人物。但馬の国の国守(くにもり)の意。新羅(しらぎ)国の王子天日槍(あめのひぼこ)の子孫。垂仁天皇はタジマモリを常世国(とこよのくに)に遣わし,非時香菓(ときじくのかくのみ)(時を定めずいつも黄金に輝く木の実)を求めさせた。これを〈橘〉と言う。天皇はやがて他界,その翌年,タジマモリは橘の,八竿八縵(やほこやかげ)(竿は串ざしにしたもの,縵は干柿のように緒(いと)でつないだもの)を持って常世国から帰朝したが,天皇はすでになく,御陵の前で叫び哭(な)いて自殺したという。彼は三宅連(みやけのむらじ)の始祖とされる。奈良市尼辻(あまがつじ)町の垂仁陵には,その墓と伝えられる小さな陪冢(ばいちよう)がある。
執筆者:西宮 一民
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垂仁(すいにん)天皇の代に常世(とこよ)の国に非時香菓(ときじくのかくのみ)(登岐士玖能迦玖能木実(ときじくのかくのこのみ))を求めて派遣された説話上の人物。多遅摩毛理とも書く。『古事記』『日本書紀』は「非時香菓」を「橘(たちばな)」とみなし、田道間守が10年後に「香菓」と八竿(やほこ)(矛)・八縵(やかげ)をもって帰国したおりには、すでに垂仁天皇は崩じており、天皇の陵墓のそばで嘆き悲しんで死すと物語る。渡来系の三宅連(みやけのむらじ)らの祖先と伝える。『古事記』の応神(おうじん)天皇の条には天之日矛(あめのひぼこ)の子孫の系譜を記し、そこに多遅摩毛理の名がみえる。『日本書紀』が田道間守の常世訪問の説話で、常世の国を「神仙の秘区」と書くように、その常世伝承には神仙思想の影響がある。この常世行き説話を垂仁天皇の代のできごととするのは、垂仁天皇を長寿としたありよう(記では153歳、紀では140歳)と関連があるとみなす説がある。
[上田正昭]
(寺田恵子)
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…この伝承の背後には秦(はた)氏を中心とした新羅系渡来氏族の日本流入という歴史があったと考えられているが,日本海を経て朝鮮半島と近いという地理的条件に注目する必要があろう。その天日槍の子孫と伝え,また但馬国の国名とも関係する田道間守(たじまもり)が非時香菓(ときじくのかくのみ)を求めて常世国(とこよのくに)に渡るという説話も,同じ条件を背景とするものである。 律令制下では,朝来(あさこ),養父(やふ),出石(いつし),気多(けた),城崎(きのさき),美含(みくみ),二方(ふたかた),七美(しつみ)の8郡を管した。…
※「田道間守」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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