蔵王山(読み)ザオウサン

デジタル大辞泉 「蔵王山」の意味・読み・例文・類語

ざおう‐さん〔ザワウ‐〕【蔵王山】

山形・宮城県境にある火山群。最高峰は熊野岳で、標高1841メートル。冬季は樹氷が美しく、スキー場や温泉が多い。古くは不忘山わすれずのやま・刈田嶺と呼ばれ、7世紀に金峰山きんぷせんから蔵王権現勧請かんじょうしたという。

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精選版 日本国語大辞典 「蔵王山」の意味・読み・例文・類語

ざおう‐ざんザワウ‥【蔵王山】

  1. ( 「ざおうさん」とも ) 宮城・山形両県境にある那須火山帯に属する成層火山群。最高峰の熊野岳(一八四一メートル)を中心とする北蔵王と、屏風岳(びょうぶだけ)(=一八二五メートル)を中心とする南蔵王とに二分される。特に樹氷の景観は有名。蔵王連峰。蔵王。

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日本歴史地名大系 「蔵王山」の解説

蔵王山
ざおうさん

山形・宮城両県にわたる火山群の総称で、蔵王山という山名の単独峰はない。山域は山形県側は山形市・上山かみのやま市、宮城県側は白石市、刈田かつたしち宿しゆく町・蔵王町、柴田しばた川崎かわさき町などに及ぶ。山形県側では山形蔵王、宮城県側では宮城蔵王・表蔵王とも称するが、県境の刈田岳(一七五八メートル)付近を境に北を北蔵王、南を南蔵王ともよび、また連峰中央の火口湖御釜おかま(五色沼)を中心に中央・東・西・南・北の五地域に区分する場合もある。この五区分に従っておもな峰をあげると、中央蔵王に熊野くまの(一八四〇・五メートル)・刈田岳・五色ごしき岳、北蔵王に地蔵じぞう(一七三六メートル)名号みようごう峰・雁戸がんど山、西蔵王に横倉よこくら山・りゆう山、南蔵王に不忘ふぼう(一七〇五・三メートル)すぎヶ峰・屏風びようぶ岳・後烏帽子うしろえぼし岳、東蔵王に青麻あおそ山などがある。山形県側で蔵王連峰を水源とするおもな河川には馬見まみさき川・蔵王川(酢川)川などがあって、いずれも最上川水系に属し、宮城県側ではまつ川など阿武隈あぶくま川水系の諸河川があげられる。

蔵王の名称は熊野岳や刈田岳の山頂に祀られる蔵王権現によるとされるが、同権現が勧請される以前に連峰を総称して何とよんでいたかは明らかではない。また高峰が聳立するためか、史料上にみえる蔵王山系に関連する山が、現在のどの山にあたるかを確定しがたいものも多い。しかし、一〇世紀末頃に編纂された「古今六帖」に「みちのくにあぶくまがはのあなたにや人わすれずの山はさかしき」と詠まれ、「枕草子」(山はの段)にも「わすれずの山」がみえ、蔵王連峰は歌枕として中央貴族にも知られていた。なお現在の不忘山は、以前はみなみ森とか御前ごぜん岳とよばれていたもので、のちに蔵王信仰といわれるような体系化された山岳信仰が形成される以前の連峰の総称は「わすれずの山」であった可能性がある。山並連なる「わすれずの山」の山麓には祖霊がやどり、かつ水神・作神が鎮座する中小の霊山(ハヤマ、モリヤマがこれにあたる)があって、やがてこれらの複数の霊山を前立(前山)として、さらに奥の山岳が開かれ、大規模な山岳信仰である蔵王信仰が形成されていった。

〔古代の蔵王信仰〕

古くには陸奥国側では、現在刈田岳山頂に祀られる刈田嶺かつたみね神社が信仰の中心であった。大同元年(八〇六)には封戸二戸が刈田嶺神に与えられている(「大同元年牒」新抄格勅符抄)。承和一一年(八四四)には霊験があって無位勲九等から従五位下の神階が授けられ、さらに嘉祥元年(八四八)には正五位下が与えられている(続日本後紀)


蔵王山
ざおうさん

蔵王山という山名の単独峰はなく、宮城・山形両県にまたがる火山群の総称である。行政上は、宮城県では白石しろいし市、刈田かつたしち宿しゆく町・蔵王ざおう町、柴田郡川崎かわさき町に属し、宮城蔵王・表蔵王とも称し、山形県では山形市・上山かみのやま市に属し山形蔵王などともよぶ。連峰中の高峰は山形県側の熊野くまの(一八四〇・五メートル)と、県境の刈田岳(一七五八メートル)、宮城県側の不忘ふぼう(一七〇五・三メートル)などだが、ほかにも一七〇〇メートル級の山々をはじめ四方に高山がそびえる。刈田岳をおもな水源とするすみ(松川)は白石川に合流するが、刈田岳と澄川を結ぶ線で北蔵王・南蔵王とに区分され、一般に北蔵王を蔵王山という。刈田岳と北の熊野岳の間を馬の背うまのせという稜線が延び、その東は中央火口丘の五色ごしき(一六七四メートル)で、五色岳のすぐ南東に火口湖の御釜おかま(五色沼)があり、紺碧の水をたたえる。この御釜を中心に蔵王連峰を五つに分ける場合もある。すなわち中央蔵王として熊野岳・五色岳・刈田岳、東蔵王は青麻あおそ山、南蔵王はすぎヶ峰・屏風びようぶ岳・後烏帽子うしろえぼし岳・前烏帽子岳・不忘山・かみ岳など、北蔵王は地蔵じぞう山など、西蔵王は横倉よこくら山などとなる。このように高峰が聳立するためか、歴史文献にみえる蔵王山関連の山が、現在の山のどれをさすものか確定しがたいものが多い。「観蹟聞老志」では不忘山を蔵王嶽とするが、不忘山は歌枕「わすれずの山」とされる。

<資料は省略されています>
〔信仰〕

当山は修験信仰の山であり、ここに蔵王権現が勧請され祀られたことによって、蔵王山の名があると伝える。その中心となったのは、現在刈田岳の頂上に祀られている刈田嶺かつたみね神社とされ、里宮はまつ川沿いの遠刈田温泉とおがつたおんせん(蔵王町)にある。刈田嶺神社は、「延喜式」神名帳に刈田郡一座とみえる「苅田嶺カムタミネ神社名神大」と伝えるが、それより南東のみや(蔵王町)にも同名社が鎮座する。


蔵王山
ざおうさん

田原町の東北に位置し、標高二五二・五メートルの山で田原山脈に属する。全山松樹が密生し、東の小丘を臥竜がりゆう山といい、東端丘陵に吉胡よしご貝塚がある。西に衣笠きぬがさ(二七八・四メートル)滝頭たきがしら(二五九・五メートル)藤尾ふじお(二〇七・七メートル)木落きおとし(二二三・〇メートル)の諸山が続く。

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改訂新版 世界大百科事典 「蔵王山」の意味・わかりやすい解説

蔵王山 (ざおうさん)

宮城・山形両県にまたがる火山群の総称。横川と澄川の上流を境として北蔵王と南蔵王の両火山群に分けられ,一般には北蔵王を蔵王山と呼ぶ。北蔵王は二重式火山で,最高峰の熊野岳(1841m)とその南方の刈田(かつた)岳(1758m)とをつなぐ〈馬の背〉と呼ばれる稜線が外輪山をなし,その東方の五色岳(1672m)は中央火口丘である。五色沼とも呼ばれる〈御釜(おかま)〉は,五色岳の西側に最後に生じた火口に水をたたえた火口湖で,たびたび活動が記録されている。とくに1895年の爆発が大きく,このときに生じた硫気孔が濁川火口瀬にみられる。このような新しい火山活動により,北蔵王では標高1600m以上は一面に赤褐色の噴出物が裸出した荒涼たる景観を呈し五色岳東面や刈田岳東方の〈賽の磧(さいのかわら)〉では標高1100m以上が裸地となっている。

 一方,南蔵王の中心をなすのは屛風(びようぶ)岳(1817m)で,その東斜面は断崖をなしている。東方には後烏帽子岳,前烏帽子岳,入道山,馬の神岳など,北西には杉ヶ峰があり,火山群の最南端には頂上部が爆裂火口によって三方からえぐられて複雑な山容を呈する不忘(ふぼう)山がある。南蔵王は新しい火山活動がみられず,北蔵王とは対照的に山頂まで森林におおわれている。

 山形県側の山麓には,蔵王国定公園の玄関口にあたる蔵王温泉(最上高湯,強酸性ミョウバン緑バン泉,42~62℃)があり,宮城県側には遠刈田(とおがつた),青根,峨々(がが)などの素朴な温泉が点在している。1962年に蔵王山中を東西に横断する有料道路の蔵王エコーラインが開通したのをはじめ(85年無料開放),刈田岳山頂に至る蔵王ハイライン(有料道路),エコーラインから蔵王温泉に通ずる蔵王ラインなどが次々と開通し,車窓から標高1700m付近までの火山地形や自然林,高山植物などを眺めることができるようになった。また各所にスキー場が整備され,蔵王温泉から地蔵岳山頂付近に至るロープウェーからは名物の樹氷が見られる。
執筆者:

蔵王山は,かつては女人禁制の修験の山として知られ,〈西のおやま〉である出羽三山に対して〈東のおやま〉と称された。この山の信仰は,主として農業神の鎮座する山岳,修験行者の修行道場という二つの性格を表しているが,その信仰圏は山麓部や山岳を仰ぎみることのできる地域にとどまっている。蔵王山の名称はここに蔵王権現が勧請されまつられたことに由来し,各地の修験道の山岳と同じように国嶽(くにみたけ)として展開してきた。蔵王山は本来は刈田嶺と呼ばれ,その山上には刈田嶺神がまつられていた。《延喜式》には刈田嶺(かむたみね)神社とある。現在その里宮は山形県側の上山市金谷と宮城県側の刈田郡蔵王町の2ヵ所に鎮座している。しかし,金剛蔵王権現の勧請によって山岳の名称も変化したところに大きな特色がある。平泉の藤原氏が栄華を誇ったころはその庇護を受け,願行寺を中心として一山四十八坊の隆盛をみたと称されているが明らかではなく,登拝者が増加してくる近世には,嶽之坊,案楽院,松尾院,山乗院(三乗院)の4院が個々の登拝口にあって別当の任に当たってきた。こうした一山組織を取り得なかった点に加え,羽黒修験の圧倒的勢力により,蔵王山の信仰圏が山麓部を中心にした地域にとどまったといえる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔵王山」の意味・わかりやすい解説

蔵王山
ざおうさん

奥羽山脈中南部にある山で、山形県の山形市、上山(かみのやま)市、宮城県の柴田(しばた)郡、刈田(かった)郡にまたがり、おもに安山岩の成層火山群の総称。蔵王連峰ともいう。主稜線(りょうせん)の南北延長は約30キロメートル、最高峰は熊野岳(1841メートル)。澄川(すみかわ)―難場(なんば)沢を境に、北蔵王と、生成のより古い南蔵王に大別され、一般には北蔵王を蔵王山とよぶ。北蔵王は、熊野岳、刈田岳(1758メートル)、馬ノ背などの連なる外輪山が火口湖御釜(おかま)(別名五色沼、直径約360メートル、水深約40メートル)と中央火口丘の五色岳(1674メートル、噴石丘)を抱く複式火山である。ほかに、地蔵山(1735メートル)、名号峰(みょうごほう)(1491メートル。全山が花崗閃緑(かこうせんりょく)岩で火山ではない)や、蔵王温泉を湧出(ゆうしゅつ)する高湯爆裂火口を取り囲む鳥兜山(とりかぶとやま)(1401メートル)、滝山(りゅうざん)(1362メートル)なども含む。北蔵王では、1183年(寿永2)を皮切りに、1972年(昭和47)まで、噴火(水蒸気爆発)、噴気・温泉活発化、地震、鳴動などが四十数回も記録され、現に噴気孔や温泉が多い。ただし、1867年(慶応3、死者3人)などの被害を伴った諸噴火は御釜の内外で発生した。火山泥流を出しやすい。山頂一帯はコマクサなどの高山植物以外は植生の発達が悪く、樹氷が形成されるアオモリトドマツなどの亜高山帯林は標高1300~1600メートルにかけて広がる。南蔵王は屏風岳(びょうぶだけ)(1825メートル)、不忘山(ふぼうさん)(1705メートル)、後烏帽子岳(うしろえぼしだけ)(1681メートル)などの円錐火山(えんすいかざん)が連なり、植生の被覆がよく、とくに西側斜面に亜高山帯林が広がる。蔵王山は、古来、不忘山(わすれずのやま)、刈田嶺(みね)とも称されたが、7世紀に僧行願(ぎょうがん)が吉野(奈良県)の金峰山(きんぶせん)から蔵王権現(ごんげん)を勧請(かんじょう)して以来、この名でよばれるようになったと伝える。江戸末期までは女人禁制の修験(しゅげん)、信仰の山であった。1950年(昭和25)に日本観光百選山岳部の第1位となり、1962年にエコーラインが開通するなど、観光開発が進み、壮大な火山景観に加え、温泉のある樹氷とスキーのメッカとして知られる。蔵王国定公園の中心。

[中川 重・諏訪 彰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蔵王山」の意味・わかりやすい解説

蔵王山
ざおうざん

宮城県山形県の県境にそびえる火山群。活火山で,常時観測火山。単一峰の名称ではなく,浸食が進行した複式火山の総称で,南北二つの火山群に分けられる。最高峰の北蔵王にあたる熊野岳(1841m),刈田岳(1758m)はともに外輪山で,馬蹄形のカルデラを内包し,五色岳(1672m)や御釜(火口湖)がカルデラ内にある二重式火山。南蔵王は屏風岳(1825m)を中心に不忘山(1705m),杉ヶ峰(1745m)を含む火山群をさす。過去数多くの噴火が記録されており,近年は 1940年の噴火以降目立った活動はないが,噴気や鳴動地震などが起こっている。山腹,山麓の温泉群や,原始林,変化に富む火山地形,雄大な展望,冬の樹氷とスキー場など観光資源に富む。26kmの蔵王道路(エコーライン)で仙台市山形市と結ばれる。1947年蔵王連峰県立自然公園(→蔵王高原県立自然公園),1963年蔵王国定公園に指定。1950年日本観光地百選山岳の部第1位に当選してから観光客が増えた。

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百科事典マイペディア 「蔵王山」の意味・わかりやすい解説

蔵王山【ざおうざん】

宮城・山形県境にある活火山群。南蔵王は屏風(びょうぶ)岳を中心とする古い火山。北蔵王は二重式火山で,中央火口丘五色岳と,最高峰熊野岳(1841m)や刈田(かった)岳を連ねる馬ノ背と呼ぶ外輪山があり,火口湖の御釜は1939年にも活動した。山名は熊野岳・刈田岳の山頂に祀られる蔵王権現によるとされ,中世末には蔵王修験が確立していったとされる。蔵王国定公園の中心で,樹氷が美しく,周辺には上山(かみのやま),蔵王,峨々,青根,遠刈田(とおがった)などの温泉や多くのスキー場がある。
→関連項目青根[温泉]奥羽山脈大河原[町]川崎[町]蔵王[町]蔵王[温泉]七ヶ宿[町]日本百名山山形[県]

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知恵蔵mini 「蔵王山」の解説

蔵王山

宮城県と山形県にまたがる奥羽山脈の一部を構成する連峰。標高は1841メートル(主峰の熊野岳)。武岩、安山岩の成層火山群の活火山であるため、気象庁は各管区気象台に設置された「火山監視・情報センター」において、蔵王山の火山活動を監視している。2014年10月9日、仙台管区気象台は蔵王山で地下に埋めた傾斜計が2ミリ盛り上がったことを示したことや、火山性微動が確認されるなど、やや活動が高まっているとして注意を呼びかけた。また山頂付近にある火口湖「御釜」で水面の白濁が確認されたことも合わせて発表した。これを受け、同11日に宮城県は「御釜」周辺や登山道入口10カ所に、登山客や観光客に注意を呼びかける看板を設置した。また同14日、宮城県は蔵王山(宮城・山形県境)で火山活動が高まっていることを受け、防災対策などを協議する「蔵王山火山防災連絡会議」を山形県と設立することを発表した。

(2014-10-15)


蔵王山

宮城県と山形県にまたがる成層火山群。蔵王連峰とも称される。気象庁の常時観測火山の一つ。最高点は熊野岳で、標高1841メートル。40~10万年前に現在の山容がほぼ形成され、約3万年前から火山活動が再開し現在まで続いている。近年では、1940年に小規模な噴火が見られたが、以降噴火はしていない。宮城県側の火口湖「御釜」(直径360メートル、別名五色沼)など多数の見所があり観光名所である他、トレッキングやスキーなどが盛んに行われている。また蔵王山を中心に、山形の蔵王温泉、宮城の青根温泉・遠刈田温泉などがあり、温泉地としても知られる。2014年10月には、やや小さな火山性微動が発生し、御釜の湖面に白濁が確認されたとのことで、仙台管区気象台が注意を呼びかけた。

(2014-10-14)

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事典 日本の地域遺産 「蔵王山」の解説

蔵王山

(山形県;宮城県)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「蔵王山」の解説

蔵王山

(宮城県・山形県)
日本百名山」指定の観光名所。

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