粟国島(読み)あぐにじま

日本歴史地名大系 「粟国島」の解説

粟国島
あぐにじま

那覇の北西約六一キロに位置し、一島で粟国村を形成。南北約三キロ・東西約四キロ、面積七・六二平方キロ。霧島火山帯に属し、最高地点九七・三メートルの低島。南に渡名喜島慶良間けらま諸島、西に久米島を望む。大半を占める海岸段丘と海食崖・海岸砂丘・砂浜・サンゴ礁からなる。海岸段丘は琉球石灰岩からなり、南西から北東へ低くなる三段の段丘面に区分されるが、段丘崖は不明瞭。段丘面は南西部の真鼻毛まはなもー一帯が最も高く、灯台の北東側に島の最高地点がある。島の中央部では北東から南西へ延びる二本の活断層が段丘面を切り、小規模な地溝(両側を断層崖に挟まれた細長い断層谷)を形成している。西いりーあがりの二集落はこの地溝部に立地する。最も低い段丘面は時計回りに北西部から南東部に分布し、はま集落と粟国空港が立地する。北西部の標高四〇メートル付近に、洞寺どうでら鍾乳洞がある。海岸線は比較的単調で、東部を除き海食崖が発達する。とくに南西端のふでいざき一帯の海食崖は高さ約八〇メートルに達する。東部には長さ約一・五キロに及ぶ砂浜と海岸砂丘が続き、ウーグ浜とよばれ、一帯にモンパノキを主とする海岸植生(モンパの木群落)がある。ウーグ浜は長浜ながはまビーチともよばれ、海水浴場とキャンプ場に利用されている。島はサンゴ礁に縁取られ、ウーグ浜では沖合約九〇〇メートルの範囲にイノー(礁池)と干瀬(礁原)が発達する。地質は時代未詳の超塩基性岩と新第三紀粟国層群の火山岩を基盤とし、それらを不整合に覆う第四紀更新世の琉球石灰岩および同完新世の砂丘層と沖積層から構成される。なお粟国層群の凝灰岩はコーシチとよばれ、かつて雨水をためるトゥージ(水甕)の素材に利用された。島は地形・地質条件から用水に恵まれず、長く雨水や井戸水を利用してきたが、一九八七年(昭和六二年)に鹹水淡水化施設が完成し、簡易水道が普及している。ソテツの島と形容されるほど、随所にソテツが群生し、その実から作られる味噌は特産品。西集落の御嶽の植物群落は県指定天然記念物。

〔考古〕

貝塚時代前期からグスク時代の遺跡がある。東集落の北側の丘陵上に貝塚時代前期―中期の巣飼原すがいばる貝塚がある。同貝塚の西側崖下にある西御願にしうがん貝塚は中期の遺跡である。浜集落の北東方の海岸砂丘には貝塚時代後期の浜遺跡がある。粟国島では貝塚時代後期末からグスク時代の遺跡の多くが石灰岩洞窟に形成されている。東集落の長作原ながさくばる洞窟遺跡は貝塚時代後期の遺跡で、西集落の松尾原まつおばる洞窟遺跡と草戸原くさとばる洞窟遺跡は貝塚時代後期―グスク時代の遺跡である。

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改訂新版 世界大百科事典 「粟国島」の意味・わかりやすい解説

粟国島 (あぐにじま)

沖縄本島那覇市の北西約57kmの海上に位置する島。1島で沖縄県島尻郡粟国村をなす。人口863(2010)。主として琉球石灰岩からなるが,西部には火山岩もみられ,島のまわりには数段の海岸段丘が発達している。帆船時代には航海業者が多かった。半農半漁の島で,サトウキビ,カンショの栽培を主とした農業と,肉用牛の畜産が行われる。第2次世界大戦前から那覇方面への出稼ぎの島として知られる。人口の高齢化が著しい。1978年に粟国空港が開港し,不定期で那覇空港と結ぶ。水の乏しい島であるため,各家には天水をためる水瓶(トゥージ)があり,かつての生活の厳しさを物語る。現在は簡易水道が完備している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粟国島」の意味・わかりやすい解説

粟国島
あぐにじま

沖縄県島尻(しまじり)郡粟国村の島で、1村をなす。那覇市の北西60キロメートルの洋上にある。面積7.64平方キロメートル。低平な台地状で、最高点96メートル。南西部に第三紀火山岩類が一部露出し、基盤岩をなすほかは、第四紀琉球(りゅうきゅう)石灰岩でほぼ全島が覆われ、海岸段丘の地形をなす。周囲はすべて裾礁(きょしょう)のサンゴ礁海岸のため、湾入に乏しい。人口844(2009)。

[目崎茂和]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粟国島」の意味・わかりやすい解説

粟国島
あぐにじま

沖縄県沖縄島西方海上の台地状火山島。1島で粟国村を構成する。沖縄島那覇市の北西約 60kmにあり,半円形で石灰岩に覆われ,最高点は 96m。面積 7.64km2。人口 936(2005)。

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デジタル大辞泉プラス 「粟国島」の解説

粟国島

沖縄県那覇市の北西約60キロメートルの海上に浮かぶ、島尻郡粟国(あぐに)村の島。面積約7.64平方キロメートル。サトウキビ、モチキビなどの栽培と製塩業が盛ん。島西部には高さ70メートル以上の断崖絶壁が続く。映画「ナビィの恋」の舞台として有名。

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