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系譜学 けいふがくgenealogy

翻訳|genealogy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

系譜学
けいふがく
genealogy

系譜 (→系図 ) の真偽を科学的に解明する学問。系譜について学問的研究が行われるようになったのは,古文書などの場合と同様,近代に入ってからである。 16世紀以降,旧来の伝承に厳密な批判と分析が加えられ,王族や貴族の系図類が集大成されるようになり,18世紀末には J.ガッテラーの『実用系譜学綱要』 Abriss der praktischen Genealogie (1788) が公刊されるなど,系譜の研究は一個の学問的地位を獲得するにいたった。 19世紀に入ると,近代歴史学のめざましい発展とともに,広範で組織的な史料収集が行われ,遺伝学上の諸発見により,系譜研究に自然科学的方法が導入され,系譜学は一層完全なものに近づいた。系譜の解明が歴史研究において果す役割の大きさについては,すでに 19世紀末 O.ローレンツが『系譜学総論』 Lehrbuch der gesamten wissenschaftlichen Genealogie (1898) のなかで指摘しているとおりであり,現在続々公刊される詳細な伝記や人名辞典の類も,このような系譜学的基礎づけがあって,初めて可能となったものである。中国では,家系に関する記録は古く『周礼』などにみられるが,六朝時代以後,系譜が身分の保持や官吏登用の重要な参考にされると,系譜学 (譜学) が盛んになった。当時は系譜の長期にわたることを名誉とした (王弘,王僧孺の『百家譜』などはその例) 。門閥が衰え新興階級が台頭した宋代に入ると,系譜の長さという縦の関係とともに,宗教の団結という横の関連が重視されるようになった (欧陽修の『欧陽氏譜図』などが有名) 。明代には庶民の間でも系譜がつくられるようになったが,偽作が多い。朝鮮では李朝以来,氏族的家族制度の維持のため,特に系譜は重視され,研究も行われた。日本では有職故実や考証学の一部門として興り,現在では歴史学の補助学として重視されているが,古来家制度の発展とともに家譜,系図の編述が盛んであった。それらを集成したものとして室町時代の『尊卑分脈』,江戸時代の『寛永諸家系図伝』『寛政重修諸家譜』などが名高い。

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世界大百科事典 第2版の解説

けいふがく【系譜学 genealogy】

系譜または系図を究める学問をさし,古くは古代オリエントにあって,神話上・伝説上の英雄に起源を求めた家系譜が作られている。新約聖書《マタイによる福音書》の冒頭の,アブラハム,ダビデ王からイエスにいたる系譜は典型である。神話内に始祖を想定する手法は,その後西欧における系譜のあり方にも影響を与えた。客観的なデータによる家系譜の初期の例としては,12世紀に成立した《フランドル系譜誌》が挙げられるが,これはフランドル伯を初めとする同地方の有力諸家について,10世紀以来の信頼度の高い家系記述を含んでいる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

系譜学
けいふがく

系譜・系図について、その真偽・正邪を明らかにするための学問。洋の東西を問わず人の血統は古代より社会的・政治的地位を決定する大きな要因とされた。わが国でも「貴種尊重」ということばが生まれるほどであった。また世襲相続制により、血統は財産継承権や王位継承権などにも強く影響するところからも、重要な研究対象となった。系譜・系図は利害関係が絡むところから偽系図がつくられることも多く、その真偽鑑定が法廷で争われることも多くなり、したがって系譜学は法律学に付随するものでもあった。封建時代には社会的地位を有利にするため「系図買い」もおこり、そのために系図づくりが現れた。彼らは偽系図をつくるため、系譜・古文書を調べるなどして系譜学者と称した。ついで近代に入ると、歴史学の発達とともに、系譜学は歴史研究上からも対象となった。それは、前近代における政治・社会の諸事件では、関係者の血縁的つながりが大きな要素をもつところから、人物の血統を明らかにすることが必要となったためである。このことから科学的な方法が取り入れられ、ようやく正確さを期することができるようになった。[飯倉晴武]

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世界大百科事典内の系譜学の言及

【系図】より

…しかし,始祖以後の系図はたいがい正確である。 偽系図のはんらんに対する真偽判定のための考証は系譜学の成立をうながす。西洋では16世紀以後,フランス,ドイツに発達したが,日本でも江戸幕府の家譜編纂の必要より,その萌芽が見られるが,本格的なものは明治以後のことである。…

※「系譜学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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