院号(読み)インゴウ

デジタル大辞泉 「院号」の意味・読み・例文・類語

いん‐ごう〔ヰンガウ〕【院号】

上皇に対する尊称。「高倉院」「後鳥羽院」など。
皇太后准母など皇族の女性で、上皇に準じた待遇を受ける人への尊称。「建礼門院」「東三条院」など。
その人の建てた菩提寺ぼだいじや居住した僧院称号をもって貴人をよぶ敬称。「法興院(藤原兼家)」「等持院(足利尊氏)」「前唐院(慈覚大師)」など。
戒名または法名で「院」の字を含むもの。古くは貴人の場合に限られた。
年功を経た修験者しゅげんじゃをよぶ呼び方。

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精選版 日本国語大辞典 「院号」の意味・読み・例文・類語

いん‐ごうヰンガウ【院号】

  1. 〘 名詞 〙 もと、天皇が譲位の後に居住した後院の名をその人のおくり名としたもの。
  2. 上皇や在位中に没した天皇あるいは女院などに付ける尊称。嵯峨院、東三条院など。
    1. [初出の実例]「頭弁季仲仰云、中宮院号事也〈略〉上東門院、陽明門院等、可被因准何例」(出典:後二条師通記‐寛治七年(1093)正月一九日)
  3. 一般に臣下、武将、僧侶などの貴人が建立した寺院の称号。また、その貴人の別称。たとえば、法興院、鹿苑院など。
    1. [初出の実例]「院号、其始非天子称。中古藤原氏執柄時、兼家公号法興院。是其始也」(出典:称呼私弁(1865))
  4. ( から転じて ) 一般に死者の戒名(または法名)に付ける「院」の付く称号。
    1. [初出の実例]「狼に衣てかけの御院ごう」(出典:雑俳・柳多留‐一一(1776))
  5. 修験者などの年功を積んだ者に付ける称号。
    1. [初出の実例]「おん油屋仲間の山上講、俗体乍ら数度のお山、ゐんがう請たる若手の先達」(出典:浄瑠璃・女殺油地獄(1721)中)
  6. 病院など、「院」の付いたものの称号。
    1. [初出の実例]「車夫の事だから、院号で無く、其の院長の苗字で答へる」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「院号」の意味・わかりやすい解説

院号
いんごう

法名(ほうみょう)、戒名(かいみょう)の上に冠する最上の尊称。院とはもともと垣や回廊のある建物の意で、官庁や寺の称号であったが、天皇譲位後の御所の呼称に用いられるようになった。さらに10世紀初めの嵯峨(さが)天皇、淳和(じゅんな)天皇が、その居院によって嵯峨院、淳和院と称されて以来、高貴の人の尊称に転じた。10世紀末には一条(いちじょう)天皇の母が東三条(ひがしさんじょう)院と号して女院院号が、関白藤原兼家(かねいえ)が法興(ほうこう)院と号して摂関家院号が始まった。その多くは入道隠棲(いんせい)した寺院名を冠するものであった。やがて足利尊氏(あしかがたかうじ)がその開創にかかる等持院によって等持院殿と称されて以来、歴代将軍は公家(くげ)と区別して院殿号を冠した。江戸時代に院殿号は武家一般に用いられ、院号より上位とされた。一方、僧侶(そうりょ)間では、円仁(えんにん)が前唐(ぜんとう)院、円珍(えんちん)が山王(さんのう)院と称したごとく早くから用いられ、主として天台宗真言宗門跡(もんぜき)寺院で冠されていた。浄土真宗では蓮如(れんにょ)以来法主(ほっしゅ)がこれを冠し、本願寺が門跡を勅許されて以後、末寺僧侶に及んだ。浄土宗では功績のあった僧侶に三字院号を与え院家(いんげ)に列した。江戸時代にはこうして武家や僧侶に普及し、また特定の民衆にもこれを冠するようになった。

[大桑 斉]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「院号」の解説

院号
いんごう

太上(だいじょう)天皇の称号,女院(にょいん)の称号,摂関・将軍などの称号の3種類がある。(1)太上天皇の称号は,嵯峨天皇以後,京内外に営んだ居所によってよばれたもの。当初は居所の名を中国風の雅名にかえるのが例であったが,一条天皇以後は日本風の名を用いた。また,後一条天皇以後は在位のまま没した場合も院号を贈るのが例となり,ついには天皇号として定着した。(2)女院の称号は,これにならって,皇太后を辞した藤原詮子(せんし)が東三条院とよばれたのを初例とする。上東門院(藤原彰子)以後は門院号が大半を占めた。(3)摂関・将軍などの称号は,寺院名にちなんでよばれ,摂関藤原兼家の法興院(ほうこういん),足利尊氏の等持院(とうじいん)に始まり,のちには庶民や一般の僧尼にもこの風が広まった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「院号」の意味・わかりやすい解説

院号
いんごう

院を末尾に付して示す名称。寺を意味する場合と人を意味する場合がある。前者は独立の寺院を示したり,また,付属の建築物をさす場合がある。人を意味する場合は,元来,退位した天皇の住む建物を意味し,またそれに住む上皇をもさしたが,さらに普遍化され,皇后,ひいては江戸時代の大名にも用いられた。武士は一般に死後,院の名を得,これがのちに死者の法名に院を付する起源となった。

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普及版 字通 「院号」の読み・字形・画数・意味

【院号】いんごう

院試。

字通「院」の項目を見る

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葬儀辞典 「院号」の解説

院号

戒名に『院』の付くもので、最上の尊称。

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世界大百科事典(旧版)内の院号の言及

【戒名】より

…これは生前に受戒入道して仏道修行をしたという意味である。また受戒入道した居士,大姉,信士,信女の仏道修行は寺院においてでなければならないので,その寺院名を院号で表す。これは別に寺院を建立するという意味ではなくて,その人の住宅を院に見立てて仏道修行すればよいことである。…

※「院号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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