証書が作成された日について,法律上証拠力を認める場合の日付をいう(民法施行法4条)。
文書に確定日付があると,その日付の日または遅くともその日付の日までにその文書が作成されたものと認められる。ある文書が存在するとき,その文書の記載内容とともに,その文書がいつ作成されたかが問題となることがある。多くの場合,文書の末尾にその作成日付が記されるが,その日付がつねに真実の作成日を表示しているとは限らない。しかし,文書の作成日に関して利害関係を有する者にとっては,文書の作成日が不明確なままではその地位が不安定なものになることがある。そこで,文書に確定日付を得てその作成日を明確なものとすることが行われる。もっとも,厳密には確定日付によって明確にされるのは文書の作成日自体ではなく,文書が確定日付の日もしくはそれ以前に作成されたという事実である。確定日付を得る方法として通常行われるのは,文書に公証人の確定日付印を押印してもらう方法と郵便局での内容証明郵便に対する日付入りスタンプの押印による方法とがある。
公証人による確定日付は,文書の種類・内容・作成時期を問わず,あらゆる文書について可能であるが,実際は取引上重要な契約書あるいはそれに関連する覚書・念書等について確定日付を得ることが行われる。文書の所持人が単独で取得することが可能であり,相手方の協力を要しない。なお,公正証書の作成日付は当然に確定日付となる。内容証明郵便による確定日付は,文書を相手方に対する内容証明郵便として郵便局に差し出すことによって得ることができる。多くは請求,催告のような文書作成者の一方的意思表示を相手方に伝達するときに用いられる。債権譲渡がなされたときに,旧債権者が債務者に対して行う債権譲渡の通知または債務者が新債権者もしくは旧債権者に対して行う債権譲渡に対する承諾は,いずれも確定日付ある文書によってなされないと法律上不安定な効力しか有しないことがある(民法467条2項)。このため債権譲渡に関する通知・承諾の方法として内容証明郵便による確定日付が多く用いられる。
執筆者:栗田 哲男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
証書が作成された日付につき、第三者に対して完全な証拠力があると法律上認められる日付をいう(民法施行法4条)。確定日付として認められるのは、次の五つの場合である(同法5条1項~5項)。すなわち、(1)公正証書ではその日付、(2)私署証書では、登記または公証人役場で、これに日付のある印章を押したときはその日付、(3)証書署名者中に死亡者があれば、その死亡の日付、(4)私署証書が確定日付のある証書(公正証書)に引用されたときは、後者の証書の日付、(5)官庁または公署が証書にある事項を記入し、これに日付を記載したときはその日付(たとえば内容証明郵便)、である。通常は一定の手数料を払って、公証役場または登記所で確定日付を受ける(同法6条・8条)が、契約解除の意思表示などを内容証明郵便ですることにより、確定日付の要件を備えることが行われる。債権譲渡では、確定日付のある証書による通知または承諾が必要とされる(民法467条2項)。
[池尻郁夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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