改訂新版 世界大百科事典 「石組み」の意味・わかりやすい解説
石組み (いしぐみ)
日本庭園の造園技術の中で最も特色ある技法の一つ。自然石を組み合わせて配置したもの,またはその配置をいう。〈いわぐみ〉とも読み,石立て,石くばりとも称する。《拾芥抄》には〈石を畳む〉という平安時代初めの記事が見られ,巨勢金岡(こせのかなおか)が神泉苑監として平安京神泉苑の石組みを行ったことが知られる。また平安時代の造園書《作庭記》では〈石を立てる〉と表現され,その立て方を大海,大河,山河,池沼,葦手(あしで)の五つに分けて説いている。室町時代の《山水幷野形図》では,石に仏の名を冠し,石組みに儒教や仏教の縁語を結びつけて解説している。その後の造園書では石組みの禁忌にもふれている。作庭を得意とする僧侶を〈石立僧〉といい,鎌倉・室町時代には,夢窓国師など作庭に名を残す僧侶が輩出した。彼らは現在でいう造園の専門家で,中世には庭師の職はなかったため,手足となって働く労働者を指揮して,石を用いない一般の作庭も行ったのであった。石組みには自然の趣を写実的に表すもの,庭の骨格構成を主とするもの,宗教・民俗等の寓意をなすもの,気分象徴をなすもの,実用を主とするもの,およびそれらの兼用などが考えられ,一般には象徴的抽象的な造形手法として現代の庭園にも重要な役割を果たしている。
執筆者:河原 武敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報