篠山城跡(読み)ささやまじようあと

日本歴史地名大系 「篠山城跡」の解説

篠山城跡
ささやまじようあと

[現在地名]篠山市北新町

篠山盆地のほぼ中央に置かれた近世の平山城跡。国指定史跡。きりヶ城ともいう。丹波国を中心とする五万―六万石を領知とした篠山藩の政庁で、松井松平氏の時代には大坂城および豊臣氏恩顧の西国大名に対する押えの城という役割をもっていた。そのあと藤井松平氏の二代、形原松平氏の五代、青山氏の六代が城主として入り、幕末から明治維新期に至る。

〔築城と規模〕

慶長一三年(一六〇八)常陸国笠間かさま(現茨城県笠間市)から八上やかみ城主として転封となった松井松平康重は、八上城は「要害悪シキニ依テ是ヲ廃シ」て近世城として適当な地を選んで新たに築城することとした(公室年譜略)。笹山(篠山)、その東の王地おうじ山、西のとびの山(登飛山、現権現山)の三山を候補として絵図を作成して検討、日置ひおき黒岡くろおか村の氏神春日大明神の境内であった篠山を城地とした。藤堂高虎(伊勢国津城主)縄張りを命じられ、普請総奉行に池田輝政(播磨国姫路城主)普請奉行に松平重勝・玉虫繁茂や石川重次・内藤忠清などを配し、山陰道・山陽道・南海道の一七ヵ国(一五ヵ国とも)にわたる諸大名二一家が夫役を負担している。これら大名らの宿泊は黒岡村内の民家があてられたという。実際の築城は同一四年四月に「丹波国立木郡の内佐々山の地 城普請仰せ付け候間」とあるので(「本多正信等連署奉書」山内家史料)、この辺りからと思われるが、三月に鍬初め、四月斧初め、六月根石初めがあり、同年一〇月には奉行衆および大名らが帰国し、同一二月には康重が新城に移ったともいう(「篠山城初日記」「篠山東太夫控」「篠山旧記御城取立」渋谷家文書)。のち二ヵ年余にわたって作事が継続された。

正保笹山城絵図(内閣文庫蔵)には南北五六間・東西四五間三尺とあり、平山城と記される。城の総構えは東外六町一〇間・西外九町七間・南外九町六間・北外六町四〇間で、本丸は東で南北五三間、西で南北五〇間、南で東西二七間、北で東西五〇間半、天守土台は東西九間半・南北一〇間五尺、天守多聞は東西二四間半・南北二七間の規模とされる。天守閣は築造されていなかった。本丸の北に位置する二の丸堀外法は東一町二九間(堀の広さ七間)、東西一町三一間(堀の広さ六間半)で、城主の居館が置かれ、その付近に大書院が設けられた。棟の高さ一二・八七メートルで、甍のうねりと千鳥破風、北側には車寄せを設けていた。本丸の東にある三の丸外法は東で南北三町四七間(堀幅二四間)、南で東西三町三六間半(堀幅一四間)、西で南北三町三六間(堀幅二四間)、北で東西三町二三間半(堀幅二〇間)であった(「篠山城記」渋谷家文書、万治三年「石川正西聞見集」本郷図書館蔵、前掲篠山旧記御城取立など)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「篠山城跡」の解説

ささやまじょうあと【篠山城跡】


兵庫県篠山市北新町にある城跡。篠山盆地の中心部、笹山と呼ばれる独立丘陵に築かれている。盆地の中央南部寄りの高城山に営まれた八上(やかみ)城をはるかに望み、視野はきわめて広い。山頂部に方形状の本丸と二の丸を設け、城壁は石垣で固め、山裾に内堀をめぐらし、その外を三の丸と外堀で囲んでいる。三の丸に開かれた北(大手)・東・南三方の門は馬出しを備え、外堀の外周は1辺約400m。築城当初から天守台はあっても天守は建設されず、その代わりに大書院が建てられた。これは石垣と堀による城の堅固さを幕府が懸念したためと伝えられる。1608年(慶長13)、徳川家康は松平康重を常陸(ひたち)国笠間城から丹波国八上城に移し、さらに新城の築城を命じた。山陰道の要衝である篠山盆地に城を築き、大坂の豊臣氏をはじめ西国大名ににらみをきかせようという意図であった。築城の名手とされた藤堂高虎(とうどうたかとら)が縄張りを担当し、普請総奉行を池田輝政がつとめ、15ヵ国の大名が動員されて、6ヵ月で完成した。松平康重は1619年(元和5)に和泉国岸和田に移り、以後、松平2家7代、青山家6代の居城として明治維新にいたった。現在、内堀は一部を残すのみだが全体の規模はよくわかり、とくに南門の馬出しの遺構がよく残っており、城郭史上価値ある遺跡として、1956年(昭和31)に国の史跡に指定された。JR福知山線篠山口駅から神姫バス二階町」下車、徒歩約3分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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