石人・石獣(読み)せきじんせきじゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石人・石獣」の意味・わかりやすい解説

石人・石獣
せきじんせきじゅう

中国において漢代以降、宮殿、廟(びょう)、墳墓の参道などに置かれた人物、獣の石彫。前漢の将軍霍去病(かくきょへい)の墓に残る匈奴(きょうど)を踏まえる馬像などの石刻群は、現存する最古の一例として有名。後漢(ごかん)の例では、文人武人石像が各地に残るほか、この時期には墳墓の墓前に詣(もう)でて祭祀(さいし)を行う習慣が確立し、これに応じて、墓の格式を示し、その守護と悪鬼駆除のため、参道の両側に、石柱石碑とともに、文・武官や動物(ゾウ、ウマ、ラクダ、トラ、ヒツジなど)あるいは霊獣の類(麒麟(きりん)、辟邪(へきじゃ)、唐代以降に一角獣など)の石刻群を配列する風習が一般化した。その例は『水経注(すいけいちゅう)』に多く記録されている。魏晋(ぎしん)南北朝期では、南朝系の陵墓に残る大型で勇猛な姿の石獅子(しし)が知られるが、北朝の例は少ない。しかし唐から明(みん)・清(しん)に至る歴代の陵墓では、時代による様式の変化をみせながらも、墓前の石人・石獣群は規模大きく展開され、唐の乾陵(けんりょう)(高宗則天武后の合葬墓)や明(みん)十三陵(じゅうさんりょう)などにその典型的な例をみることができる。また、唐の制度を取り入れた統一新羅(しらぎ)時代の朝鮮半島などにも影響を与えた。

[西江清高]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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