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対象の位置、方向、大きさ、形、距離についての知覚。つまり、空間的特性の知覚をいう。空間知覚に関係する受容器は、視覚、聴覚、触覚、運動および平衡感覚、嗅覚(きゅうかく)などで、これらに対応する知覚空間として、視空間、聴空間、触空間などがあるが、実際には、いろいろな感覚器官が協働して空間知覚を成立させている。たとえば、垂直線の知覚では視覚的要因のほかに、重力方向による要因や身体の位置の要因などが協働している。知覚空間は有限で非均等、非等方であり、これを知覚空間の異方性という。正方形はやや縦に長く見え、垂直方向の線分の長さは、水平方向の同じ線分よりも過大視される。
知覚空間では一般に水平方向、垂直方向、前後方向などの主要方向は、いろいろな点で他の方向と異なり特殊な重みをもっているので、これらの主要方向のいずれかと対象の主軸とが一致するとき、その対象の知覚は安定し、知覚の誤差も小さい。たとえば錯視図形の主線が空間の垂直・水平方向と一致する場合、錯視量は減少する。対象あるいは自己を、空間に位置づけて知覚することを「定位」という。知覚空間の形状はまた自己を基準として成立し、対象は自己を基準とする空間に定位される。これを自己中心的定位という。自己中心的な空間知覚が生じやすいのは、一つの対象だけが提示され自己と対象との間の関係が問題となる場合や、空間がきわめて広く未分化、一様で不安定な場合である。多くの対象が同時に知覚される空間、狭い安定した空間では、空間は自己と独立した外界として知覚される。この場合の定位の基準は自己ではなく、空間の座標である。このような座標を空間的枠組みという。
[今井省吾]
観察者から対象までの距離、および対象間の知覚をいう。平面図形や絵などが立体的に見えることも奥行知覚であるが、この場合はとくに実体鏡視という。視覚による奥行知覚の規定要因には、生理的要因と経験的要因とがある。生理的要因としては、(1)眼球の水晶体の調節、(2)両眼の輻輳(ふくそう)、(3)両眼の視差、(4)観察者または対象の運動によって生じる運動視差がある。また、経験的要因としては、(1)対象の重なり、(2)対象の相対的大きさの違い、(3)対象の遠近法による空間的配置、(4)対象の明瞭(めいりょう)さ、色調の違い、(5)陰影、明暗、(6)肌理(きめ)の密度の勾配(こうばい)がある。
奥行知覚は生得的なものか経験的なものか論議されてきたが、現在、妥当な説明は得られていない。アメリカの心理学者ギブソンJ. J. Gibson(1904―79)の勾配説によれば、網膜に与えられる遠近の刺激の配置によって生じる粗密の勾配が、奥行知覚の基礎をなすという。ギブソンらは奥行知覚の実験装置として、直接身体に触れる1枚のガラスの半分の側では、市松模様の床とガラス板が接するようにし、ガラス板の他方の半分側では、同じ模様の床がガラス板から深く落ち込んでいるような装置をくふうし、これを視覚的断崖(だんがい)と名づけた。この装置のガラス板は触覚的には同一の知覚を生じるが、視覚的には肌理の密度の勾配と運動視差によって異なる二つの部分となる。彼らはこの装置を使って、這(は)い這いを始めた乳児や歩き始めの動物が、図柄模様の視覚的変化の手掛り(運動視差)によって人工的な崖(がけ)を知覚し、警戒し、避ける行動をりっぱにやってのけることを確かめた。
[今井省吾]
聴空間知覚の一つ。定位は音刺激の受容器である耳が、左右両方にあることが関係している。音の左右定位の規定要因には、両耳に与えられる音波の強度差、パルス状の短音が両耳に到達するまでの時間差、音波の波形の両耳における位相の差などがある。音源の方向の知覚は、左右の方向がかなり正確である。音源が左右に偏る場合、音波の両耳への到着の距離が異なり、両耳への音圧と時間も異なり、さらに、耳の陰影効果も加わり、両耳に位相差が生じ、音源の方向と距離の手がかりとなる。前後、上下方向に対する音源の定位には、頭の動きが影響する。
[今井省吾]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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