美保湾の西側、やや奥に鎮座する旧国幣中社。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
島根県松江市美保関(みほのせき)町に鎮座。主祭神は事代主神(ことしろぬしのかみ)、三穂津姫命(みほつひめのみこと)。神話によれば事代主神は、父の大国主(おおくにぬし)神を助けて国土の開発と産業福祉の発展に尽くし、天孫降臨に際しては国譲りを進言し、自らは身を退き海中の青柴垣(あおふしがき)に籠(こも)り鎮まったという。三穂津姫命は五穀豊饒(ほうじょう)の女神と解される。この神社は早く奈良時代に中央にも知られ、国から毎年奉幣があった。美保関は古来有力な漁業基地で、日本海航路の発達に伴い重要な風待ち港となったことから、中世以降は武将による寄進や社殿の造営修復が相次ぎ、庶民の間にも豊作・豊漁・海上安全をはじめ、あらゆる商売・生産の守り神として信仰が普及した。事代主神が釣り竿(ざお)を手にし鯛(たい)を抱えた福徳円満なえびす様(七福神の一つ)として全国に親しまれているのは、この地で漁をした神話にもよるが、この神の広い神徳と美保関の史的条件に負うところが大きい。旧国幣中社。氏子には複雑な頭屋(とうや)制度が保存され、厳重な潔斎をして神事の準備や神饌(しんせん)の調理を行う。例祭は4月7日。特殊神事に、祭神が青柴垣に鎮まり神社が創立されたことを記念する青柴垣神事(4月7日)、天津神(あまつかみ)の使者が祭神と国譲りのことを議した神話にちなむ諸手船(もろたぶね)神事(12月3日)がある。本殿は比翼(ひよく)大社造(美保造)といわれ、国の重要文化財。ほかに重要有形民俗文化財として諸手船2隻、そりこ1隻、奉納鳴物(楽器類)846点がある。
[平井直房]
『和歌森太郎著『美保神社の研究』(1955・弘文堂)』
島根県松江市の旧美保関町に鎮座。三穂津姫(みほつひめ)命,事代主(ことしろぬし)神をまつる。三穂津姫命は大国主神の后神で,事代主神はその第1の子神。天孫降臨に先立ち,使者が出雲に降り,大国主神にこの国土を天神に献上するよう伝えたとき,事代主神はこの美保碕で釣をしていたが,父神の相談に対し献上すべく答え,自身は湾内海中に青柴垣(あおふしがき)を作り,それにこもったと神話に語られている。古くより漁業の祖神,海上守護とされるとともに,恵比寿(えびす)神として出雲大神とともに信仰された。延喜の制で小社。交通上の要衝にあることから中世には群雄の争う地となり,1570年(元亀1)兵火にあったが吉川氏により復興。現本殿は1813年(文化10)の造営であるが大社造変態の二殿連棟の古い様式を伝える美保造。旧国幣中社。例祭の4月7日当日には事代主神の故事に由来する青柴垣神事,12月3日に天神の使者が降って国土奉献を議したことにちなむ諸手船(もろたぶね)神事が行われるほか,特殊神事が多い。
執筆者:鎌田 純一
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一年神主の任務は,献灯・献饌や神殿・境内の清掃で,中には祝詞奏上さえ担当する例もある。島根県八束郡美保関(みほのせき)の美保神社の一年神主は,厳重な斎忌(さいき)に服し,神事に際しては人事不省に陥って託宣をくだすことで有名であった(《諸国里人談》)。それほどでなくても,特定人に潔斎を厳しく課する形で,村の1年間の運命を一身に担わせる方式を保持してきた村はほかにも多かったのである。…
…島根県八束郡美保関町美保神社の諸手船神事に用いられる刳(くり)舟。常時2艘を備えつけ,約40年ごとに造り替えるきまりで,現存のものは1980年に古形を踏襲して造ったもの。…
※「美保神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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