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デジタル大辞泉の解説

を[五十音]

五十音図ワ行の第5の仮名。現在は、五十音図ア行第5の仮名「お」と発音上の区別がなく、現代仮名遣いでは、助詞「を」以外には、この仮名を用いない。しかし、歴史的仮名遣いでは「お」と区別している。
平仮名「を」は「遠」の草体から。片仮名「ヲ」は「乎」の初3画から変形したもの。
[補説]「を」は、古くは[wo]の音で、「お」(発音[o])と発音上も区別があったが、のち、両者は同じ音となり、中世末期には[wo]、近世以降は[o]となった。

を[格助・接助・間助]

[格助]名詞、名詞に準じる語に付く。
動作・作用の目標・対象を表す。「家建てる」「寒いのがまんする」「水飲みたい」
「ただ月―見てぞ、西東をば知りける」〈土佐
移動の意を表す動詞に応じて、動作の出発点・分離点を示す。…から。「東京離れる」「席立つ」
「さびしさに宿―立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮」〈後拾遺・秋上〉
移動の意を表す動詞に応じて、動作の経由する場所を示す。…を通って。「山道行く」「廊下走る」「山越す」
「また住吉のわたり―こぎゆく」〈土佐
動作・作用の持続する時間を示す。「長い年月過ごす」「日々送る」
「足引の山鳥の尾のしだり尾のながながし夜―独りかも寝む」〈拾遺・恋三〉
(「香(か)をにほふ」「寝(い)を寝(ぬ)」「音(ね)を泣く」などの形で)同類の意をもつ名詞と動詞の間に置かれ、慣用句を作る。
「夜はも夜のことごと昼はも日のことごと音(ね)のみ―泣きつつありてや」〈・一五五〉
遭遇や別離の対象を表す。…に。
「逢坂(あふさか)にて人―別れける時に詠める」〈古今・離別・詞書〉
[補説]1の「水を飲みたい」などは、「を」の代わりに「が」を用いることもある。格助詞「を」は、の間投助詞から生じたといわれる。
[接助]活用語の連体形、まれに名詞に付く。
逆接の確定条件を表す。…けれども。…のに。
「亡き人の来る夜とて魂(たま)まつるわざは、このごろ都にはなき―、東(あづま)の方には、なほする事にてありしこそあはれなりしか」〈徒然・一九〉
原因・理由を表す。…ので。…(だ)から。
「ししこらかしつる時は、うたて侍る―、とくこそ試みさせ給はめ」〈・若紫〉
[間助]名詞、動詞型活用語の連体形・命令形、形容詞・形容動詞型活用語の連用形、助詞などに付く。
(文中・文末で)感動・詠嘆・強調を表す。…(だ)なあ。…ね。…よ。
「我妹子(わぎもこ)は釧(くしろ)にあらなむ左手の我が奥の手に巻きて去(い)なまし―」〈・一七六六〉
「萩が花散るらむ小野の露霜にぬれて―ゆかむ小夜(さよ)は更(ふ)くとも」〈古今・秋上〉
(文中で名詞に付き、下に形容詞語幹に接尾語「み」の付いたものを伴って)理由・原因を表す句の中で、上の名詞を特に取り立てて強調する意を表す。…が…ので。…の…さに。
「若の浦に潮満ち来れば潟(かた)―なみ葦辺(あしへ)をさして鶴(たづ)鳴き渡る」〈・九一九〉
[補説]主に上代の用法で、中古でもみられるが、鎌倉時代以後は和歌以外にはほとんどみられなくなる。この用法が格助詞・接続助詞に発達したという。なお、1の文末用法を終助詞、2を格助詞とする説もある。

出典|小学館
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大辞林 第三版の解説

五十音図ワ行第五段の仮名。現在は「お」と発音上区別がなく、現代仮名遣いでは、助詞「を」以外には、この仮名を用いない。しかし、歴史的仮名遣いでは「お」と区別して用いる。
平仮名「を」は「遠」の草体。片仮名「ヲ」は「乎」の初三画の変形。 〔「を」は古くは「お」と発音上区別があったが、のち、両者は発音上の区別がなくなった〕

( 格助 )
体言またはそれに準ずる語に付く。
動作・作用の対象を表す。 「本-読む」 「講演-終わる」 「太刀が緒もいまだ解かずて襲おすひ-もいまだ解かねば/古事記
使役表現において動作の主体を表す。 「子供-泣かせないようにして下さい」 「今年こそ美しい花-咲かせよう」
移動性の動作の経過する場所を表す。 「いつもの道-通る」 「大空-飛ぶ」 「新治筑波-過ぎて幾夜か寝つる/古事記
動作・作用の行われる時間・期間を表す。 「この一年-無事に生きてきた」 「今-盛りに咲く」 「朝日照る佐田の岡辺に鳴く鳥の夜泣き反らふこの年ころ-/万葉集 192
動作の出発点・分離点を表す。 「毎朝九時に家-出ます」 「バス-降りてから五分ほど歩く」 「故郷-離れる」 「たらちねの母-別れてまこと我旅の仮廬かりほに安く寝むかも/万葉集 4348
希望・好悪などの心情の向けられる対象を表す。現代語では「が」も用いられる。 「水-飲みたい」 「君-好きな人はずいぶんいるよ」 「身-惜しとも思ひたらず/徒然 9
(サ変動詞とともに用いられて)「…を…として」「…を…にする」「…を…にして」など、さまざまな表現のしかたをつくる。 「首相-はじめとして、大臣がずらりと並ぶ」 「ひとの失敗-他山の石とする」
動詞と同じような意味をもつ名詞に付いて、一種の慣用句をつくる。 「白真弓斐太ひだの細江の菅鳥の妹に恋ふれか眠-寝かねつる/万葉集 3092」 「しのび音-のみ泣きて、その年もかへりぬ/更級」
( 接助 )
活用語の連体形に接続する。
逆接の場合。前件と後件とが内容上相応しないような関係で、前後を結び付ける。…のに。 「今はとてまかる-、何事もいささかなることもえせで遣はすこと/伊勢 16
順接の場合。前件が後件の原因・理由であるような関係で、前後を結び付ける。…ので。…だから。 「たえて宮仕つかうまつるべくもあらず侍る-、もてわづらひ侍り/竹取」
単純な接続の場合。…したところ。 「この殿、大将にても、先を追はれける-、土御門相国つちみかどのしようこく、…と申されければ/徒然 196
( 間投助 )
文末にあって、活用語の連体形や言い切りの形、または体言を受け、詠嘆の気持ちを表す。 「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣-/古事記 」 「宇治川を舟渡せ-と呼ばへども聞えずあらし梶の音もせず/万葉集 1138」 「老いらくの来むと知りせば門さしてなしと答へて逢はざらまし-/古今 雑上
文中用法。
意志・希望・命令の文中にあって、詠嘆の気持ちをこめて、語調を整える。 「生ける者遂にも死ぬるものにあればこの世なる間は楽しく-あらな/万葉集 349」 「恋ひしくは下に-思へ紫のねずりの衣色にいづなゆめ/古今 恋三
情意の対象を詠嘆的に指示する。 「紫のにほへる妹-憎くあらば人妻ゆゑに我あれ恋ひめやも/万葉集 21
〔「…を…み」の形で〕 原因・理由を表す句をつくる。…が…ので。…が…さに。 「若の浦に潮満ち来れば潟かた-なみ葦辺あしへをさして鶴たづ鳴き渡る/万葉集 919」 「しののめの別れ-惜しみ我ぞまづ鳥より先に鳴き始めつる/古今 恋三」 〔上代からある語で、の間投助詞としての用法が最も古いもの。格助詞・接続助詞としての用法は、それぞれから転化してできたもの。ただし、間投助詞としての用法は中世前期以降次第に行われなくなり、接続助詞としての用法も近世に入るとほとんど行われなくなる。格助詞としての用法のみが現代にまで及んでいる〕

出典|三省堂
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