京都の廃絶寺院の名。京都市上京区大宮通上立売の北にあった。もと比叡山竹林院の里坊。その開基澄憲を始祖とする説経師が根拠地としたので,この系統の説経を安居院流という。澄憲は比叡山で檀那流の天台教学を修め,学識と弁舌の才で知られ,大僧都,法印に叙せられたが安居院に退去し,華麗な表現の表白諷誦文(ひようびやくふじゆもん)と機知に富んだ譬喩因縁譚(ひゆいんねんたん)を中心とした説経で人々の教化にあたり名声を博した。澄憲の第3子聖覚(1167-1235)がその風をつぎ,澄憲に劣らぬ学識と説経の巧みさをもって〈安居院の法印〉として同流の基礎を築いた。以後,隆承,憲実,憲基とその子孫が伝統をうけつぎ延暦寺門跡の院家となり,13世紀半ば(寛元年間)に興った三井寺派の定円の流の説経とならんで皇族貴庶の信仰をあつめた。その思想は天台,真言,浄土にわたるもので,俗人を対象としながらも独自の教義を形成した。説話集《神道集》は安居院作と記してあるが確証はない。安居院流は室町時代まで栄えたが,応仁の乱で寺坊が焼失し,廃絶した。
執筆者:村上 学
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奈良県明日香(あすか)村にある寺。本元興寺(もとがんごうじ)の塔頭(たっちゅう)寺院。夏安居(げあんご)のための塔頭であったが、本元興寺の衰亡とともにこの建物のみ残存している。堂内の丈六釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう)により飛鳥(あすか)大仏また飛鳥寺ともよばれる。
[里道徳雄]
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…飛鳥にとどまった旧寺は一時衰えたが,9世紀初頭には再興され,837年(承和4)災異消除のために読経等の仏事を修せしめられた20ヵ寺の中に〈本元興寺〉の名が見え,これより元興寺と並称されるようになった。ところが1196年(建久7)雷火で焼失の後,急速に衰微し,現在では〈安居院〉と呼ぶ仮堂に本尊の〈飛鳥大仏〉を安置するのみである。【中井 真孝】
[遺構]
1956,57年の奈良国立文化財研究所の発掘調査で,飛鳥大仏が旧中金堂の位置にあり,中金堂の南に塔,塔の東西に東西二つの金堂を配し,塔の南の中門から東西にのびる回廊が1塔3金堂の一郭をめぐり,回廊の北に講堂を配していることがわかった。…
※「安居院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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