囚人を獄に拘禁しておくこと。律令制下における刑罰は笞・杖・徒・流・死の五罪(刑)であって,禁獄自体は刑名ではない。囚人の逃亡防止などを目的としたもので現行刑法の拘禁に近い。取扱いが比較的緩やかな散禁と,刑具を用いて身体の自由を束縛する禁固の2種があった。重罪の者を特別に長期間禁獄しておくことを長禁といい,別勅による長禁と,八虐罪を犯して死罪になるべきところを死を免じて長禁になった囚人に対しては大赦が適用されなかった。囚人の拘禁については囚獄司がつかさどり,囚禁については獄令に規定がある。獄は左右獄が設けられていたが,諸王や官人を散禁するときには獄ではなく授刀寮や左右兵衛,衛士府等も利用された。平安時代には原則として死刑は実施されなかったといわれ,囚人を獄につなぐことに刑罰の重点がおかれたためか,禁獄という語自体が一種の刑罰を意味するようになる。平安京の治安にあたった検非違使庁では,殺人犯に対して死刑を行わずに身柄を禁獄し,また笞・杖罪の者に対してもこれを実施せずに禁獄にすることが〈使庁の積習〉〈例〉として確立していた。
鎌倉幕府以降の武家政権においても禁獄は刑名として用いられた。鎌倉幕府法の中には,他人を打擲した凡下(ぼんげ)(一般人)身分の輩は60日間禁獄するというように囚禁日数を明記したものもある。江戸幕府も禁獄を刑罰としていたが,名称は過怠牢(有期)と永牢(終身刑)を内容とする入牢(にゆうろう)という語に変化した。明治時代には,1880年(明治13)7月公布の刑法に禁獄が懲役とならぶ主刑として規定されていたが,1907年廃止された。ただし禁獄の名称は,現行刑法における有期禁錮に相当する重禁獄として存続した。現行刑法中には禁獄という刑はない。
→禁錮 →牢屋
執筆者:清田 善樹
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…獄卒の違法行為を取り締まるため,弾正台官人が巡検することになっていたが,獄囚らは劣悪な条件下に置かれていた。【森田 悌】 鎌倉幕府で既決・未決の囚人を拘禁することを禁獄,召禁,召籠というから,拘禁するための獄舎,籠(牢)舎があったはずだが,その実態は不明である。公家,僧侶,御家人に対しては,しかるべき御家人あるいは守護などに囚人を召し預ける(預け置く)方法がとられるから,獄舎があるとすれば御家人身分にならない侍や一般庶民や下人等を対象としたものであろうか。…
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