翻訳|icing
物体の表面に大気中の水分が凍りつく現象。樹木の枝につく場合は2種類に分類されている。一つは樹霜で、これは大気中の水蒸気が冷えた枝に昇華凝結したものである。多くは風の弱い晴天夜に放射冷却したとき発達し、樹霜そのものは細かな霜の結晶の集合である。機械的強度も付着力も弱いため、日が照ると消滅してしまう。もう一つは、大気中の過冷却した水滴が枝に衝突して凍結する場合、すなわち霧氷で、樹氷、粗氷、雨氷の3種に小分類される。衝突した過冷却水滴が次々と凍結してできるのが樹氷である。樹氷は多くの気泡を含むため白く強度も弱い。山形・宮城両県にまたがる蔵王山(ざおうさん)の「モンスター」や「エビのしっぽ」が樹氷の代表的な例である。衝突した過冷却水滴が凍りきらないうちに次の過冷却水滴が衝突するような場合、着氷体は透明な氷となり雨氷とよばれる。雨氷は枝にしっかりと凍りついた氷であるから、とれにくく強度も強い。雨氷と樹氷の中間が粗氷である。送電線、アンテナ、航空機、船体、などにつく着氷は大きな被害を及ぼすことがある。着氷防御法としては、物体に氷がつきにくい塗料や薬剤を塗ったり、ついた着氷を機械的に除去しやすくしたり、あるいは物体の表面を暖めたりなど種々の方法が実施されている。着雪は、降雪や吹雪(ふぶき)のとき雪が物体につく現象である。着雪に関しても、着氷と同じような対策が考えられている。
[前野紀一]
船体への着氷は、外気に露出している船体、ハンドレール、ブルワーク、索具、アンテナ類などに海水の飛沫が凍り付くもので、着氷を除去しないと重心位置が上昇し、船体の復原力が低下する。そこへ強風や大波がくると突然転覆することもあり、海難原因の一つとして恐れられている。冬季、北海道など北国の気象官署では、着氷のおそれのある場合に「着氷注意報」を出して注意を喚起している。
[半澤正男]
着氷に関連する問題として、宇宙船スペースシャトル打上げの際、燃料タンクに付着した氷がはがれて宇宙船体の耐熱タイルが傷つけられたり、スペースシャトルからの廃液が氷結することなどがある。これらは前述の過冷却の水滴や海水飛沫によるものとは別の原因によるものであるが、氷が対象である点は同じといえよう。
[半澤正男]
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…安全に離着陸するためには,風,雨,雲,霧,気温などの通報や予報は欠かせない。さらに飛行中には,危険を避けるため乱気流,着氷,雷,トルネードなどに関する情報が必要であり,追風を利用し経済的に飛行するため上層の風に関する情報も必要である。このような要求に応じるため,各国の気象機関では,地上,上層の気象観測を行い,各種天気図を解析し予報を作り各航空会社へ通報するほか,航空用の各種気象データを放送している。…
※「着氷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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