甲子夜話(読み)カッシヤワ

デジタル大辞泉 「甲子夜話」の意味・読み・例文・類語

かっしやわ【甲子夜話】

江戸後期の随筆。正続各100巻、後編78巻。平戸藩主松浦清(静山)著。文政4年(1821)から書き始められ、天保12年(1841)著者の死で中絶。見聞した大名旗本などの逸話、市中の風俗などを記述。書名は11月の甲子きのえねの夜に起稿したことに由来。

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精選版 日本国語大辞典 「甲子夜話」の意味・読み・例文・類語

かっしやわ【甲子夜話】

  1. 江戸後期の随筆。肥前国平戸藩主、松浦清(静山)著。書名は文政四年(一八二一)一一月一七日甲子(きのえね)の夜から書き始めたことによる。天保一二年(一八四一成立。正編一〇〇巻、続編一〇〇巻を書き、三編七八巻まで書き続けられたところで著者の死去によって途絶。大名、旗本などの逸話、市中の風習など自己の見聞を書きしるしている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲子夜話」の意味・わかりやすい解説

甲子夜話
かっしやわ

肥前平戸(ひぜんひらど)藩主松浦清(まつらきよし)(号静山(せいざん))の随筆集。正編、続編各100巻、三編78巻。江戸幕府文教行政の中心人物で静山と親交のあった林述斎(はやしじゅっさい)の勧めにより、隠居の年、1821年(文政4)11月甲子(17日)の夜に起稿、20年間書き続けたが未完成に終わった。巻ごとに述斎の校閲を受けたという。述斎からの聞き書きも多い。内容は宮廷、朝幕関係をはじめ、信長秀吉、家康以下の徳川将軍、大名、旗本、老中以下の幕吏、学者、文人墨客、僧侶(そうりょ)、医師、芸能人、その他名士の逸話、国内諸地域の奇談、異聞や民間の風俗、海外諸国の珍事奇聞などにわたる。文武両道を兼ねて諸芸を身につけ、下情にも通じていたことにより記事は豊富多彩、戦国期から田沼時代にかけての社会相を知るうえで、きわめて有益な資料であるばかりでなく、読み物としても絶好である。刊本は、国書刊行会本、東洋文庫本がある。

[宮崎道生 2017年1月19日]

『『甲子夜話』(1910・国書刊行会)』『『甲子夜話』(平凡社・東洋文庫)』『『未刊甲子夜話』(1964・有光書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「甲子夜話」の意味・わかりやすい解説

甲子夜話 (かっしやわ)

平戸藩主松浦(まつら)静山の随筆。1821年(文政4),静山62歳の11月甲子の日,静山邸を訪れていた親友林述斎のすすめによって,その夜から起筆したのが表題のゆえんである。1年後20巻ほどになったところで一書にまとめることを志し,序文等も選び,以後没する直前まで書きついで正編100巻,続編100巻,三編78巻という膨大な著述となった。内容は武人でありまた趣味人であった著者を反映して,近世初期からの武辺咄(ぶへんばなし)や政治談に関する聞書風のものから,世相風俗に関する実見談,さらには天変地妖に至るまで精力的にあつめられている。編を重ねるごとにオリジナルな説話が少なくなり叢書風になっている。隠退の身(47歳で致仕)の気安さもあって,俗事を克明に記すところが後世の資料的価値を高めてもいるが,その本領は武人としての身の処し方にあり,編中各所にその気概を漏らしている。〈東洋文庫〉に収められている。
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百科事典マイペディア 「甲子夜話」の意味・わかりやすい解説

甲子夜話【かっしやわ】

江戸後期,平戸藩主松浦(まつら)静山の随筆。3編278巻。62歳の1821年11月17日甲子の夜起稿,執筆期間20年に及んだ。内容は聞書,実見談,風聞と多岐にわたり,当時の政治,対外情勢,学芸,軍事,民情などを知るうえで貴重な資料。
→関連項目随筆武功雑記

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日本歴史地名大系 「甲子夜話」の解説

甲子夜話
かつしやわ

正編一〇〇巻・続編一〇〇巻・三編七八巻 松浦静山著

写本 楽歳堂蔵書本

解説 平戸藩主静山による随筆。

活字本 平凡社東洋文庫

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「甲子夜話」の解説

甲子夜話
かっしやわ

平戸藩主だった松浦静山(まつうらせいざん)著の随筆。正編100巻・続編100巻・3編78巻の計278巻と目録3巻。1821年(文政4)11月17日に起筆し,41年(天保12)没するまで書き継がれた。書名は甲子(きのえね)の夜に起筆したことに由来し,自身の見聞や,側近のもたらす異聞・雑記を収載している。狐狸・妖怪などに興味が示され,幕末期の世相風俗を知るとともに,大名の地位にあった人間の人格・識見・思想をみることができる。「日本随筆大成」(正編のみ)・「東洋文庫」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「甲子夜話」の意味・わかりやすい解説

甲子夜話
かっしやわ

江戸時代後期の随筆。平戸藩主松浦静山 (まつらせいざん) 著。正続編各 100巻。著者 62歳の文政4 (1821) 年 11月甲子 (きのえね) の夜に起稿したのでこの名がある。大名,旗本の逸話や市井の風俗をはじめ,当時の政治,外交,軍事に及ぶ見聞録の集大成。林述斎の校閲を経た。田沼意次 (おきつぐ) に関する個所は田沼政治を知るうえで重要。

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旺文社日本史事典 三訂版 「甲子夜話」の解説

甲子夜話
かっしやわ

江戸後期,肥前(長崎県)平戸藩主松浦清(号は静山)の随筆
正編100巻,続編100巻,後編78巻。著者62歳の1821年から20年間にわたって,政治・外交・軍事・逸話・民俗などの見聞を書きとめたもの。幕末の社会状況を知る貴重な史料。

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