出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
東京都目黒区にある浄土宗の寺。明顕山善久院と号する。1719年(享保4)増上寺36世祐天(1637-1718)が晩年庵居して寂した地に高弟祐海が創建し,祐天を開山とした。祐天は将軍徳川綱吉・家宣,また綱吉の母桂昌院をはじめ大奥の帰依あつく,庶民の信仰も集めた高僧であった。祐天の書き与えた名号の利益や庶民教化は《祐天大僧正利益記》などに詳しいが,とくに歌舞伎で有名になった累(かさね)一族の怨霊救済の話はよく知られ(《累》),当寺境内にある累塚には参詣者がたえない。例年3月1日に祐天の木像を江戸城中に運び,節供後下城の際,小袖を拝領する風があった(《遊歴雑記》)。かつては常行念仏の道場として名高く,《東都歳事記》によれば,毎年7月16日から25日まで阿弥陀経千部読誦が執行され,僧俗が群参したといい,毎月15日には別時念仏が行われた。本堂は1894年の火災で焼失したが,将軍家宣の霊廟を改修してこれにあてた。西方六阿弥陀参りの6番,江戸南方四十八所地蔵参りの1番,円光大師二十五所巡拝の8番の札所にそれぞれなっている。
執筆者:長谷川 匡俊
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