日本古代の律令官僚制における下級職員たちの出勤方式。またその方式で勤務する下級職員。分番ともよばれ,長上(ちようじよう)と対置されるが,順番をつくって交替で勤務するのがたてまえである。諸官庁の構成のなかで,雑任(ぞうにん)クラスの下級職員は,いずれも番上である。すなわち,中央諸官庁,大宰府,諸国などの史生,中央の伴部,使部,官掌・省掌などの掌類,大舎人・東宮舎人・中宮舎人らの舎人(とねり),兵衛,および親王の公的従者である帳内(ちようない),貴族官僚の公的従者である資人などは,いずれも番上であり,また大宰府や諸国府に勤務した下級職員たちも番上であった。そして式部省に籍を置く散位六位以下は散位寮に番上し,地方諸国の外散位は国府に番上したのであり,国府に番上した下級職員たちとともに外分番ともよばれた。番上は一般に,年間に140日以上勤務すると毎年の評定対象にされたが,帳内・資人は200日以上の勤務が必要であった。
執筆者:野村 忠夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
令制下,常時勤務する長上に対して分番勤務する官人のことで,内舎人(うどねり)以外の舎人や史生・兵衛・伴部(ともべ)・使部などの雑任をいうが,品部(しなべ)・雑戸,蔭子(おんし)・位子や庶民の諸司に出仕する者も含める。ただし,造東大寺司写経所で働いていた案主(あんじゅ)や写経生らのように,実際には常時勤務していた者が多かったと考えられ,結局のところ,長上と番上の区別は官人としての待遇の格差にすぎなかった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…またその方式で勤務する官僚。番上(ばんじよう)と対置され,現代の一般的なサラリーマンのように,一定日数つづけて勤務して1日休暇という方式が原則であった。つまり律令官僚の長上は,5日つづけて勤務して1日休暇という方式であったが,天皇側近に勤務するなど,特別な職務をもつ官僚は,1ヵ月に5日ずつまとめて交替で休暇を与えられた。…
…畿内各地の馬飼部の村から造(みやつこ)に率いられた馬飼部の集団が交代で馬司(うまのつかさ)に勤務したように,ここでは多く官司への上番制が採用され,官人制発展の一つの基礎となった。8世紀に整備された律令制においては,職事(しきじ),内舎人(うどねり),散位五位以上や地方でも郡司,軍毅,医師などは長上(ちようじよう)(日勤)であったが,史生,官掌,大舎人以下の諸舎人,兵衛,伴部,使部,散位六位以下は分番(番上)と定められていた。雑任以下の下級の者と宿衛を必要とする軍事警察的な職種に分番制が採用され,律令官人制の身分区分を支える一つの条件ともなっていた。…
※「番上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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