神人(読み)シンジン

デジタル大辞泉 「神人」の意味・読み・例文・類語

しん‐じん【神人】

神と人。
神のように気高い人。また、神のような力をもつ人。仙人。
「剛健な獣の野性と、翼を持つ鳥の自由と、深秘を体得した―の霊性とを」〈藤村夜明け前
《〈ラテンdeus homoキリスト教で、イエス=キリストのこと。
じにん(神人)」に同じ。

じ‐にん【神人】

中世、神社に奉仕し、その保護を得ることによって宗教的、身分的特権を有した者。国などの課役を免れ、また、神木・神輿しんよを奉じて強訴ごうそを行ったりした。芸能民・商工業者のほか、武士や百姓の中にも神人となる者があった。神民。じんにん。→犬神人いぬじにん

かみん‐ちゅ【人】

沖縄地方で、神をまつる巫女みこの総称。正式の資格をもつ巫女のほかに、村祭りのときだけ資格を与えられる巫女をもいう。
[補説]書名別項。→神女

じん‐にん【神人】

じにん(神人)

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精選版 日本国語大辞典 「神人」の意味・読み・例文・類語

じ‐にん【神人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神社に奉仕する下級の神職や寄人(よりうど)神主、禰宜、祝(はふり)などの祠官の下に置かれ、年中神事の雑役や社頭の警備などに当たったもの。古くからその神社と縁故をもち、祭礼のときには、一定の職を特権として世襲している例が多い。また、中世には武力によってしばしば強訴・乱行を行なった。じんにん。しんじん。
    1. [初出の実例]「其の門の左右に二の神人立ち、身に鉀鎧(よろひ)を著、額に緋の蘰(かづら)を著けたり」(出典:日本霊異記(810‐824)中)
    2. 「下司 下部の神役人なり。神人(ジニン) ことわり上に同じ」(出典:神道名目類聚抄(1699)五)
  3. 神社に隷属して、芸能・商工業あるいは卑賤な役に従事するもの。
    1. [初出の実例]「其魚梁船の事をば、〈略〉安村といふ龍田本宮の神人支配し」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)下)

しん‐じん【神人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神と人。
    1. [初出の実例]「神人を和して之を一にせむと欲するなり」(出典:明六雑誌‐五号(1874)教門論・二〈西周〉)
    2. [その他の文献]〔書経‐舜典〕
  3. 神のようにけだかい人。また、神通力を得た人。仙人。
    1. [初出の実例]「悟る所は未だ神人弁者の答術を得ず」(出典:日本霊異記(810‐824)下)
    2. [その他の文献]〔戦国策‐衛策・中山〕
  4. じにん(神人)
    1. [初出の実例]「神人やみことが払いをするやうに悪事を払ひのけてだされた程に子ができたぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一七)
  5. キリスト教で、イエス‐キリストをさしていうことば。

じん‐にん【神人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. じにん(神人)
    1. [初出の実例]「神輿(しんよ)にたつところの箭(や)をば神人(ジンニン)してこれをぬかせらる」(出典:高野本平家(13C前)一)
  3. 神的存在。
    1. [初出の実例]「神人暗来、得命難」(出典:拾遺往生伝(1111頃)中)

かみ‐びと【神人】

  1. 〘 名詞 〙 神主(かんぬし)など、神に仕える人。かんづかさ。かんびと。
    1. [初出の実例]「神ひとの手に取りもたる榊葉にゆふ懸け添ふる深き夜の霜」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)

かみん‐ちゅ【神人】

  1. 〘 名詞 〙 沖縄地方で、神をまつる巫女(みこ)の総称。正式な資格をもつ巫女のほかに、村祭りのときだけ資格を与えられる巫女をもいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「神人」の意味・わかりやすい解説

神人 (じにん)

〈じんにん〉ともいう。平安時代末期から室町時代末期にかけての荘園制社会において,さかんに活動した神社の下級神職者や寄人(よりうど)と呼ばれた人をさす。奈良時代に律令制の身分制度で〈神奴(しんど)/(かみやつこ)〉〈神賤(しんせん)〉とされ,神社に隷属して領地田畠の耕作,調度品の製造,社域内の清掃をはじめとする雑役を務めた賤民の系譜をひくものとみられている。神主職,宮司職の配下に置かれ,種々の任務・職掌をそれぞれの伝統・習慣に応じて分担したが,神社組織での本末関係(本社と各末社との関係)により,本社に常勤奉仕する神人を〈本社神人〉,各地の末社を中核とする社領荘園に散在し,寄人として末社の任務に従事した神人を〈散在神人〉と称した。大和の春日社(現,春日大社)の例では,一部の特別の事例を除けば本社神人は黄衣(こうえ)(黄色の衣)を,散在神人は白衣(びやくえ)(白色の浄衣(じようえ))を,それぞれ制服として着用し,前者は〈黄衣神人〉,後者は〈白人(はくじん)神人〉と称されていた。

 神人に課された任務には,神事祭礼のさいの雑役(ぞうやく),社域の警固,領地・領民の管理・監察,非常事態における軍事・警察的行動,神社の要求事項を中央政権に対して突きつける嗷訴(強訴)(ごうそ)の示威活動等々があって,ことに嗷訴は大寺院に付属して武装活動をなした僧兵のそれと並び称せられ,中世政治史上きわめて重要な意義をになった。また,鎌倉時代末~南北朝時代のころから室町時代を通じて,神人の内容も多様化したようで,手工業・商業の活動や,諸芸能活動を通じて神人の身分・地位を得,神社の威勢を背景として社会的・経済的実力を伸ばすものも続出した。手工業・商業関係の神人では,綿座(わたざ)を組織して活躍した京都祇園社(ぎおんしや)(現,八坂(やさか)神社)の神人や,灯明油を製造して本社の石清水社(いわしみずしや)(現,石清水八幡宮)に進納するのを本務としながら灯明油の製造・販売について強大な特権を誇りつづけた大山崎離宮八幡宮(おおやまざきりきゆうはちまんぐう)所属の大山崎油座(あぶらざ)神人や,食生活のうえで欠かせなかった麴(こうじ)の製造・販売でやはり大きい権益を保持した京都北野社(きたのしや)(現,北野天満宮)の麴座神人などが史上に名高い。

 散在神人の出身階層は,各地の在地の武士,荘官・名主(みようしゆ),手工業職人・商人等々にわたるが,そのほかに〈非人(ひにん)〉系の神人集団があり,とくに〈犬神人(いぬじにん)〉〈つるめそ〉と呼ばれた京都祇園社直属のそれがよく知られている。

 神人は江戸時代に入ると下級神職だけにしぼられ,その名称も古くから神職のうち神主職と祝(はふり)職との間の職名としてもちいられてきた〈禰宜(ねぎ)〉の語が適用されるのが普通になった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神人」の意味・わかりやすい解説

神人(じにん)
じにん

「じんにん」とも読み、「神民(しんみん)」ともいう。中世の神社に所属した奉仕者身分。神主、禰宜(ねぎ)などの本来の神職とは区別される存在で、一般の貴族・寺院の場合の寄人(よりゅうど)にあたる。古代の神賤(しんせん)・神奴(しんど)の系譜を引くという説と、神戸(かんべ)の後身とする説がある。しかし系譜のいかんは別として、中世においては荘園(しょうえん)制(とくに寺社領荘園)の発展とともに、「(社司が)恣(ほしいまま)に賄賂(わいろ)に耽(ふけ)り、猥(みだ)りに神人を補し、或(あるい)は正員と号し或はその掖(わき)と称す」(保元(ほうげん)荘園整理令、1157)とあるように、掖=非公式成員も含めて広範な諸階層が神人化した。中央では伊勢(いせ)、春日(かすが)、日吉(ひえ)などの大社、地方でもとくに一宮(いちのみや)や、前記のような大社の末社に多数の神人が組織された。彼らは神社に上番(じょうばん)して神役を勤め、供祭物(くさいもつ)を貢進するなどの宗教的職務を有しており、その見返りとして強い宗教的、身分的特権を有していた。たとえば、他の世俗権力は、本社によって彼らの神人職が解かれない限り、拷訊(ごうじん)(拷問)や刑罰を加えることができなかった。

 また彼らは平民百姓一般にかかる課役を免れており、さらに相伝の所領への濫妨(らんぼう)を神木(榊(さかき)、竹柏(なぎ)など)を申し下して排除することができるなど、私財を神物(しんもつ)として宗教的保護の下に置くこともできた。祇園社(ぎおんしゃ)の綿座、石清水社(いわしみずしゃ)の油座、北野社の麹(こうじ)座のような中世の同職組織が、神人の組織のなかから生まれてきた理由がここにある。これらの特権を守るために、また寺社の指示によって、彼らは神宝、神輿(しんよ)、神木を先頭に立てて、強訴(ごうそ)を敢行した。このような神人の行動は、中世寺社の社会的勢力の枢軸をなすものであった。

[保立道久]

『黒田俊雄著『寺社勢力』(岩波新書)』


神人(じんにん)
じんにん

神人

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普及版 字通 「神人」の読み・字形・画数・意味

【神人】しんじん

神と人。〔書、舜典〕克(よ)く諧(かな)ひ、倫を相ひ奪ふこと無く、人以て和す。(き)曰く、於(ああ)予(われ)石をち石を拊(う)てば、百獸(ことごと)くふ。

字通「神」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神人」の意味・わかりやすい解説

神人
じにん

「じんにん」とも読む。神社の下級神職および付属の隷属民。神主,宮司などの社家に支配され,社務の雑役にあたった。強訴に際しては神木神輿を奉じてその主力となり,寺院の僧兵に近いものであった。このような奉仕の反対給付として,商業的特権を認められ,をつくって経済的活動をした神人も多い。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「神人」の解説

神人
じにん

「じんにん」とも。神社に雑役を奉仕する下級の神職。本来,神社に属する社司をさしたが,平安時代以降,荘園体制の確立にともない,国衙や他の荘園領主の支配を忌避し,よりゆるやかな課役負担を求めて,多くの農民が神人となる動きがみられた。神人は社頭警備を職掌としたため武装兵力化し,しばしば神社の行う強訴(ごうそ)の主体となった。また彼らの多くは商業活動を行うようになり,神社の威を背景に座を構成した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「神人」の解説

神人
じにん

平安後期から現れた,神社奉仕の義務をもつ農民・商工業者,下級神職
「じんにん」とも読む。奉仕の代償として課役が免ぜられた。僧兵とともに朝廷に強訴 (ごうそ) することもあった。大山崎離宮八幡宮や祇園社の神人は有名。

神人
じんにん

じにん

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百科事典マイペディア 「神人」の意味・わかりやすい解説

神人【じにん】

寄人・神人

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世界大百科事典(旧版)内の神人の言及

【神人】より

…奈良時代に律令制の身分制度で〈神奴(しんど∥かみやつこ)〉〈神賤(しんせん)〉とされ,神社に隷属して領地田畠の耕作,調度品の製造,社域内の清掃をはじめとする雑役を務めた賤民の系譜をひくものとみられている。神主職,宮司職の配下に置かれ,種々の任務・職掌をそれぞれの伝統・習慣に応じて分担したが,神社組織での本末関係(本社と各末社との関係)により,本社に常勤奉仕する神人を〈本社神人〉,各地の末社を中核とする社領荘園に散在し,寄人として末社の任務に従事した神人を〈散在神人〉と称した。大和の春日社(現,春日大社)の例では,一部の特別の事例を除けば本社神人は黄衣(こうえ)(黄色の衣)を,散在神人は白衣(びやくえ)(白色の浄衣(じようえ))を,それぞれ制服として着用し,前者は〈黄衣神人〉,後者は〈白人(はくじん)神人〉と称されていた。…

【中世社会】より

…この動きの背景には,田畠に対する平民の権利の強化・安定があったのであり,しだいに動揺・形骸化する荘園公領制のもとに,新たな自治的な村落が成長してくるのである。
【職人】
 このような平民に対し,みずからの身につけた職能を通じて,天皇家,摂関家,仏神と結びつき,供御人(くごにん),殿下細工寄人(よりうど),神人(じにん)などの称号を与えられて奉仕するかわりに,平民の負担する年貢・公事課役を免除されたほか,交通上の特権などを保証され,その一部は荘園・公領に給免田畠を与えられることもあった職能民を,ここでは職人と規定しておく。
[遍歴する非農業民]
 中世社会には農業以外の生業に主として携わる非農業民(原始・古代以来の海民,山民,芸能民,呪術的宗教者,それに商工民など)が少なからず生活していた。…

【油】より

…とくに中世には,灯火用として社寺や公家が使用したため重要な商品となった。当時,油を製造・販売した組織が油座で,社寺を本所として灯油を献上するなどの奉仕のかわりにその保護をうけ,特権を与えられた神人(じにん)(油神人)の身分をもつ者がおもであった。なかでも石清水八幡宮の保護をうけた山城国大山崎(離宮八幡宮)の油座は,とくに鎌倉時代末から室町時代に,京都を中心とした畿内近国や瀬戸内沿岸にかけて,エゴマの仕入れ・製造・販売の独占権や諸国諸関の関銭免除の特権を握って活躍し,大和では興福寺大乗院を本所とする符坂油座が勢力をふるった。…

【浦・浜】より

…彼らの活動は,原始時代から徐々に進展してきた日本列島各地の浦浜の開発を新たな段階に推し進めた。彼らは,王家の供御人(くごにん)または有力神社の神人(じにん)などの身分を帯び,例えば鴨社神人が〈櫓(ろ)棹(さお)杵(かし)の通路の浜は当社供祭所たるべし〉と号したような特権的意識をもって,諸国の浦浜に進出していったのである。そこに創出された荘園制下の中世漁村の歴史的特徴は次の二つにまとめられる。…

【真人】より

…〈五経に真の字なし〉といわれるように,〈真人〉も儒家では用いられず,もっぱら道家で用いられることば。《荘子》では根源的な〈道〉の体得者を意味し,〈神人〉〈至人〉もほぼ同義語。その後,すぐれて宗教的な概念に変わり,天上の神仙世界に想定された官府の高級官僚,天上の神の命令をうけた地上の支配者,仙道修行者などを意味するようになった。…

※「神人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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