「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」で、家庭裁判所により保佐開始の審判を受けた者をいう(民法11条)。
1999年(平成11)12月の民法の一部改正(2000年4月1日施行)により、それまでの禁治産、準禁治産制度にかわって、後見、保佐、補助の3類型から成る成年後見制度が設けられた。被保佐人は、改正前の「準禁治産者」に相当するが、準禁治産者制度の一つであった「浪費者」は、被保佐人から除かれた。また、改正前の準禁治産者に対する多くの資格制限(欠格事由)のうち一部の見直しが行われた。専門的資格(医師、弁護士、公認会計士等)、免許・登録を要する営業(旅行業、警備業等)などの資格制限は、2019年(令和1)6月に「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和1年法律第37号)が成立するまで残っていたが、当法律施行後は制限がなくなった。
家庭裁判所は、判断能力が著しく不十分な者について、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官などからの請求により、保佐開始の審判をすることができる。保佐開始の審判を受けた被保佐人の保護者として、家庭裁判所は職権で「保佐人」を選任する。民法第11条以下および第876条以下に、保佐開始の審判をするための要件や手続、契約の取消権など保護の内容が定められている。
被保佐人が、元本の領収、借財、不動産その他重要な財産の売買、遺産分割など、民法第13条に規定されている財産上の行為を行うについては、保佐人の同意を必要とする。保佐人が本人(被保佐人)に不利益がないにもかかわらずこの同意をしないときは、本人は家庭裁判所に同意にかわる許可を求めることができる。保佐人の同意またはこれにかわる許可を得ないで行われた行為は取り消すことができる(同法13条)。そのほか、従来の準禁治産制度の下での保佐の制度と異なり、被保佐人自身の請求か、被保佐人の同意を要件として保佐人その他一定範囲の親族などの請求によって、家庭裁判所の審判により、たとえば不動産の売買の委任などというように、特定の法律行為についての代理権を保佐人に与えることができるようになった(同法876条の4)。このように被保佐人の能力や取引内容に即して柔軟な対応が可能となった。被保佐人は、保佐人に付与された同意権・取消権、代理権が及ぶ事項について行為能力が制限されるという意味で、制限行為能力者とよばれる。被保佐人の判断能力が回復したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、保佐人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない(同法14条)。
「準禁治産宣告」は戸籍に記載されたが、民法改正による「保佐」の制度の下では、「後見」「補助」と同様に、登記所に登記されることになった。なお、改正前の規定により準禁治産の宣告を受けた準禁治産者は、改正後には、保佐開始の審判を受けた「被保佐人」とみなされる(改正前に浪費者として準禁治産宣告を受けた者は、そのまま、準禁治産者として存続する)。
[伊藤高義 2022年4月19日]
『額田洋一・秦悟志編『Q&A成年後見制度解説』第2版(2003・三省堂)』▽『新井誠・赤沼康弘・大貫正男編『成年後見制度――法の理論と実務』(2006・有斐閣)』
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