翻訳|quartz glass
二酸化ケイ素(シリカ)SiO2成分のみからなるガラスで,シリカガラスsilica glassともいう。耐熱性とくに耐熱衝撃性にすぐれているため,反応容器,反応管等に使用されている。紫外線の透過力を生かした用途,レンズや水銀灯用バルブとしての用途もある。また,不純物濃度を極限まで減少させた石英ガラスは,可視部における光の吸収がほとんどないため,光通信用グラスファイバー(ガラス繊維)として使用されている。石英ガラスは,高温での粘度がきわめて高いために,通常のガラスを製造する方法,すなわち,るつぼあるいはタンク窯中で原料を溶融し成形するという方法をとることができない。反応管などに使用される透明石英ガラスは,天然の水晶を原料とし,酸水素炎あるいは電気炉を用いて1800~2000℃でインゴットを製造,次にグラファイトをモールド(型)として電気炉中2000℃以上の高温で,管状,棒状などに成形して作られる。不透明石英管は,原料としてケイ石を用いたもので,原料中の泡が最終製品中にも残るため不透明になる。特殊な用途に使用される高純度品では,SiCl4を火炎中で分解して得たSiO2を原料として使用する。光通信用石英グラスファイバーは,SiH4あるいはSiCl4に屈折率を制御するためにGeCl4,BCl3等を加えた気相原料を火炎で酸化し,生じたすす状のSiO2を石英ガラス管の内側に付着させるか,あるいは棒状に堆積させ,高温にして脱ガスをして均一なガラス棒としたのち,この一端を加熱して繊維化するという方法で作られる。
執筆者:安井 至
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
特殊ガラスの一つで、二酸化ケイ素だけの単成分からできているガラス。シリカガラスの通称。不純物の多少によって性能も異なるが、概して熱膨張係数が5~6×10-7と小さく、徐冷温度も1140℃と高いため、耐熱性、耐熱衝撃性とも実用ガラス中で頂点にたち、理化学用器として重要である。珪砂(けいさ)または水晶から電気溶融でつくる。前者は微細な気泡のため不透明だが、後者は透明で品質も高い。光通信や半導体プロセスなどに使う超高純度のものは四塩化ケイ素(液体)、モノシラン(気体)などから気相合成でつくられ、光吸収損失の原因となる遷移元素などの不純物含有率が最低10億分の1以下のものまである。光通信用ファイバーは気相合成法の一種の化学蒸着によってつくられる。
[境野照雄・伊藤節郎]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
シリカガラス(silica glass),溶融シリカ(fused silica)ともいう.シリカSiO2だけを成分とするガラス.石英,水晶,けい石あるいはけい砂を溶融した後,冷却して加工する.ケイ素のアルコキシドの加水分解によって得られるゲルを融点以下の温度で焼成する方法もある.220 nm までの紫外線を通し,熱衝撃に強く,化学的耐久性もすぐれている.密度2.20 g cm-3.軟化点1650 ℃.製品として不透明なものは無数の微泡を含み,性能はやや劣る.光ファイバー用の原料となる高純度な石英ガラスの製造は,石英を原料とせず,SiCl4の気相分解物を用いる方法で行われる.[別用語参照]耐熱性ガラス
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…無定形二酸化ケイ素は空気中の水分を吸収する能力があるので,乾燥剤に利用される。結晶を2000℃近くの高温で融解して得られる石英ガラスは紫外線を通しやすく,膨張率が小さい。このため,急激に強熱あるいは冷却しても割れにくく,高温用ガラスとして用いられる。…
※「石英ガラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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