明治民法の下では、未婚の母の生んだ子を母の私生子(私生児(しせいじ))とよび、その子が父に認知されると、父の庶子とよんだ。現在、この名称は法律上廃止され、いずれも「嫡出でない子」とよばれている。ヨーロッパ社会では、かつては、私生子はすこぶる虐待されたが、しだいに嫡出子との差別が撤廃されてきている。日本では、古くは「家」制度を維持するために、妻に子ができない場合には夫がよそで子をつくることがむしろ奨励されたため、私生子もかなり優遇されてきた。ただし、2013年(平成25)の民法改正前は、相続において、嫡出子と私生子とがいれば、私生子(認知されている場合)の法定相続分は嫡出子の2分の1であるとされ、私生子が不利な立場に置かれていた(民法900条4号但書)。しかし、同年9月4日、最高裁判所の大法廷は、同規定が法の下の平等を定める憲法14条1項に違反する旨を決定した(民集67巻6号1320頁)。この判決を受けて、民法900条4号但書のうち、私生子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする旨を定める部分が削除されたため、現在では、嫡出子と私生子の相続分は同等になっている。
[山本正憲・野澤正充 2016年5月19日]
『竹田旦「私生児観の変遷」(『史潮』57号所収・1955・大塚史学会)』▽『「私生児の方言」「私生児のこと」(『定本柳田国男集15』所収・1963・筑摩書房)』
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