名詞または名詞句の前に置かれ、それらが他の文法要素に対してもつ統語的・意味的関係(「格」とよぶ)を表す文法要素。接辞と異なり、他の語の一部となることがなく、語形変化も行わない。
名詞の格の表示が語形変化によらない言語(英語、中国語など)では、格は名詞(句)の語順ないし前置詞で示される。この場合、主格は語順で、対格・与格は語順または前置詞で、それ以外は前置詞で表されることが多い。英語の例を示すと、〈主格〉‘John loves Mary.’〈対格〉‘John loves Mary.’‘John looked at Mary.’〈与格〉‘John gave Mary a watch.’ ‘John gave a watch to Mary.’〈場所格〉‘John came from Tokyo.’〈道具格〉‘John came by car.’となる。一般に、前置詞の表す格は、主格、対格、与格のような抽象的な「文法格」に比べて、より具体的に「場所、方向、道具、手段、原因、比較」などの意味を表す。
一方、名詞の格が語形変化で示される言語(ロシア語、ドイツ語など)では、それぞれの変化形が広範囲の意味関係を示しうるため、意味を限定し明示するのに前置詞が使われるが、一般に文法格は語形変化で、それ以外は前置詞で示されることが多い。このような言語では、前置詞に続く名詞(句)が一定の格を要求する(「前置詞の格支配」とよぶ)。また、同じ前置詞が、支配する格によって意味を変えることがある(ドイツ語の例。〈対格〉‘in den Garten’「庭へ」、〈与格〉‘in dem Garten’「庭で/庭に」)。
前置詞は述語が目的語に先行する言語(上記のほか、ベトナム語、アラビア語など)に多くみられる。一方、目的語が述語に先行する言語(日本語、朝鮮語、ビルマ語など)では、前置詞があまりみられないかわりに、同じ働きが名詞(句)の後に置かれる「後置詞」(国文法でいう「助詞」)によって行われることが多い。以上に前置詞について述べたことは、後置詞についても当てはまることが多い。
[山田 進]
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【諸言語と品詞】
ある言語のすべての単語の品詞分類が完成すると,そのおのおのの品詞に名称を与えることになるが,その名称は,言語学的にいえばどんなものであってもよいし,番号であってもよいのであるが,通常は,その品詞に属する単語(の大多数)が表すものの性格や,それらの機能を反映した名称を与えることが多い。前者の例としては,名詞や動詞があり,後者の例としては前置詞などがある。 以下に,そのようにして従来与えられてきた名称を取り上げつつ,人間の言語にどのような品詞が存在する傾向があるかを見てみる。…
※「前置詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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